第775話 第四試合 リッコvsニィナ 元正妻と現正妻の戦いとは、やはり『ざまぁ』の序章だった
ステージに上がったリッコ姉ちゃん、
指名されるのを腕を組んで待つニィナさん、
そしてなぜか棒の素振りに夢中なアンジュちゃん。
「さあ、リーダーのリッコ選手は、果たして誰を選ぶのでしょうか?!」
いやハイトウさん、
もうリッコ姉ちゃんの視線が……
「やはり勝負をつけるには手っ取り早いわ、
ニィナとかいう悪女、正義が勝つ所を見せてあげる!」
「……どの口が言う」「バケモノから私のデレスを、デレスちゃんを取り戻すのよ!!」
どうやらリッコ姉ちゃんが正しくて、
ニィナさんが悪者っていう構図にしたいらしいが、
招待客のみんなは真実を知っている、そう、イリオン兄さんさえも。
(あっ、ニィナさんがゆっくり立ち上がった、やっぱでけえ)
そしてステージに上がるまでもないと言った感じで数歩、前に出た。
「下手に逃げず、私を指名した事は褒めてやろう、
だがこれで私から思う存分、制裁を受ける事を覚悟しておけ」
正妻だけにねっ!
「デレス、いいかげん目を醒ましなさい、
正体は恐ろしい魔物が化けているだけかも知れないわよ?!」
「何それ、めっちゃ興奮するんですけど!」「デレスちゃん!!」
そういえば女魔王プレイをして貰うのがまだだったな、
囚われた勇者が骨抜きになるっていう……リッコ姉ちゃんから見たら、
まさしく今がそんな感じに見えているのかも、悪はリッコ姉ちゃんなのに。
「お二人とも、前哨戦はそれくらいにして準備をお願いします」
「ああわかった、すまない」「デレスちゃん待ってて、必ず取り戻すから!!」
「それでは皆様、少しの間だけお待ち下さい」
と言ったハイトウさんも席を外す、トイレかな?
待っている間にナスタシアさんが戻ってきて僕に後ろから抱きつく。
「無事、完勝しました」
「うん、見ていたよ、素晴らしかった」
「剣を汚すまでも、ありませんでしたっ!」
ちゅっ、と頬にキスしてくれて、
席へと戻る……アンジュちゃんはまだ素ぶりしてるや、
ステージではまた審判の入れ替え、ってついに爆乳ナーレさんが副審に!!
(主審はいつだったかの、勇者ポーターのおじさんです)
そしてしばらくして、
司会のハイトウさんが手をハンカチで拭きながら戻ってきた、
お水を飲んでさあ、いよいよ大将戦か。
「お待たせいたしました、それでは両パーティー、
リーダーの入場となります、ますは『デレスフライヤーズ』から、
女剣士リッコ=アヴァカーネ選手の入場です!!」
おお、気合の入った鎧とプライドソード、
眼鏡もさっきのよりフレームが太い、戦闘用だ。
「デレスを救って見せるわ!!」
そうは言っても、
もし勝った所で最終戦は僕となんですけれども!
「対するは『ニィナスターライツ』から屈強な女勇者、
七大魔王を次々と討伐中、ニィナ=ミシュロン選手の入場ですっ!!」
大歓声だ、
僕もつい拍手してしまう、
思わず『ニィナ! 僕だ! 結婚してくれー!!』って叫びたくなる。
(いやいや、しますよ結婚は、もちろん!!)
主審の勇者ポーターさんが、
ふたりを中央に集めた……握手しろと。
「うむ」
手を差し出したニィナさんに……
パシンッ!!
リッコ姉ちゃんが、弾いた!!
「なんで馴れ合う必要があるのよ」
「そうか、だが礼くらいはした方が良いぞ」
「なんでよ」「審判の心象に影響するからだ」
リッコ姉ちゃんが主審を見ると頷かれている。
「では互いに、礼!」
素直に双方、おじぎを……
と思ったらリッコ姉ちゃん、
すぐに終わらせて下がって間合いを取った。
(そして、ニィナさんをめっちゃ睨んでる!!)
それに対し、
ベルセルクソードを抜いて構えるニィナさん、
やはり迫力があるなあ、しかしそれを鼻で笑うリッコ姉ちゃん。
「そんな重くて大きい剣、
隙だらけになるに決まってるじゃないの!
簡単な試合ね、秒で終らせてあげるわ」
と言ってプライドソードを構えた。
張りつめた空気の中、僕は副審の巨乳に目が行っていたが、
ほとんどの観客が向かい合う二人に集中している中、主審の腕が……下がる!!
「はじめっ!!」
「せいやーーっっ!!」
おお、身体を低くして、
下から潜り込むようにダッシュで斬りに行ったリッコ姉ちゃん!
この素早さなら普通は対応できないかも知れないが……!!
「ふんっ」
グァッキィーーーンッ!!
「えっ?!?!」
戸惑うリッコ姉ちゃん、
なぜなら自慢の素早くも鋭い振りよりも早く、
ニィナさんのベルセルクソードがアッパースゥイングでプライドソードを弾き飛ばしたからだ!!
(壁にぶっ刺さったリッコ姉ちゃんのプライドソード、そして……!!」
バッッッ……シィーーーーーンッッ!!!
ニィナさんのビンタが思いっきり当たって弾き飛ばされたリッコ姉ちゃん!
眼鏡が宙を舞い、リッコ姉ちゃんはそのままステージ場外へ、柵へガシャンと全身を打つ!
すげえ、ビンタ一発で剣士ひとりを、ふっ飛ばしちゃったよ……ほんと、女魔王かってくらいのパワーだ。
「そこまで、勝者……ニィナ!!」
大盛り上がりの地下闘技場、
フラウお姉ちゃんが慌てて回復魔法をかけ、
外れて割れた眼鏡をミジューキが回収している。
(ハービィは何だか怯えているな)
ステージ上からリッコを見下ろすニィナさん。
「デレスの受けた痛みは、こんなものではなかったはずだ」
あっそうか、
僕が捨てられた時に受けた、
リッコ姉ちゃんからのビンタを仕返してくれたのか。
(それでも首を持っていかれそうになっていたぞ、あのパワー)
何百倍返しだっていう。
「……バケモノ! やっぱりアンタ、人間じゃない!!」
「決闘を申し込んだのはそちらの方だろう、そんなことよりもだ、
こんなのはただの序章に過ぎない、本当の戦いは……デレスが締めてくれるはずだ」
僕を見て微笑むニィナさん、
つまり、この後の僕こそが本番だと、
そこで本当の『ざまぁ』が待っていると……。
(うん、現正妻による、元正妻への『ざまぁ』の序章としては、上出来過ぎる)
さあトドメを、
本当の決着をつけないとね。
「以上、『ニィナスターライツ』の四勝により、
最終戦はリッコ選手とデレス選手の一騎打ち予定となります、が、
その前に第二戦で負けたミジューキ選手が、どうしても再戦をしたいとの事です!!」
あっ、そうだった。
「ナタイラ選手もそれを受けましたが、
第五戦、『デレスフライヤーズ』から提案があるそうです!!」
ミジューキだけじゃなく、
フラウ姉ちゃんやハービィまで壇上に上がった、
そしてミジューキが僕らに向かって言う。
「……まだ戦ってない人もいるでしょう?
なので3vs3で決闘をしましょう、ヘレン、アンジュ、クラリス」
「構いませんわ」「ケーッケッケッケ」「……時間稼ぎでしょうが、後悔しますよ?」
おお、まさかの集団戦!
ニィナさんが僕の方へやってきて問う。
「デレス、構わないか」
「ええ、でもさっさと片付けても良いですよ」
「だそうだクラリス」「とりあえず、私達の見せ場は作りましょう」
こうして思わぬ再戦が決定したのだった。
「それでは両チーム、準備をお願い致します!!」
うん、僕も一緒に、
控室へ行こうっと。