第69話 サキュバスの群れと眼鏡サモナー
「フンッ!!」
ニィナさんが真っ先に三匹のサキュバスを、
ベルセルクソードひと振りでまとめて倒す!
クラリスさんは雷魔法で二匹瞬時に仕留め、
僕もアダマンタイトソードで一匹首を刎ねた、
倒された緑色のサキュバス六匹は蒸発するかのように消え魔石だけがポトリと落ちる。
「召喚モンスター独特の死に方ですね」
サキュバスはいつも、死ぬときは蒸発というより燃え尽きるような感じで死に、
死体が灰のようになって地面に痕を残すが、サモナーによる召喚モンスターの場合、
魔石を媒介とした作り物なため、あっけなく消滅し中心の魔石だけが残る。
「デレス、サモナーに詳しいのか」
「東の大陸で、学園に特別教師として来てましたから」
「召喚できる魔物は人によるらしいな」
「はい、僕のお会いしたのはゴブリン系でしたね、数で勝負タイプの」
「私の、ルアンコ教国にいたふたりのサモナーはスライム系と植物系でした」
クラリスさんの言葉で思い出した、
魔共教だっけ、かわいい魔物とセクシーな魔物どっちが見たいかとか言ってたな、
スライム系でセクシーなのは考え辛いから植物系セクシーというとアルラウネか。
「きーーー!は、放しなさいよこのクソガキ!!」
ふいに森の上空にニィナさん程ではないが大きな女性が持ち上げられている、
アンジュちゃんが黒装束の後ろに抱きついて空中に持って行っちゃったみたいだ、
姿が見えないと思ったら瞬間移動で敵を捕まえてくれていたのか、索敵の効果をもう使っている。
「そんなちっちゃい身体でどこにそんな力があるのよ、もう!」
あーそれ魔力依存ですよ、と言いたいが高すぎて声が届きそうにない、
あれよあれよと僕らが引くくらい上空高く舞い上がっていき、そして……
「きゃああああああああ!!!」
放した!真っ逆さまに落ちてくる女性、
さすがにこの高さだとニィナさんでも受け止められないんじゃ?
と思っていたら地面にぶつかるスレスレで瞬間移動してきたアンジュちゃんが引っ張って助けた!
「むきゅううううぅぅぅ……」
地面に寝かせると眼鏡の奥で目を回している、
長いピンクの髪が乱れて地面についていて少し可哀想、
側に水晶が転がっている、アンジュちゃんがそれを拾う。
「……『サモナーの水晶』レベル五十で冒険者ギルドから貰えるアイテム、だって」
「それは良いがアンジュ、やりすぎだぞ」
「だって……魔物でボクたちを攻撃してきたから」
確かにサキュバス六匹で攻撃してきたら殺意があったと言われても否定できない、
クラリスさんもフォローにまわるかのようにやさしい声で語りかける。
「アンジュちゃんは殺さずに脅すために落下させたのよね、偉いわ」
「えへへへ」
こう見るとニィナさんは厳しい父親、クラリスさんはやさしい母親みたいだ、
じゃあ僕はお兄ちゃんにならないとな、同い齢になったばっかりといえども。
「よしアンジュちゃん、この召喚魔法使いの鑑定をお願いできるかな」
「……デレスくんが言うなら」
「いや僕だけじゃなくニィナさんクラリスさんがお願いしてもやってよ!」
じーっと見つめる、
無詠唱で鑑定しているんだろうけど時間がかかっているのは情報量が多いからだろうか、
そういえばアンジュちゃん中身幼いけれど単語がわからないとか
国語的な意味で困った事は今の所ないっぽいけれど。
「名前:ヘレン 年齢:二十三 レベル:五十 職業:サモナー(サキュバス系)
所属パーティー:マスカレードバラード(リーダー) 所属メンバー ヘレン
召喚師魔法 レベル五 バッドチャーム 魔物相手に魅了させ少しの間動きを止める、異性型だとなお効果が増す
レベル十 バッドヒール アンデッド系モンスターの体力を減らす事ができる
レベル十五 初期魔物召喚 ノーマルなサキュバスを召喚者の魔力に応じた数、同時に呼ぶことができる 魔石必須
レベル二十 バッドチアーズ 召喚した魔物の素早さを魔力に応じ上げる事ができる
レベル二十五 乾布摩擦 早朝、屋外で全裸になり唱えながら全身を乾いたタオルで擦ると健康になる
レベル三十 サモン収納 召喚した魔物を使用後消して魔石に戻さずともそのままの経験値で収納できる、一度に召喚できる人数分のみ
レベル三十五 スペシャルコスチューム サモンの外観を多少カスタマイズできる 例:バニーガール等 その際、名前もつけられる
レベル四十 中級魔物召喚 属性別のサキュバスを召喚者の魔力に応じた数、同時に呼ぶことができる 種類は魔石に準ずる
レベル四十五 魔物鑑定 魔物限定で詳しい能力や弱点を見る事ができる
レベル五十 無詠唱
個人初期スキル:超早熟 レベル五十までレベルが簡単に上がり魔法もしくは特殊スキルもレベル五毎に必ず覚えるが五十以降は極端にレベルが上がらなくなる
武器:サモナーの水晶 レベル五十になると冒険者ギルドで貰える 召喚した魔物の能力を上げる
:サモナーの鞭 レベル十になると冒険者ギルドで貰える 召喚した魔物への指示にも使える
防具;サモナーのローブ 素早さと魔法防御力が少し上がる
下着:サキュバスの高級下着(黒) つけるとすさまじく気持ち良い
指輪:親愛の指輪(現在対象者なし) 揃いになっており、つけた者同士で魔力を少量受け渡しができる」
わーそこまでわかるんだ。
「アンジュちゃんお疲れ様、ついでにこの人、起こせられる?」
「……うん、わかった」
無詠唱でおそらく天気魔法だろう、顔に雨を降らせる、
眼鏡が水浸しでかわいそうだなと思いつつもしばらくして慌てて起き上がった!
「ぶわっは!な、何よこれは!」
「……何だこれはと言いたいのは我々の方だ」
ニィナさんが怖い顔でベルセルクソードを首にあてる、
プリンセスソードじゃないから本気じゃないのはわかるが、
ヘレンさんはキッと睨んできた。
「くっ、殺しなさいよ!私はもう終わりよ!アンタ達に良いようにされるならいっそここで!」
ほ、ほんもののくっ殺だああ!
模擬戦である決闘でふざけてやってたけど、
今回はアンジュちゃんに悪影響を及ぼすといけないから自重してたんだよな、それがここで!
「ここにそんな事をする者は居ない、事情を聞こうか」
「……私はヘレン、このままだと私は奴隷になるわ」
「どういう事だ?」
「私は……私はパーティーメンバーに、ううん、あの人に裏切られたの、
私以外みんな、憎き女勇者に……寝取られたのよ」
「ほう、話を詳しく聞こうか」
うん、これは僕も聞きたい。




