第788話 デレスアリーナと地下奴隷部屋
「うっわ、中が涼しい」
設計したマリウさんに案内されて入った内部、
うん、チャンミオにあったリミオンシアターそっくりだ、
中のロビーでは後半戦の獣人部門に出場する選手も待機してるな。
「ええっと、ここが」
「はい、『デレスアリーナ・ブラヌシアタ』です!」
「いや、屋上に看板まで立てられてて、びっくりしたよ」
しかもちゃんと『デ』『レ』『ス』『ア』『リ』『ー』『ナ』って各個別々にね。
(ちなみにニィナさん達は外でまだ作業中、なので中には僕とマリウさんだけで入っています)
あっ、見知ったお方が来た!
「これはこれはデレスさん」
「ティン=トーキタさん!!」
「お誘いありがとうございます」「はい、この劇場で例の彼女達を」
そう、コムナプロダクションの下部組織、
路頭に迷う事となる歌い手『ビューティフルキャッスル部門』が、
丸ごとこちらへ移動する事となった、その責任者にトーキタさんを誘ったからだ。
「それで歌い手さん達は」
「まだ事後処理中というか、
サービス終了とは表立って言っていないためしばらくはまだ」
190人だっけ、
大所帯だからね。
「大陸は変わりますが、この劇場をお好きにお使い下さい」
「はい、ネイサリアやニエリーも来たいと言っていますが、
まずはこちらできちんと盤石の態勢を築いてから……頑張ります」
初期費用に白金貨がかなりかかったけど、
七大魔王を一緒に倒したネクジェネの皆さんも来てくれるんだ、
まあ、なんとかなるだろう、それよりも……
「アナタ、まずは劇場のステージを」
「うん、ではトーキタさんもご一緒に」
「はい、既に外が暑くて中で涼んでらっしゃる方々が」
確かにお客さんが少々、
いや無料休憩所状態だから客ではないか?
中の売店で軽い飲み物や軽食も売っていたから、客っちゃあ客か。
「では次の曲を聞いてください、『リトルリリック・アドベンチャー!』
おお、こちらも七大魔王討伐の立役者、
リトルリリックの合法少女三人が明るい中で歌って踊っている、
壺転がし競走は入賞の芽が無くなった時点でこっちに来たのかな?
(ほんっと、ちっちゃかわいいなあ)
しかし31歳、29歳、26歳である。
「アナタ、二千人収容で、あの二階バルコニー席はVIP用ですよ!」
「そうなんだ」「ただ、申し訳ないのですが……」「暗い顔で、どうしたの」
「あの二階から外へ出て、橋で早く帰れるはずが、強度に問題があって補修中で」
なんだ、そんなことか。
「トーキタさん、大丈夫ですよね?」
「まあそれは、バルコニーのVIP客を終わったら最初に帰すとかすれば」
「ちなみにVIPラウンジもあります!」「マリウさん、それ興味ある!!」
とまあ『リミオンシアター』を良い感じでグレーアップした、
ここ『デレスアリーナ』は歌い手の曲披露だけではなく、な、なんとぉ!
僕の結婚式にも使うのです、ミリシタン大陸、我がアヴァカーネ家側のね。
(今から楽しみだ)
そうこうしてトーキタさんのプロデューサールームとやらや、
事務室やら喫茶店コーナーやら屋上やらいろいろ見て回った末に、
地下へと移動……ここは大道具倉庫らしいが今はみかん箱(中は空)と机型の暖房魔道具くらいだな。
「ちなみにこちらが」「はいマリウさん」
連れて行かれた隅っこの部屋は……!!
「ええっと、左右に二段ベッドが、仮眠室?」
「奴隷の宿泊室ですね、奥にトイレも」「シャワーは?」
「夜中に掃除がてら、一階の演者用シャワーを使えば良いかと」
奴隷だからね仕方ないね、
四人部屋っていうことは……あっ、これは!!
「ひょっとしてリッコ姉ちゃんたちの部屋?!」
「はい、奴隷部屋、もしくは歌い手見習い部屋で」
「じゃあ、ここで劇場の雑務なんかを」「もちろんそういう使い方も、出来ますね」
ウンウン頷いているトーキタさん。
「奴隷従業員も用意して頂けるとなると、嬉しいですね」
「四人部屋かぁ、うん、まあ丁度良いな、檻の無い牢屋っぽい気もするけど」
「部屋は以上ですね」「ありがとうマリウさん、それでオープンは」「今夜、プレオープンだそうです」
えっ、もう?!
「トーキタさん、歌い手は」
「まだだと、まだ派遣の必要は無いと」
「えっ、じゃあ誰が出て歌うんだろうか……??」
今夜のショーを実際に見れば、わかるか。
「アナタ、そろそろ獣人部門が」
「そうだね、それじゃあ観に行こう、トーキタさんありがとう」
「では私はまだこのシアターの整理、準備を」
さあ獣人部門だ、
ベルグレイスさんのウィング一派の独壇場と思うでしょう?
実はモバーマス大陸で声をかけた……まあいいや、会いに行こう。
(それが終わったら、リッコ姉ちゃん達を集めないとね)
ある意味、『ざまぁ』の続き、
いや、延長線上と言えなくもないかも???
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一方その頃、
競技会場ではニィナが奴隷に指示を出していた。
「ほら時間が無いぞ、さっさと予備の壺をここに並べろ!」
「は、はいっ……ハービィ、ぐずぐずしない!」「リッコお前もだ」
「ええっと、こっちは」「ハービィ、ちゃんと向きを揃えなさい」「フラウ、お前がやれ!」
奴隷五人の中では、
どうしてもリッコやフラウに使われてしまうハービィ、
もちろんハービィもハービィなりに一生懸命やってはいるのだが。
(……まずいな、奴隷以前からの序列が、身に沁みついているようだ)
首を絞めようと手をかざして止めたニィナ、
その顔は、デレスが中に入って行ったアリーナに向けられていたのであった。
そして響くハイトウの声。
「さあみなさん、間もなく再開、ゼッケン番号51番と52番の方は準備をお願いします!!」