第777話 最終試合 リッコvsデレス 負けたら奴隷マッチは突然のハプニングに!!
「きゃああああああああああ?!?!」
リッコ姉ちゃんが大きく振りかぶった瞬間、
サイズが合わなかったのか胸の部分がびりびりと破け、
その中が露出する……まったく、何をやっているんだか。
「もう、リッコ姉ちゃんは昔から自分のスタイルを自覚してないんだから……
後ろを向いてますから、その間にさっさと直して下さい、終わったら教えて……」
「隙ありーっっ!!」
風切る音、
が、しかし……!!
「そこまで、勝者、デレス!!」
「え? えっ?! ……な、なんでー?!?!」
僕は後ろ向きのまま、
飛び込んで来たリッコ姉ちゃんの喉元にプライドソードの先を寸止めしていた、
いや、しているはずだ、そっちを見ていなくても……大歓声の地下闘技場、まぁ、こんなもんだ。
(リッコ姉ちゃんが考えそうな事だ)
思わぬところで偽リッコ姉ちゃんが役に立ったというか、
今までの、昔からの経緯からして裸でも見せて動揺させるかなと、
ハッピーアイランドの魔王、イリュージョンサキュバスがリッコ姉ちゃんに化けた時の教訓が生かされた。
(あれで耐性がついたもんな)
しかし、魔王はちゃんと脱いで誘惑したのに、
今のリッコ姉ちゃんときたら、あんな程度で……
フラウお姉ちゃんが急いでマントを持って来て胸を隠す。
「安い、やっすいハニートラップですね」
「そんな……デレスちゃんなら顔を真っ赤にして止まる、
もしくは逃げると、実際、後ろを向いたし」「リッコ姉ちゃんの裸なんか、とうの昔に見飽きましたよ」
今となっては、
見えた所でどうでもいい。
そこまで見えてないなら、尚更だ。
「でも、でも私の姿が見えてないはずなのに!!」
「こっちは瞬間移動するアンジュちゃん相手に特訓してるんです、
気配と感覚でいくらでも攻撃は対処できますし、見ないで寸止めくらい余裕ですよ」
あと何気に熟練度の上がった索敵スキルのおかげだ、
もう僕の中ではリッコ姉ちゃんは、完全な『敵』認識なんだよなあ。
「ハッ……ハプニングよ、やり直しよ!!」
ここへ主審のナーレさんが割って入る。
「リッコ選手、事前に『自分で服が破けても試合は止めない、負けにならない』かどうか確認なさっていましたが」
「なんでそれをばらすのよー?!」「ですのでこれは『ハプニングではない』と判断させていただきます」
「う、後ろを、デレスが後ろを向いた瞬間に勝負は私の勝ちなんじゃ」「見苦しいですよ、デレス選手の勝ちです」
僕の腕を持って掲げるナーレさん、
さすがにこっちの胸があんな風になったら動きが止まったな、
などというイケナイコトを考えつつもステージ上でうずくまるリッコ姉ちゃんを見下ろす。
「リッコ姉ちゃん、これだけギャラリーが居る中で、よくもまあそんな、破廉恥な秘策を……兄上まで観てるのに」
「デレスなら、デレスちゃんなら、絶対にこれで勝てるはずだったのに、やさしい私の、デレスちゃんなら……」
「やさしい、じゃなく『チョロイ』でしょう、もう昔の僕じゃないんですよ、僕だってもう立派な……」
話していると商業ギルドの方々がステージ上へ、
フラウお姉ちゃん、ミジューキ、ハービィも連れて来られる。
「さあ皆さん、敗者即奴隷マッチ、只今より『隷属の首輪』が商業ギルド公認ではめられます!!」
うっわ、これはこれで客席がまた盛り上がっている、残酷だなあ。
「やれー、やっちまえー!」
「俺なら買ってやってもいいぞー!」
「そのままステージ上でひん剥いちまえー!!」
お下品なお客さんも居るようで……
さすがにリッコ姉ちゃん達は怯えているな、
僕の足元にしがみついてくるリッコ姉ちゃん、うん、泣いてる。
「デレス、ねえデレス、許しなさいよ、これは、命令よ!」
あっ、やり残した大切な事を思い出した!
奴隷になる前にやらないとな……と僕は腕を振りかぶって……
パシーーーンッッ!!
あっ、また軽く眼鏡が飛んじゃった!
いや今回は壊れては無いだろうけれども。
信じられない、といった表情のリッコ姉ちゃん。
「う、うそ、デレスが、私の頬を……?!」
「これはお返しではなく決別です、そしてリッコ姉ちゃん達が追放してくれたおかげで、
ニィナさん、クラリスさん、アンジュちゃん、ヘレンさん、あ、ナスタシアさん、ナタイラちゃん、オトゥハさんと出会えて婚約できました……ありがとう」
こうして首輪をはめられる、
あーあ、みんな泣いちゃって……
追放された時に僕が泣いたお返しみたいになってるかも。
「さあ、たった今、敗者が奴隷となりました!」
ハイトウさんのその言葉の後、
商業ギルドの方が水晶を持って僕らの方へ。
「では主従登録の方を」
「ええっと、イリオン義兄さん!!」
「はいはい、僕が貰えば良いんだよね?」
メイドトリオを引き連れてやってきた。
「リッコ姉ちゃん、正直言って僕はリッコちゃんとは、
もう奴隷と主人という関係ですら、繋がりを持ちたくはないんだ」
「そんな!」「なので義兄さんの管理下で、『とある仕事』をして貰うよ」
ニィナさんもやってきた、
と思ったらいきなり勝利のキスを……
ぷはあ、と見せつけてからリッコ姉ちゃんを見る。
「登録は私達もしよう、デレスがしない分、もう二度と無礼な行動を取らないようにな」
「なんでアンタたちの奴隷に」「拒否権は無い! 酷い捨て方をしたデレスを取り戻そうとしたんだ、このくらいのリスク、受け入れろ」
「だからアレは私達、みんな騙されて……」「さっさと登録を済ました方が良いね、デレス」「あっはい、イリオン義兄さん」
こうしてリッコちゃん達の主人に、
イリオン義兄さんとなぜかメイドトリオ、
そして僕の奥さん方七人も、が登録されたのでした。
「うう、なんで、なんでこんなことに……」
「リッコさんのせいですわ、私は、私はもう後がないのに」
「ああ、デレスちゃんを抱きしめる奴隷になりたい」「ご、ごめんよう、デレスゥ……」
ここでニィナさんが、
四つん這いになっているリッコの前に立つ。
「さあリッコよ……今から、たった今から、デレスのために……『ざまぁ』を始めるとしよう」
おおお、
ニィナさんがついにとうとう、
僕に伏せていた、リッコ姉ちゃんへの『ざまぁ』が実行される!!
(いったい、なにを、どうするんだろうか……?!)
リッコ姉ちゃんに完勝した僕、
その僕のためにニィナさんがやってくれるという、
まさに今から行われる、その『ざまぁ』の正体とは……?!?!