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【ついに完結】草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第78話 あらためての感想と思い知らされる現実

「……という訳でアイリー国に着いて、そこの冒険者ギルドでニィナさんに出会ったんです」


 ようやく喋り終えた、長かった、

 その間に届いた料理のお子様セットのうちひとつが

 僕の前に運ばれるというプチアクシデントもあったが無事、話す事ができた。


「あの申し訳ありません、デレス様」

「はいクラリスさん、っていうかもう食べてもいいですよ」

「その、どうしてデレス様は引っ叩かれたのです?」


 やっぱそこかぁ。


「男として、しっかりしてなかったからかな」


 あ、アンジュちゃんが僕のおでこをナデナデしてくれる!

 きっと銅貨をおでこにぶつけられた話が気の毒に思ったのだろう。


「デレス様、どうして寝取られた被害者がぶたれなければ」

「だな、私もそれは腹が立って思わず聞いてしまった」

「いやでも手を出さなかった僕がやっぱり悪いのかなと、婚約者だったのに」


 クラリスさんが深いため息をつく。


「まずデレス様の思想が間違っています」

「え、そこ?」

「最後の魔王を倒して幸せなキスで終了、ですか、良い終わり方ですね」

「うん、僕はそれに憧れたんだ」

「……ばっかじゃないの」


 最後の声はヘレンさん、

 隷属の首輪がキュッと絞まって慌て始める。


「今のは警告だ、口を慎め」

「けほっ、けほ……も、申し訳ありません」

「あ、ニィナさんがやってくれたんですか」


 確かに馬鹿だ、リッコねえちゃんを大事にしすぎた。


「デレス様、はっきり言いますね、デレス様が憧れているような冒険談ですが、

 なぜ主人公の男性がヒロインに手を出さない、出しても最後だと思いますか?」

「それはかっこいいからっていうか紳士的だから、男として場をわきまえているから」


 そんな会話を気にせず今度は浮いて僕の頭を撫でるアンジュちゃん、

 クロウに何度も蹴られたって話を思い出したのかな?


「そこが間違っているのです、デレス様、物語の主人公がヒロインとそう易々と結ばれないのは……」

「はい、その理由は?」

「その冒険談を、本を売るためです」


 な、なんですとーーー?!


「デレス様は婚約者に去勢勇者と罵られたようですが、

 物語の主人公が去勢されたようになっているのは、

 性的表現をできるだけ抑える、マイルドにする事で読者層、購入層を増やすためです」

「そんでそんな話になるの?冒険談だよね?!」

「はい、でもそういったものはある程度ベースの史実があったとしても、所詮は作り話です」

「つまり子供でも安心して読ませる、買わせるために性行為を作中に入れないと」

「入れても最後、話を最後まで読んでくれた読者へのご褒美ですね、

 ヒロインと出会っていきなり性行為とかそんな冒険談は読んだ事がありません」


 なるほど、主人公の勇者なり男がヒロインになかなか手を出さないのは、

 かっこいい紳士でヒロインを大切に思っててきゃー素敵なんじゃなく、

 そうする事でその本をたくさんの人が買いやすくなる、読みやすくするためか。


「それを、物語の主人公を真に受けてた僕って……」

「だからといって引っ叩かれて良いものではありません、

 聞いた今の話からすると本質からして、根本的な話としてデレス様が被害者なのは……」

「もうその辺にしておいてやってくれ、デレスが落ち込んでいる」

「わかりました、デレス様は悪くありません、寝取られたのとは話はまた別ですので」

「そうなんだ……あ、みんなちゃんと夕食たべよう?いただきます」


 ようやく食べ始める、

 さっきクラリスさんが言いかけた事が気になるな、

 根本的に何だろう、ニィナさんが言ってた年上女性がリードすべきって話かな。


(あれ、ヘレンさんが泣いてる)


 急に自分の境遇を思い出したのかな、

 アンジュちゃんがパンを口に突っ込んだまま撫でてあげてる、

 大丈夫、といった仕草のヘレンさん、色々大変だったんだろう、あ!思い出した!


「食べてる最中にすみません、ヘレンさん、恋人を寝取った女勇者って星のイヤリングしていませんでした?」

「してました!」

「明るい茶髪ですよね」

「間違いありません!」

「見ました、東Aエリアの冒険者ギルド勇者受付で!」


 ニィナさんも反応する。


「という事はだ、そのパーティはAクラスか」


 アンジュちゃんがパンを頬張りモガモガ言ってるのに構わず僕も答える。


「女勇者個人がAランクって事もありえます、あれ、でもそれだとあの仲間は」

「……私のパーティーメンバーは全員がCクラスだったはず、ならば違う仲間を連れて?」


 あ、どうしよう、メンバー全員奴隷だったんだけど言うべきか、

 見た事実なんだから言わないとまずいよな、と正直に話す。


「居たメンバーは魔法使いに僧侶に、でっかい弓を背負った三人とも男性です」

「間違いない、リューイとハオとウィングだわ」

「その、あの、三人とも、奴隷になっていました」


 信じられないといった表情のヘレンさん。


「それは本当?!」

「ええ間違いないです、三人とも隷属の首輪をしていました」

「なぜ、なぜどうして?!」

「僕はそこまでは、すれ違いざま軽く挨拶した程度なので」

「ああ、あぁ、どうして、リューイ、私のリューイがぁ……あああああぁぁぁぁ……」


 眼鏡外して泣き崩れちゃった、食事が終わってからの方が良かったかな。


「デレス、落ち着くまで待ってやってくれないか?」

「はいもちろん」


 でも、いやほんと、どうして奴隷になったんだろう?

 まわりの目を気にしながら食事が終わったのはかなり経ってからだった、

 お店を出ると流れで地下門へ、さあ、宿をどうしよう。


「パーティがBクラスに上がったのだったな、ではBエリアの宿へ」

「すみません、オークションでケルピーを買いたいのでその、節約を」

「デレス、そうか、ならDエリアあたりにするか?」

「しかしデレス様、オークションの目玉でしたら宿代程度の差額は」

「うーん、じゃあ間を取ってCエリアで」


 アンジュちゃんはコクコク頷いて異論は無いみたいだ、

 ヘレンさんは奴隷だから拒否権ないか。


「ではCエリアへ行こう」


 門番みたいな衛兵に冒険者カードを見せる、

アンジュちゃんが『くれぐれも他のエリアに飛ばないように』と念を押される。


(あれ商業ギルドあたりで何か書き込まれたな)


 Aエリアへは昇降機、Bエリアへは動く階段だったが、

 Cエリアへは長いゆるやかな坂道だ、ちなみにDとEエリアへは普通の階段。


(……やっと外だ、そしてもう完全な夜だ)


 街はごく普通の街並み、豪華でもなければ荒れてもいない。

 よし、宿を探そう。

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