略奪者達
10話まで書いていて設定が色々増えてきてるなぁと思っているのでどこかで世界観設定を書き足すかもしれません。
つたない文ですが、まだまだよろしくお願いいたします。
「お頭!」
「どうした、情けねぇ声出して」
「この村ももぬけの殻です、井戸まで綺麗に埋められてやがる・・・」
「くそが・・・」
盗賊達は村を転々と襲っていたが、ここ数日すべての村に人が居ない
食料もほとんど見当たらず20人程の腹を満たせるわけもなく、井戸なども使えないので雨風をしのげる部屋がある程度
今まで足りていた物が限界に来ていた
「どうなってやがる、村人共が全員で移動できる場所なんてこの領地にはほとんど無いはずだが」
「そもそもこの領地、そんなに豊かじゃな~い」
「知ってるわ!だが奴らに追われたんじゃしかたねぇだろうが」
元々インチェンス侯爵領で商人などを襲っていたが、侯爵の怒りを買い討伐隊が結成されてしまったが故に逃げるしか無くなってしまった
「ここは騎士の成り上がりが爵位をもらって開拓してるとか何とかだからそもそも対して実りがねぇのさ」
「じゃあ何でこんなとこにきたの~、私もう限界なんだけど~?」
「ここまで人が居ねぇとなると、一か所に集まってんだろうさ」
「さっさと向かうぞ、成り上がり騎士様の所に大量の食糧もあるんだろうしな!」
「私疲れてんだけど~?」
「・・・っち、じゃあ今日はここで休みだ」
「野郎共!今日はここで休憩だ」
盗賊達の疲労が溜まっていく、すでに監視されていることも知らずに
「隊長、盗賊達が二つ隣の村で休んでるそうです」
「もうそこまで迫っているのか・・・」
対策会議の日から三日経っている
「このスピードだと明日の夜か、明後日の朝か昼にはここに襲撃してくるか」
「侯爵から逃げているから残党とはいえ頭は生きているようですね、それに報告では魔導士らしき人物もいそうです」
「大将、どうしますかい?いっそこっちから攻めるのも有りだとは思うが」
「落ち着けディン、我々全員がここを離れては村を守る者が居なくなってしまう」
「しかしディンの言ってることも正論だと思います、隊長も戦力の分散はしない方がいいと考えているでしょう?」
「うむ・・・」
父上が考え込んでいる
そろそろ話に混ぜてもらうか
「少しいいですか」
「お、坊は何かいい作戦でもあるんですかい」
「いい作戦かはどうかはわからないけど、父上の懸念を少なくすることならできるかもしれないよ」
「聞かせてくれるかクロア」
「はい、父上の懸念は今ここに集まっている領民達が人質に取られる可能性があるからこそ、この領内に奴らを一人も居れたくないと言う事であっていますか?」
「それだけでは無いが概ねその通りだ」
「報告によれば奴らは襲った村の住人達を奴隷のように扱っている、お前達にそんな事は死んでもさせたくないからな」
父上はこういうところが優しいのだ
騎士道精神みたいなのもあるんだろうけど
「当然、俺達も坊ちゃんやお嬢様達含めてそんなことはさせませんよ」
「ありがとうヴォルフォ、そこでなんだけど・・・」
「なるほど・・・しかしながらクロア、お前は相変わらず無茶苦茶を言うな」
「坊の凄まじさは今に始まった事じゃねぇでしょう・・・だけど流石に初めてだなそりゃ」
「だけどこれならここに集まっている領民の人達を気にせず戦えるでしょう?」
「防衛とは過剰なぐらいがいいんですよ、相手がそれでビビッてくれるなら儲けものでしょう」
「クロア様、万が一突破された場合はどうするのですか?」
「確かに相手の魔導士がどれほどの強さかわからないけど、突破した場合でも関係は無いかな」
「父上達を何とか突破してさらに俺の作戦も破って突破した頃にはすでに満身創痍だろうからね、そこから姉様や俺が相手をすればこちらがかなり有利だよ」
「しかし子供達まで戦線に加わるというのは・・・」
「本人達からの希望でもあるから、嫌なら自分達の子でしょ?自分達で説き伏せてね」
「俺の言葉より坊の言葉を信じやがるからなぁ、あの軟弱物は」
「私の子も私よりもエリア様に付き従っているからな・・・」
「なら諦めて俺達が戦わないように、四人の騎士様で蹴散らしてください」
「クロアよ、お前もお前でリリルがその事を許すのか?」
「母上にはもう話を付けてあります」
父上達が驚いた顔をしている
まぁ無理もないだろう、あの母上が家族に誰より厳しくそして甘いから
「リリルの許しも出ているなら私から言う事は無い、だがお前達が戦うことは無い」
「と言いますと?」
「私が盗賊如きに後れを取るとでも?」
「・・・それはごもっとも」
「はっはっは!!こんな頼もしい親子は見た事ないぜ、やっぱり大将に付いてきてよかったぜ」
「坊ちゃんの作戦を信じますよ、俺は」
「ヴォルフォにも色々頼んですみませんでした、盗賊達を後悔させてね」
「では明日また、今日はゆっくりと英気を養ってくれ」
「「「はっ!」」」
「クロアも今日は休みなさい、お前がかなり色々動いていることは聞いているぞ」
「そのつもりです、流石に疲れてきましたから」
「でも父上にも同じ言葉をお返ししますよ、こういう時こそ自分の大事な人達との時間は大切なものですよ」
父は笑ってこちらを見送る、今日は母と一緒に居るかもしれない
俺も姉様や妹達と過ごそう
きっと今日は嵐の前の静けさだ
だけど少しだけ都合が良かった
盗賊ならばいくら試しても良いだろう、思う存分聞いてみよう
この三日間慌ただしかったイストフィース領の村
この日はやけに静かだった
皆が備えている
今日は、今だけは大切な時間を過ごすために
そしてこの時間をこれからも続けるために