魔法への理解、親友達と悪巧み
固有魔法を何度か使用して、わかった事をまとめよう
山に続く道の入り口
その近くの木々に魔法を試してみた
「ふむ・・・」
まずはこの『解体』は対象に触れていないと発動ができない
まだ使い慣れていないからかもしれないが今現在では触れないと発動が不可能である
最初に使った時より後に使った時の方が出力が高く感じたから使いこなせればもしかしたら触れずとも発動自体はできるかもしれない
次に気になったのは『解体』そのものの精度だ
一本目の木に使ったところ、一太刀で切り倒すように切れた
しかしこれは解体というより切断の方が近い
二本目に使ったときに枝を切り落とすイメージで使用したら枝だけを切断できた
だがこれも精度が安定しておらず、何本かの枝が木に残っていた
三本目にはさらに細かくするために木の葉だけを切り離すイメージで使用した
成功はしたがやはりすべての木の葉を落とせずまばらに葉が残っていた
次に切り倒した木を細かくできるかの実験
一本目の木を薪にするイメージで使用した
なんとこれはかなりの精度で成功
薪そのものをイメージしやすいからか、使用したときに一気に薪の大きさに切断およびに解体できた
そして薪をさらにバラバラにできるかどうかを試した
イメージとしては木屑になるぐらいの感覚で使用したが薪よりは小さくなったものの木屑になるほどの小ささではなかった
この段階で発動にはかなり慣れたので木に触れ、切り倒れていない状態から薪にする気で使ったのだが
これは失敗した
解体そのものはできているが薪と呼ぶには大きすぎたり小さすぎたりするものが多すぎる
まるで無理やり木をバラバラにしようとしているみたいな
これで一つの過程ができた
「倒れている木を丸太にし、そこから薪を作るイメージは作業工程も含めてイメージがしやすい、だが切断されていない木から薪を作るイメージは俺にはないからうまくいかなかったのだろうか」
魔法はイメージや現象を理解していればいるほど精度が上がる
例えば火の魔法、ヒートを使うときマッチの火をイメージすると扱いやすいと言われている
故にイメージしずらい事は魔法でも再現しずらいのだ
王直属の魔法師団という団体には冷たい炎を扱う者が居たりするとか
それはその人が冷たい炎をイメージできるから行える魔法である
だが普通に考えれば冷たい炎などイメージのしようが無い
だからこそ魔法には無限の可能性があるとも言われている、柔軟な発想が時に自分だけの魔法になる
固有魔法だけが自分のみが扱える魔法と言うわけでは無いのである
「しかし、どう扱えばいいものか」
『解体』のイメージなんて、動物か木ぐらいしか俺には無い
しかもその木にさえうまく発動できているかもわからない
「イメージ・・・理解・・・成り立ち」
改めて考えると俺は木がどう成長して何年ぐらいで育つのかもあまり知らないかもしれない
豆の育成知識など農作物の知識はあると思っているが植林などは知らない
「解体する物を知ることでイメージが湧きやすいかもしれないし、また色々試してみようかな」
そんなことを考えていると
「おーい!クロアー!」
後ろから声がする、振り返ってみると二人ほど走ってこちらに向かってくる
「父様達から聞いたぞ、盗賊が来るかもしれないって!」
「リリー、早すぎるって・・・」
「二人とも、まずはただいま」
リリーとロズ
二人はこの村で数少ない同い年の友人、グラハの娘とディンの息子である
「この村で迎え撃つんだろう?あたしも戦うぜ!!」
「僕は正直怖いよ・・・でもクロアのお父様や僕達のお父様が居れば大丈夫だよね?」
交戦的なリリーと臆病なロズだが答えるのが難しい質問がきてしまった
「そうだな・・・盗賊の人数にもよるかもしれないけど、負けることを考えて作戦を考えたりはしないから戦って勝つ気ではいるよ」
「だけどリリー、君達子供は基本的に戦わせないぞ」
「えー!!」
「ほっ・・・」
「なんでだよ、クロアだって戦うんだろう?エリア様も戦う気満々だったぞ!」
姉様・・・
「あの人は俺達より年上だろう?それにこの村で父様に次ぐ剣の腕だからね」
「だったらあたしもいいじゃんか、クロアと同い年だし剣の腕だってエリア様もこの頃褒めてくれるぜ」
リリーはエリア姉様に憧れているからか、剣士を目指しているらしいが流石にまだまだである
「僕達じゃ力になれないって言ってるでしょ」
「なんだよロズ、お前は自分の村が襲われるかもしれないってのに見てるだけのつもりなのか!?」
「それは僕も嫌だけど・・・だからクロアに何かできる事はないか聞きに来たんじゃないか!」
ロズは昔から臆病だったけど優しさからくる勇気は人一倍ある気がする
「できる事か・・・そうだな」
村の子供は20人ほどいるが、動けそうな年齢の子達は半分ほど
正直やる気があるのは有難い事この上ない
なにせそもそもの人数が少ない、他の集落や村からもここに集まるだろうがそれでも戦いの経験がある人が居ない
恐らくこの村の領主である父上と元部下の人達、及びに他の村に住んでいる狩人達ぐらいだろう
しかも狩人達は基本的に人間との戦いの経験は無い
となるとまともな戦力は、父上・ヴォルフォ・グラハ・ディン・エリア姉様と俺ぐらいになる
そして俺と姉様は前線に出させてはくれないだろうから父上達のみになる
魔法で後ろから援護できるような魔導士は我が領には母上ぐらいしかいない
つまり盗賊が村の木壁を超えた時点で我々は敗北一直線になる可能性が高い
人質を取られる事なく父上達が戦いやすく、さらには村に入られない事
それには入念な準備が必要になる上に・・・とてつもなく難しい
「作戦を考えてはいるけど、今二人に頼みたい事は無いかな」
「そっか・・・クロアなら何かもう考えついてるんじゃないかって思って来たけどやっぱり僕達じゃあ・・・」
「だからあたしは戦うって言ってるだろうが!」
「でも僕達じゃあ!」
二人が言い争っている、村を守りたいという思いは一緒なのだ
戦闘に参加はさせられないけど人手としては有難い
「二人とも落ち着け、取り合えず三人で色々考えよう」
二人が俺言葉を聞いて落ち着く
「うーん、あたしは戦うって事しかわかんない」
「僕も怖いから・・・でもできるだけ村に近寄ってほしくないよね」
村に近寄らせないか、それができれば苦労は・・・
まてよ・・・
「おっ、何かひらめいたのか?」
「なんでそう思うんだ?」
「クロアがずいぶん悪い顔してたからさ」
「うん、クロアが凄い悪人顔してる時は何か思いついた時だよね」
人をなんだと思ってやがる
「一つ面白いことを考えついてな、子供達皆に伝えてくれないか?」
「まかせろって!なにすりゃいいんだ?」
「僕も手伝うよ!」
「よし、それじゃあ・・・」
悪巧みが始まる、この村でもっともハチャメチャな子供達
大人びているように見えるがクロアもまだまだ子供、故にやんちゃな部分もある
この村で問題が起きた時は大抵が、彼ら彼女らが中心にいる
クロアが指揮を執りここにエリアまで加わったら止めようが無い
いつも各々の父親や母親が頭を抱える
だが今回は村を守る為の悪巧み
きっと皆が存分にやれと言う
盗賊達は後悔するだろう、とんでもない村に手を出したのだと