今日は、なにしようか?
チン
朝のパンの焼けた音がする。
毎日、同じようにパンを焼いて、毎日、バターを塗って食べる。朝食は同じことの繰り返し。
テレビのチャンネルを5分くらい見ては変え、また、5分くらい見ては変え、なかなか一つのチャンネルに落ち着かない。
なんとなく今日は…と決まったチャンネルになったところでパンとコーヒーが出来上がった。
今日のニュースは何があったのか確認しながら朝食を食べる。ダラダラ朝食を食べていると、あっという間に時間は過ぎていった。
友莉は心の中で思った。
「あー、毎日、何をするでもなく、忙しなく時間がすぎてしまう」
何か用事はあるのだが、これといった達成感がない日々が億劫になっている。
最近は少し肌寒い。暑い季節は過ぎ、秋が感じられる気温が続いていたが、今日は暖かい日差しが差し込む日だった。
少し山の方にドライブに行ってみようか。
爽やかな秋晴れの中、車を走らせた。
走りやすい大きな道から段々坂道が続き始め山道どくとくのカーブが連続するようになる。同時に片側に崖のような斜面、片側に見上げると土の黄色か木の緑が続き、やがて道の左右から木々が生い茂り自然のアーケードをくぐりながら進んでいった。所々、木々の合間からさす日光がやさしく照り、なんとも言えない心が光で洗われたような気分になった。
日々の億劫さを忘れ去り、鼻歌を歌い出すような陽気な温かな気持ちになりながら車は進んだ。
暫く進むと小さな町並みがある風景が目に入ってくる。山の中腹にできた小さな田舎町が見える。
町といっても山道に沿って軒を連ねる家が見えるが、そのまま進んでいくと家は、またポツリポツリと見かけるくらいで再び山道へと繋がっていくようだった。
中腹の小さな田舎町の外れにす、優しい木の雰囲気の丸太小屋が見えてきた。
”とれたて野菜”の幟が見える。
「冷蔵庫の野菜はなかったなぁ~」と心の中で呟いた。
丸太小屋の中には取れたて野菜が立ち並でいたので手に取って数品、買うことにした。
新鮮野菜が買えたことに大満足しながら丸太小屋を出て、ふと横をを見ると、野菜売り場の扉の先に違う扉びら目に入った。そちらの方に足を向けると、近所の人たちが集まって作った、小さな町並みで取れた野菜の煮物や餅が少しおいてあった。よく見ると、おにぎりと書いてあったので、塩にぎりを一つ頼んで、丸太小屋の外のベンチに腰掛けて食べることにした。
爽やかな風と心地よい暖かさの中、おにぎりを食べた。温かい甘い田舎のお米の味に、ほんのり塩がきいていて、おいしい。
ただただ、優しい味に気持ちの良い空気が、おいしかった。