第829話 ドワーフの正妻とドワーフの側室
「ねえアナタ、アナタはここではデレス=アヴァカーネではなく、
デレス=レーミンでもなく、今はドワーフのデレスなの、わかるわね?」
「あっはい、その、種族変更スクロール(2時間)は切れちゃったけど、今は」
まだ予備いっぱいあるけど!
「それで、ドワーフ国外のデレスさんはデレスさんとして尊重して」
「ドワーフ国内では、マリウさんが僕の奥さんです、ええ、間違いなく」
「嬉しいわ、天大樹の」「一号館の商業ギルド、あと鍛冶エリアはドワーフ国の飛び地ですっ!!」
よろしい、という感じで撫でてくれる、
うん、我ながらよく調教された旦那さんだこと、
ここで大切なのはニィナさん達の名前を僕からは出さない事だ。
(怒りはしないだろうけど、良い気はしないからね)
ていうか、ほんとうに筋肉凄いなマリウさん。
「必ず、ドワーフの国へ帰ってきて下さいね」
「あっ、最終決戦の話ですよね、ごめんなさい、
パーティー的にはマリウさんも入れられない事は無いんですが」
そう、僕の習得したスキルで、
リーダーになれば10人パーティーが組める、
なので僕と第八夫人まで入れても、まだひとり枠があるのだが。
「アナタ、もしもの時、ですよね」
「はい、僕らが何かあった時の救出係、
あとこれは考えたくないのですが」「考えないで下さい」
全滅は考える必要が無いってか。
「えっとじゃあ、必ず戻ってきます」
「それで、これからする事は、わかっていますよね?」
「まあ寝室ですから、覚悟はしていたというか」
朝まで呑むか、
朝までするかっていう。
「デレスさんに生きて帰ってきて貰うために、御用意致しました」
「えっ何を、妊娠ポーションとか」「避妊ポーションの逆ですか」
「それだったら精力ポーションのが良いか」「そちらではなくてですね……どうぞぉ!!」
その呼びかけに入ってきたのは、
まさかの人物、いや、まさかのドワーフだった!!
「デレス様、御無沙汰しておりました」
「その聖女服……まさか、ミリシタン大陸の!」
「はい、カルハです、っていうかほんっと久しぶりね」
もう砕けた口調に!
「なんでこんな所まで」
「デレス様の側室になりに」「えっ」
「アナタ、こちらでも正妻と側室を」「こっちでも?!」「こちらでもです!!」
そのために、
わざわざミリシタン大陸から……!!
「カルハさんは、その、いいの?!」
「元はといえば、あれを渡したのは……」
「あっ、いつでもどこでもドワーフの女性を抱ける券!!」
やっぱり僕に渡したのは、
カルハさんが自分に使って欲しかったからかぁ。
「なのでアタシとしては、随分と遠回りだったなあって」
「それは、いいんだけれど、マリウさん的にはドワーフの側室は」
「むしろ大歓迎ですね、アナタがドワーフ側に居る時間が長くなれば、と」
変な駆け引きしてるなあ、
さすがはニィナさん相手に対等、
いや場合によっちゃあ上手を取るドワーフだ。
「ていうかカルハさん、僧侶から聖女になったんだよね」
「デレス様のおかげです」「それはいいんだけど、聖女の仕事は」
「当然、転移スクロールで行ったり来たりしますよ、デレス様のために」
忙しそうだ、仕方ないか。
「それでアナタ」「はい」
「お父様の、いえドワーフ国王の許可が出ました」
「えっ何の」「ドワーフであれば、側室を29名まで認めるそうです」「えええええぇぇぇぇぇ」
じゃあ、あと28人かあ。
「ちょっとそれは、考えさせて」
「ドワーフは、お嫌いでしょうか」
「そんなことは無いけれどもさ、さすがに正妻側室、合わせて30人は」
と言ってはいるものの、
合法少女という枠はもういっぱいというか、
リトルリリックという超大物を釣り上げられそうだからなぁ。
(あれを超える『合法少女』は、多分もう、出ない)
それくらい魅力的だ、
いやもちろんドワーフの奥さんに義務は果たすけど!
「ではアナタ」「それではデレス様」
「うん、じゃあ……ふたりとも、よろしくお願いします」
「アナタその前に」「あっそうか、うん、じゃあまた使うね、ドワーフ変身スクロール」
ということで、
種族変更スクロール(2時間)を、
更に合計三枚使った夜なのでした、はい。
(カルハさんの回復魔法で、とにかく頑張りました!)
チュンチュン、チュンチュン……
「アナタ、おはよう」
「あっはい、おはようマリウさん、あと……ええっ」
「デレス様、もう行かないといけないので、それでは」
軽くチュッ、としてから、
転移スクロールで飛んで行ったカルハさん、
きっちり着替えてたな、ぎりぎりまで僕が起きるのを待ってた感じか。
「僕も行かないと、一応は義両親にご挨拶を」
「それは討伐してからで、それよりも、これを」
「あっ、これアンクレット?!」「幻術師専用、魔力急速回復アンクレットです!」
ということはだ、
カルハさんは例の作戦を知っているのか。
「ありがとう、じゃあ戻ったらアンジュちゃんに」
「私もラストバトル、七大魔王最後の討伐を、道具で参加できて嬉しいです!」
「それはまあ、討伐できたらね」「信じていますよアナタ、だってアナタなのですから!!」
マリウさんも僕にチュッ、と……
「ありがとう、必ず生きて戻るから」
「その時は、子作りの続きをお願いしますね!」
「うん、まあ、それは、当然」「では行ってらっしゃいませ、私はまだする事があるので!」
着替えて転移スクロールを出す僕。
「それじゃあ、次に会うのは討伐後で」「はいっ!」
「行って倒してきます! と、見せかけてぇーー……えいっ」
ちゅっ
「まあっ!!」
「さあ、倒してくるぞーーー!!」
と、天大樹冒険者ギルドへ戻った僕であった。
「お帰りなさいませ」
「あっ、モグナミさん!」
「これから、いかがなさいますか?」「うーーーん」
時差調整のタイミングだけど……
「あっモグナミさん、相談なんだけど」「はい」
「今夜、時間あるかな」「作れと言えば可能ですが」
「休みじゃないよね?」「今日と、明日は勤務ですから」
よし、誘ってみよう。
「モグナミさんって……悪女、できる?!」