第840話 ほんとうに怖いのは悪女ハーレムだったとさ
「デレス、そういう訳でここで一泊だ」
「あっはい、せっかく宿を借りちゃったからですね」
スターリ島のリゾートホテル、
僕たちが悪の勇者パーティーに予想外の事をされて、
ピンチになった時に救出してくれる手筈だったクラリスさんが待機していた場所だ。
(なんと、最上階の一度に二十人泊まれるスペシャルスイートですよ!)
そして大集合しているのは、
今回ちょっと、いやかなり無理言って、
悪女を完璧に演じてくれた皆様方だ、誇らしい。
「で、結局どうなったんでしたっけ」
「ああ、クラリスやアンジュ達は、まだ尋問を手伝ってくれているが」
「事後処理ですよね、本当に頭が下がります」「なあに、みんなデレスのためだ」
ふと窓の外を見る、
星空が綺麗だなぁ……
ニィナさんが超特大ベッドに腰をかけ、話を続ける。
「クラリスが持って来た、高レベルや隠匿スキル相手でも真偽のわかる水晶」
「あっ、結局ウチのを使うんですか」「ああ、それで尋問した結果、海賊島の場所、
また他の協力していた悪い冒険者パーティを洗い出せた、今はその仲間の尋問中だろう」
これで一掃してくれると良いけど。
「それで海賊島は」「情報がまとまり次第、襲撃だが……
まあ、こちらの七大魔王最終戦が終わってからだな」「後回しですか」
「おそらくアンジュ城を貸す事になる」「じゃあ上から」「もちろん我々も参加の流れだろう」
モバーマス大陸からだと長旅になるな、
いくらマリウさんとルゾイさんが速度上げてくれたとはいえ。
「じゃあ、こっちのダンジョン攻略は」
「それもだ、いつでも出来るが優先順位としては」
「海賊島の更に後でも良いですね、いや難易度低いなら先にする手もあるか」
かといって今からは行かないよ!
まだ現場検証とか終わってないらしいからね。
「どちらが先でも後でも、七大魔王が優先だ」
「わかっています、いよいよですものね、とうとう」
「デレスのやりたい事は、あとひとつか」「そうですね、僕は」
こうやって、もし何かあった時のために、
心残りが無いように僕のやりたい事をしてくれる……
じゃあニィナさん達は、どうなんだろうか? 心残りとかは。
「ふむ、その顔は『我々の方にやり残した事は』とか考えているな」
「な、なんでわかるんですか」「私は正妻だぞ」「あっはい、ですよね」
「その件は大丈夫だ、すでにデレスがみんなにやってくれた」「あっ、そうか」
ニィナさんやクラリスさんの実家、
アンジュちゃんやヘレンさんのそれぞれ、
ナスタシアさんの帝国にナタイラちゃんの亡国、
オトゥハさんの空中集落とナーレさんの実家での茶番……
(すでに、みんながやり残した事を、やっていたのか)
特にそこまで考えてはなかったけど!
「なので皆、心の準備は出来ている」
「あっはい……あ、まだもうひとり、いやひとグループ」
「なんだ、どこだ誰だ」「それはまた後で、僕の残りひとつの前でいいかな、時間かからないといいけど」
ニィナさんに促されて、
超特大ベッドの隣りへ座る、
他の悪女の皆さんは隣の部屋で何やら支度中だ。
「それで今回の『悪女ハーレム』満足してくれたか」
「あっはい、それはもう、ちょっと周囲をびびらせ過ぎたというか、
僕が救出されそうになった時は驚きました、だからスターリ島を救えて良かったです」
ちゃんとこの宿へ向かう時、
冒険者ギルドを出る時にネタばらし種明かしというか、
みんな整列して片膝着いて、僕に頭を下げさせた、ラギシーノさんとか綺麗な土下座してた。
(なんでも、そういう決まりらしいよ!)
娼館で娼婦がお客さんを虐める、ののしる、酷い事するプレイの時は、
まず最初に娼婦が綺麗な土下座で『よろしくお願いします』って言った後、
激しいプレイでさんざん客をいたぶり、全て終わったらシメに娼婦が土下座で『ありがとうございました』と。
(まあ、お金で雇っているからねラギシーノさんの場合は)
それは別にしても、
最後きっちり主従関係を見せて、
僕の事を本気で心配していた皆さんを安心させました。
「それにしてもニィナさんまで、
しかも先頭で片膝着いて頭下げる事なかったのに」
「私はデレスの望む事なら何だってやる、その意図を組んで実行するのも私の役割だ」
ほんっと、
根が真面目なんだから、
騎士団上がりは……でも頼もしい。
「ありがとうございます」
「そこで先に真面目な話を消化しておくが、
デレス、いっそこのスターリ諸島に天大樹を植えるか」
うん、そこは僕も考えていた。
「ミリシタン大陸に植える事は考えていました、
でもまずはその間のここへっていうのは良いですよね」
「もちろん種が余裕ある訳では無いが」「あの悪い勇者ふたりを放り込むのはアリですね」
現地の知識も豊富だろうし。
「ギルマスがな、今回の件と、あと魔王を討伐したら島をひとつくれるそうだ」
「なら島ごと隠匿できそうですね、ここならリゾート、バカンスにも良さそうですし」
「実は人魚族が住む集落もあってな、そこは嫁不足らしい」「こっちの、監獄島は婿不足なのに!」「丁度良いな」
うん、色々と話が良い方向に進みそうだ。
「わかりました、七大魔王討伐後も、やる事がいっぱいですね」
「そうだな、ということで今夜する事だが……そろそろ良いぞ」
「えっ?! あっ、悪女の皆さん、ってこ、これはああああ!!!」
皆さんなんていうかこう、
一言で表現するならば『悪女な寝間着』だ、
うん、いかにもこれから男をベッドで処刑しそうな……!!
「デレスが『悪女ハーレムを堪能したい』という希望を叶えるとなると、
やはり最後はこれが避けられないだろう、覚悟するんだな、イライザなぞ気合いが入っているぞ」
「ふふ、やっと、ようやく……本当の『悪女』というものを体験させてあげましょう」「はっ、はいぃぃ」
(本当に怖いのは、悪女ハーレムだったとさ)
ということで八人乗っても大丈夫なこのベッドで、
僕は朝まで悪女役の皆さんに悪女プレイを堪能させて貰ったのでした、
ちなみに全身の酷い痕は、戻ってからクラリスさんに綺麗さっぱり消して貰いました!!