第849話 ラストバトル VSクイーン・チッヒー 終編
状況をおさらいすると、
地下一万階まであり入った瞬間にスタンピードが起こる、
重課金ダンジョンが最後の七大魔王『クイーン・チッヒー』もろとも、ほぼ消えてしまった。
「押し出された、塗り替えられたって、それはどういう」
事情を知る、
いや理解している、
異世界人のイワモトさんハイトウさんが説明する。
「この世界がゲームのプログラムを移したものであれば、データの容量、
つまりはこの世界、このダンジョンの『果て』というものがあるはずでして」
「その数字が『65536』という訳なのです、その数字を超えると、止まるより消える可能性のが高い、と」
なぜその数字なんだろうか。
「そういえば、55536階で一旦確認したのは」
「それはですな、もし下から、一番深い階から押し出されるように消えるのであれば、その時点で魔王がいなくなるはずだったのですぞ」
「しかし消えなかった、ということは本来の、元の上の階から消えているという可能性が、まあ実際にそうだったようではありますが……」
推測でそこまでわかるのか、
このあたりは異世界人の感覚というか、
ふたりがこの世界についてよく知っているからだろう。
「それで消えたクイーン・チッヒーはどこへ」
「消えたということは、消えたのでしょうな!」
「討伐扱いになってレベルも上がっていますが、アイテムまでは……」
うん、確かめても何も所持が増えていない、
魔王と会ってもいないのだから当然だよね、
つまり、ダンジョンにあったであろう宝箱とかも全て……
「ニィナさん、これで本当に、良かったんですか?!」
「まあ討伐は討伐、討伐成功は成功だ、最低限の成功、達成ではあるが」
「あっさり消えちゃいましたが」「正攻法で行った時のリスクを考えれば、致し方あるまい」
アイテム袋から天大樹の実を出したアンジュちゃん。
「もーたべていーいー?」
「あっ、お腹ぺこぺこだったね、ニィナさん」
「良いが、まだ飴を食べられる余地は残しておけ」「あいぼす」
ナタイラちゃんが鑑定眼鏡で、
ダンジョンの入口を見続けている……
それに気付いたニィナさんが声をかける。
「どうだナタイラ」
「はい、やはり中に敵もアイテムもありません」
「時間が経てば再構築されますぞ」「すぐにではありませんが、何か月かすれば新魔王が」
イワモトさんハイトウさんの感じだと、
普通に敵を全部討伐した扱いになるのか、
魔王以外の敵を倒した経験値はどうなっているんだろう。
(クイーン・チッヒーを倒した経験値のせいで、そのあたりはわかんないや)
七大魔王を倒すとレベルが5の倍数まで跳ね上がる、
よって、そこまでのレベルが上がっていても、今となっては……
何はともあれ、ラストがこんな卑怯な? 手であっても、無事に七大魔王を全部倒した事となった。
「デレス、上手く行ったな」
「はい、それは良いんですが、クイーンチッヒーは寝てたんでしょうか」
「わからないが、知らない間に死んだのであれば、ある意味幸せではないか?」
まあ、おそらく大好きであろう、
大量の白金貨と一緒に闇へ葬られたのであれば……
僕らは一枚も放り込んでいないけれどね! うん、助かった。
「アンジュもご苦労だった」
「んー、んぐんぐ、かんたんなおしごとでしたー」
「アンジュの魔法のおかげだ」「レベルあんだけ上がればねー」
そういう意味では、
本当にアンジュちゃんは『ニィナスターライツ』ナンバーワンだ、
おそらく、これからもずっと……それを僕は、ずっと見守っていく、いや、一緒に生きていく。
「ではデレス、デレスの目的の前に」
「えっ、僕の目的って」「だが、その前に敵を一掃しよう」
「そういえば、まだバリアの外には大量の敵が」「弱くはなっているはずだ」
魔王が倒されると、
そのダンジョンに残る敵は弱くなるし、しばらくは増えない、
むしろ、そういった弱体化した敵を目当てに集まる冒険者パーティーも居るくらいだ。
(ダンジョンの入口周辺の敵だって、その『残っている敵』と同じ扱いのはず)
心なしかバリアにぶつかってくる敵も、
その激しさが和らいで数も減ったきがする、
とはいえ、ひっきりなしに来ている事には変りない。
「ということは、これから」
「後始末だ、デレスの目的のためにも綺麗にしてしまおう」
「はい、じゃあ皆さん、やっとまともに戦いましょうか、これから」
バリアの見えない壁、
その外側に向けて構える前衛のみんな、
あとサモンやティムモンスターも……後衛は中央で背を合わせてスタンバイ。
「それではクラリス」「はい、解除いたしますわ」
「大丈夫とは思うが、ダンジョンに入って来ないように気を付けよう」
「んぢゃ、埋めた階をふやしてみるー」「アンジュ頼んだ」「あいあいさいさい」
【新 地下一階】(全65536階)
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「あっ、階数が増えていない!」
「本当に65536が上限だったようだな」
「これで外からも入れないよー」「よし、ではやるぞ」
こうしてある意味、
本当のラストバトルが始まったのだった。
本編、残りラスト2話です!




