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【ついに完結】草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第80話 情報収集と解かれた謎

「では行ってきます」

「デレス、早朝から一人で行かせて済まない」

「お待ちになってデレス様……はい、状態異常防御の魔法をかけましたわ」

「ありがとうございます、デレス、ガンバリマス!」


 ニィナさんとクラリスさんに見送られて一足早く宿を出る、

 一応サラダだけの朝食はいただいたから目は覚めた、はず。

 ちなみにアンジュちゃんはまだ寝てる、ヘレンさんは知らない。


(さてAエリアへ、とその前に……)


 本当にCエリアは商業ギルドがないのか気になるな~

 あ~ほんと気になってちょっと路地裏を探してみたいな~

 いやこのあたり偶然、たまたま娼館があるとかなくはないとかなんとかかんとか。


(でもさすがに早朝は、普通に閉まってるよなぁ……)


 と思ったら開いていた!が、中から普通の娼婦が出てきて

 普通に閉店の札を下げた、朝までやっているという感じだったのか、普通だ。


「あら、今ならまだ間に合いますよ?お相手は私で良ければ」

「い、いやその、あの」


 うん、普通に胸とお尻が魅力的だ、普通に。


「……デレスくん」

「うあっ!アンジュちゃん?!」


 突然!僕と娼婦さんの間に現れたアンジュちゃん、心臓に悪い!


「学校……行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい、ってそれを言いに?」

「……(コクン)」


 ひとつ深く頷いて姿が消えた。


「きゃ、い、いまのは」

「知り合いの幻術師です、驚かせてごめんなさい」

「は、はいぃ」


 知り合いなんて言っちゃった、婚約者なのに。


「で、では~」


 気まずくなって立ち去る、

 普通の娼館だったが気持ちちょっと年齢高めかなさっきの人は。


(そんな事よりAエリアだ!)


 CからAはどうやって行くんだろうと思ったら

 一旦、ふもとのEエリアか地下へ降りないといけないみたいだ、

 いやぐるりと探せばどこかにあるんだろうけど時間がもったいない、

 クラリスさんにかけてもらった魔法もあるし……と繋がりの門まで歩いて下りた、

 よくよく周りを見ると地下への入口が、あった!なぜか階段ではなく梯子だ。


(なぜ梯子?!)


 まあいいや、と衛兵に勇者の冒険者カードを見せて魔導昇降機へ、

 今日はパーティーひと組と相乗りだ、剣士戦士僧侶あとひとりは、これってアサシン?!


「どうしたのかな君?」


 三十歳前後、リーダーっぽい感じのちょいムキ剣士にやさしく声をかけられた。


「いやごめんなさい、アサシンって珍しくて、かっこいいなあって思って」


 僕の声と喋りでようやく子供じゃないって気が付いたみたいだ。


「ああすまない、Aエリアに住んでいる子かと思ってしまって」

「いえいいんです、まだ十代ですから似たようなもんです」

「へえ、十代でAエリアって、やっぱり住民?」

「それが違うんですよ、実は!Aランクなんです」

「なるほど、ポーターなら頑張れば早くAクラスに上がれると聞いた覚えがある」


 それが勇者なんですよ実は、とか言わない方が良さそうだ。


「皆さんはダンジョンへ?」

「ええ、二百階まで降りられますからね、Aランクパーティーの特権ですよ」

「すごーい!魔王を倒されたんですか?」

「準魔王クラスなら何匹か、あとは依頼ですね、貴方も依頼を」

「ついこの間『ハイエルフの涙』を運んだ所でして……」


 と軽い雑談をしている間にAエリアに到着した。


「じゃあ頑張ってきてください『サファイアカウンター』の皆さん」

「ああまたなデレス君!」


 なぜか気まずくなって分かれてしまった、行先は一緒の冒険者ギルドなのに!

 後ろを向けるとアサシンがぼそっと『アイツは強い』って言ってた気もするが。


(せっかくだから商業ギルド出張所を見てこよう)


 案内地図は……そういや今日は親切な娼婦さんいないな、

 朝早いから営業時間外か、逆に夜遅くてもいそう、治安良さそうだし。


「あー反対側かあ」


 いくらAエリアといえど山の裏まで歩くのは少し辛い、

 でもちゃんと位置は確認した、何があるかわからないから覚えておこう。


「のんびり行くかあ」


 クラリスさんが掛けてくれた状態異常防御は多分まだ大丈夫、

 そんな感じでテクテクとゆっくり冒険者ギルドへ、うん、朝の空気が美味しい。


(こんな所に住めたらなぁ……)


 でもさらに上がある、と山頂のお城群を望む、

 あそこまで行くとなんとなく『上がり』というイメージがあるのは、

 昨日Aエリアの冒険者ギルドで会った顔役Sランクのお爺さんお婆さんのせいだろう。


(手土産でも持ってきた方が良かったかな?あ、そうだ!あれを)


 なんて思いながら東A冒険者ギルドに到着、

 うん、そこそこ賑わっていてさっきのサファイアカウンターさんたちは絶賛受付中だ。


「ふぉふぉふぉ、今日も来たのか坊主」

「あ、モヒトさん、おはようございます」

「今日は何用じゃな?」


 僕はそっと耳打ちする。


「あの、昨日来ていた女勇者、今日も来ていませんか?」

「ああ、コロメとかいうAクラス勇者のことかの?」


 あ、ヘレンさんに名前聞くの忘れてた!まあいっか。


「星のイヤリングで明るい茶髪の、奴隷男三人連れた」

「コロメじゃの、少し前に地下へ、ダンジョンへ潜ったぞ?」

「あー遅かったかあー」


 寄り道しなければ会えたなこれ。


「ふぉふぉふぉ若いのう」

「そりゃあこんな見た目ですから、ってちがーう!」

「何か訳ありかのう?」


 さすが元Sランク、話が早い!


「ええ実はあの女勇者、男を無理矢理奴隷にしているんじゃないかって調べたくて」

「ふぉふぉふぉ、では詳しい話は個室でしようて」


 二階の冒険者個別相談室へ階段で行く、元気だなこのじいさん。


「……ここなら音も漏れん、さあ話せ」

「はい、その前にこれを」

「こ、これは幻の果実、コモモではないか!」


 あ、意外とびっくりしてる!

 このレベルなら『ほう、珍しいのう』くらいの反応だと思ったのに!


「みっつどうぞ、それであの女勇者なんですが……」

「うむ、喰いながら聞いてやるぞ、あむあむ」


(意外と喰い方が汚い、冒険者なんてそんなものか)



 ……とまあ女勇者への疑惑を全て話し終えると、

 部屋に備え付けられていたティッシュで口を拭くモヒトじいさん。


「んっ、美味かったぞい」

「どうもどうも」

「それで奴隷じゃが、魅了魔法で奴隷にするのは普通、不可能じゃ」

「え、どうして」

「隷属の首輪をかけるとき、意思確認と共に魔法がかかっていないか調べる」


 あーチェックするのかちゃんと、そりゃそうか、そりゃそうだ。


「でも普通って」

「いや余計な言い方じゃったの、通常はって意味じゃ、

 例外的に罪人の奴隷落ちとかで本人が『奴隷になるくらいなら死ぬ』とか

 騒いだ時に魅了魔法でおとなしくさせて奴隷にさせるとか、あるらしいのう」

「あーそういうイレギュラーな話でしたか」

「面白い事に『奴隷になるなら死ぬ』と暴れていた罪人は、

 いざ本当に奴隷になると大人しくなるもんじゃ、本当に自害した奴など見たこたあないわ」


 そういう現場に警備か何かで立ち会ったりしてたんだろうか?


「じゃあ、あの奴隷は」

「合意じゃな、Cクラスパーティーという事はここへ入るため奴隷になったんじゃて」

「え、どういう事ですか」

「奴隷と言うのは言うては悪いが物扱いじゃ、なので普段はAエリアに入れないCクラスであっても」

「つまり奴隷なら所有物扱いでAクラスの人の奴隷なら一緒に入れると」


 ではなんてまた?!


「そうじゃな、早く深いダンジョンに潜りたかったかAエリアで暮らしたかったんじゃろ」

「なるほどお」


 あっさり謎が解けた、さすがAランクギルドの顔役!


「確かに奴隷の連中、目が死んでおったからのう、騙された可能性はある」

「助け出せますか?」

「おそらく無理じゃな、騙したとしても契約の時点で完全に合意なら例え詐欺でも難しいじゃろうて」

「そんなあ」

「騙された方が悪い、と冒険者であれば言うしかないのう」


 うーん、シビアだ。


「ま、よっぽど何か大きな問題でもしでかせば調べるくらいはしてくれるじゃろ」

「誰が?!」

「冒険者ギルドかここシュッコの衛兵じゃな」


 それなら僕が調べた方が早い。


「それでモヒトさん、あの女勇者、ロコメでしたっけ」

「コロメじゃ」

「そのコロメってAクラス女勇者なら有名な人なんですか?」

「さあ、初めて見たのう、風の噂で女勇者の噂は聞くが最近は身体のでかいのの話が多いの」

「あ、それうちの!いつか会わせてみたいです」


 って今はそんな話じゃないや。


「冒険者ギルドに聞けばザラメさんの情報わかりますかね」

「コロメじゃ、お主わざとじゃろう」

「ばれました?ごめんなさい」

「まあ、とっておきの方法が無い訳ではない」

「ど、どんな方法ですか?!」


 人差し指を下に向けるモヒトじいさん。


「地下街の奥の奥に情報屋がある」

「あ!なんか有能そう」

「そこで金貨十九枚を見せて『モヒトが風邪をひいた』と言うんじゃ」

「すると話を聞いてもらえるんですね!」

「全地区に情報網がある連中じゃ、もちろんダンジョンの情報も詳しい」


 やっぱりこういう人が多くてゴミゴミしている所は情報屋だね!


「ありがとうございます、ここで一通り冒険者から情報を聞いたら行ってみます」

「やめておけ、探っているのがバレる」

「あ、そっか」


 これはできるだけ、ギリギリまで我慢した方が良いな。


「場所はここじゃな」


 紙じゃなくティッシュに地図を書き始めた、

 証拠隠滅できるようにかな?読めるからいいけど。


「いいな、十九枚じゃぞ、金貨じゃぞ」

「了解しました!」

「ふぉふぉふぉ」


 個室を出ると昇降機で下へ行くモヒトじいさん、

 って下りは乗るのかよ!と僕は隣の昇降機で上へ。


(五階っと)


 じいさんを疑う訳じゃないが一応確認だ、

 勇者A級受付はうん、誰もいない、挟んで向こう側、

 S級冒険者受付も居ない、振動する椅子で朝からくつろくおばあさんだけだ。


「マリーナさーん!お礼を持ってきましたー!」

「……ふぇ?」

「お礼の果物でーす!」


 僕はコモモを持って投げるために構える!


「ちょっとデレスさん!昨日のマリーナさんみたいに食べ物を投げては駄目ですよ!」

「あ、そっか、じゃあどうしよう、ええっと」


 昨日と同じ眼鏡熟女受付嬢さん、

 彼女に渡してもらおうかな、と思ったら、

 普通にSエリアと行き来する扉がガチャッと開いてマリーナさんがこっちへ来た。


「……いいんだ」

「ふぇふぇふぇ、コモモの実じゃな」

「そうです、みっつほど、はいそうぞ」


 ご機嫌で受け取るおばあさん。


「いただこうかのう」

「あ、そうだ!マリーナさんってS級の弓使いなんですよね」

「昔はな」

「片手弓を教えてあげて欲しい十九歳の女の子がいるんですが」

「ふぇふぇふぇ、考えておくかのう」


 あ、大人の対応をされた!


「よろしくお願いしますっ!」

「コモモが美味けりゃあのう」


 と、普通にSエリアへの扉を開けて戻っていった、

 よし、これから地下街で情報収集の依頼だ!


「あら、もう行かれてしまうのですか」

「ごめんなさい受付嬢さん、勇者ポーターの依頼はまた今度!」

「お願いしますね~」


 今は正直、それどころじゃあない。

 ……コモモをあげにはきちゃったけれども!

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