第71話 自由都市と不自由都市
自由都市シュッコ、その西の街へやってきた、
高い壁が大きな円になっており出入り口では衛兵が居る。
「アンジュ、話した通り大勢の人前ではマスターと呼ぶ、良いな?」
「……(コクリ)」
ゆっくり目に一度だけ大きく頷く、
いつもは凄くコクコク首を縦に振るのに、
まだ機嫌が悪いのかな?と思ったが、そういうキャラクター付けかも?
(シフリンで十代のレベル五十幻術師爆誕がバレちゃったからな)
「すまない、先ほどこのサモナーに襲われた」
いきなりヘレンさんを衛兵に突き出す、
襲ってきたサキュバスの魔石も見せ詳しく事情を説明している間に、
ヘレンさんが連れて行かれる、襲った証拠とか魔石だけで足りるのだろうか?
「冒険者カードをお願いします、あと手も」
水晶を持ってきた衛兵さんに言われるがまま従う、
そうかこっちに記録が残っているのか、でもちゃんと襲われたってわかるのかな、
普通の冒険者ギルドのとは違うみたいだけれど、大きくて加工が綺麗。
「サモナーに襲われるとは災難でしたね」
「ええ、びっくりしました」
「勇者ポーター様なのですね、勇者としての活動は」
「あんまりしてない、かな」
と、水晶が鈍く光った!
「少々嘘をついているようですね」
「あ!ごめんなさい、勇者カードの方も出します」
なるほどそういう事か、
これなら襲われた事実もわかって貰えそうだ。
「それではあらためて状況を、個別にも窺わせていただきます」
「はい」
「襲われた状況ですが……」
(アンジュちゃんとか大丈夫かな)
一時間少々経ってみんな解放された、
ヘレンさんについては後日、冒険者ギルドで聞いて欲しいらしい、
ニィナさんが仲間にする、というか奴隷として買う方向と伝えてあるとか。
「これが噂の自由市場か」
たくさんのアイテムやら武器装備が雑多に並べて売られている、
それぞれ多種多様で安い使い捨ての矢から高級そうな光属性魔石まで、
なんでもあるがどれがどこにどうあるのか、お目当てを探す人には大変そうだ。
「アン……マスター、ワイルドキャットとにらみ合わないで!」
ティムされたらしい魔物だが愛玩動物としても人気がある、
買った所でテイマーが居ないから戦闘としては使えないが、
サモナーもレベルが上がればモンスターティムの魔法が使えるようになったはず、
学園でサモナーさんに直接聞いたから間違いない。
「どうしたデレス、色っぽい声出して、昨夜責めすぎたか」
「違います、わかって言ってるでしょう!」
アンジュちゃんと呼びそうになってアンで止めたのが色っぽく聞こえたらしい。
「見ているだけで楽しいが今は冒険者ギルドが先だ」
そう言って市場を通り過ぎると大きな大きな建物、
今まで見た冒険者ギルドの中で一、二を争う大きさだ、
入るとやっぱり人が多い、冒険者受付も六組くらい並んでいる。
「顔役は……暇そうなのは居ないな」
よく見ると冒険者パーティーと話し込んでるおじさんが別々で居るが顔そっくりだ、
双子かな?そのうち片方が話が終わったみたいで見ていた僕らに気付いて近づいてくる。
「ようこそ自由都市シュッコへ!私は勝手に案内役をやっている冒険者、
A級パーティー『ダイナミックアテンション』のジュノスと申します」
うーん、体つきが剣士や戦士ではない、
かといって魔法使い的な格好もしていない、
弓使いみたいな感じでもないし何だろう。
「ちなみにテイマーをやっております」
なるほど!納得した。
「我々はC級パーティ『ニィナスターライツ』のニィナだ、あっちは兄か弟か?」
「兄のシトラスの事ですか、よく双子に間違われますがひとつ違いですよ」
「そうか、特に用がある訳ではないがなすまない、余計な事を聞いた」
「いえいえ、それで自由都市へは何が目的で?」
「色々ある、オークションも近いと聞いたが一番は七大魔王のうちひとつがここに居ると聞いてな」
そうか、いよいよか。
「はい、この自由都市はダンジョンの上に作られた都市でして、
もう二百年以上も魔王が倒されておりません、階層も三百階まであります」
「それは大変だな、そこへ行くまで何日かかるのだ」
「普通なら五日か六日ですが、こちらではなく東の、
通称『不自由都市』からなら条件さえ合えばもっと楽に潜れます」
不自由都市??
あ、マスターことアンジュちゃんが早速話に飽きたかふわふわ待機列にちょっかいかけに行った、
めっちゃびびられてるのでむんずっと掴んで引き戻す。
「おや幻術師様ですか珍しい」
セクシーパンサーローブと魔法で身体や顔を隠しているから少女とはわからないはず、喋らなければ。
「それより話の続きだが」
「はい、東の街へは行かれましたか?」
「大きい方だな、まだだ、別の街なのか?」
「いえ、同じ自由都市シュッコです、公式には西地区と東地区となっていますが、
一般的には自由エリア、不自由エリアとも呼ばれています、というのもエリアが区分けされているのです」
「詳しく聞こうか」
説明によると冒険者ランクや商業ランク、住民カードのランクによって入れる場所、
住める場所が区切られており、それが六段階に分かれているらしい、冒険者で言えば、
下からEランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクといった所、
なのでC級パーティーの僕らは上から四番目までのエリアは出入り自由だが、
個人でならAランクを持っている僕は上から二番目まで出入りできるらしい。
「ふむ、面倒くさいな」
「しかし上流階級は治安的にも安心できるようで、
そういうの関係なく過ごしたい方はこちらの自由都市側、西エリアに住んでいますよ」
なるほど、そういう選択ができるという意味でもここは自由都市だ。
「あとオークションも開かれているらしいが」
「隔月で三日間開催されます、初日はアイテムや武器装備、二日目は奴隷やティムモンスター、
三日目は不動産がオークションにかけられます、六日後に開催されますよ」
良いタイミングに来られて良かった。
「それと金さえ積めば短期で学べる学校があると聞いたのだが……」
と情報を色々聞き終えた頃に受付の順番が来た。
「ジュノス殿ありがとう」
「いえいえニィナ殿、また困ったら私か兄に尋ねていただければ、それでは」
チップとか払わなくていいんだろうか、
なんて思いつつ勇者受付に行くと派手なおばさんが対処してくれる。
「冒険者カードをお願いしまあす!」
ちょっと変なテンションだ。
「……ニィナスターライツの皆さんですね、おめでとうございます、
パーティーがBクラスへ昇格となっておりまああっす!!」
おお、シフリンで魔王を倒したからかー!
「ただ、ただ!間に合っていないものも多々ありますのでお調べいたしますねえ!!」
そりゃそうだ昨日の今日だもの。
「デレス、一応確認だ、さっきのヘレン、買って良いな?」
「はい、そのあたりはお任せします」
「わかった、そうしよう」
奴隷かあ、本当に買うなら奴隷買うの生まれは初めてだな、
そういや実家、アヴァカーネ家では奴隷とか居なかったと思う、
メイドにもそういのは居なかったはず、獣人もいたけど奴隷ではなかった。
「お待たせしました、とその前にデレス様」
「はいっ?!」
「勇者カードの方もお出し下さい」
「は、はいっ」
ばれてる……急に真面目なトーンだ、
まあ、さっき衛兵に出したからか。
「……お待たせしました、東のミリシタン大陸より大変重要な伝言があります」
「なんでしょうか」
「なんでも『勇者が死んだ』と」
「……はひっ?!」
なんだその急転直下は。




