第700話 ここを三号館とする!
※記念すべき700話ありがとうございます、
完結までもうちょっとお付き合いください。
以前にアイテムダンジョンで手に入れた『2人用ビート板』により、
クラリスさんアンジュちゃんが行ってきた秘密の島『ハッピーラッキーアイランド』
そこへ行って転移魔方陣を設置、戻ってきて繋げ、みんなで押しかけたのだが……
「そういえばアンジュちゃん」
「なーにー、ぼすに閉じ込められてかわいそーなデレスくん」
「いや言い方! もうこの顔だけ出すの慣れて来たよ、っていうんじゃなくって!」
むしろ前向きに顔を出せるありがたみすら感じる。
「ぢゃあなーにー?」「ここに来るアイテム使った時、異世界人はどうやって?」
「んっとねえ、ボクの後ろのイワモトさんが抱きついて、その後ろがハイトウさんで、
一番後ろにMAINAっちが抱きついていたよー」「器用な」「すぐついたよーー」
と話しているうちに僕の本体であるニィナさんが『謎の種』を取り出した。
「おそらく失敗しないとは思うが、万全を期そう、デレス、出てくれ」
「あっはい、種を植える時は輪になってないといけないんですよね」
「それもあるがこれを着てくれ」「あっ、幸運装備! ミリシタン大陸で手に入れた」
ニィナさんのアイテムボックスの中だったか。
(装備もあっちこっち渡したり受け取ったりして、手を突っ込まないとわからなかったりする)
僕に普通に渡された、という事は……!!
「これを着れば良いんですね」
「ああ、水着の上からな、そして種を放り込んでくれ」
「それだと天大樹になる可能性が限りなく100%に近くなりそうです」
でも、もしもという事もある。
「ねー、ハイトウさーん」
「はい、何でしょうか召喚主アンジュ様」
「あまたいじゅーのたーね、まだあるー?」
そうだ、そっちを使えば確実に100%だ。
「あと一粒ですが」
「アンジュ、それは後々で本当に大切な場面で使う、
いやもちろん使わない可能性もあるが今は使い時では無い」
まあそうだよね。
「ラストエリクサー症候群ですな」
「そんなアイテムがあるのか、そしてイワモトは黙れ」
「ははっ」
……ともかく、一応は確認をしておこう。
「ハイトウさん、この謎の種、失敗すると何になるのですか?」
「最悪の場合は敵ですね、『ブラックカオスエント』まあ巨大闇魔石を出すので、
倒す事が出来ればそれを売れるのですが、大規模討伐となるのでリスクとそれに見合う価値が」
なるほど、でもそれはそれで観て見たい気も。
「他にはどんなものに」
「普通の邪魔な大木になったり、公園になったり、毒を延々出す樹になったり」
「何種類くらいあるんですか」「20種類ですね、全部細かく思い出しましょうか」「いやいい」
ニィナさんが終わらせちゃった。
「じゃあちょっとメイド服から幸運装備に着替えてきますね」
「いやどこへ行く気だ」「テントの裏あたりへ」「ここで良いだろう」
「えええぇぇぇ……」「減るものでもあるまいし、手早く頼む」
まあ中は水着だし、
と全員に見られつつ、てきぱきと着替える……
よし、これでハッピーハッピー装備は完璧だぞっと。
(今更だけど、ラッキーじゃなくハッピーなんだよな)
こっちの島に来て気付いた。
「ではアンジュ」
「あーい、ディグホールだよー」
大穴が開いた、
みんなが囲む中、
僕はポイッと『謎の種』を放り込む。
(吟遊詩人組とラギシーノさんも居るけどいいのかこれ)
さて、この後が問題だ。
「ニィナさん、まあ運よく天大樹三号館になるとして」
「ああ、三号館としよう」
「育てるにはええっと、レア魔石かそれレベルの核となる魔石、あと出来れば人間の勇者が必要ですよね」
さすがにあのアリスの奴隷王子勇者は放り込みたくない。
「前者はこの島で調達しよう、そうだなイワモト、ハイトウ」
「ははっ、おそらくは」
「どちらの島も超強力な魔王が居るはずですから」
魔石の方は大丈夫っぽい。
「では勇者は」
「方法は考えてある、今までの事を総合して工夫すれば良い」
「はあ」「では行こうか、デレス」
これは装備を脱いでメイド服に戻り、
ニィナさんの胸元へ戻れと言った感じか、
でも僕は、さすがに今回は……!!
「すみませんニィナさん、この幸運装備をここで試したいのですが」
「それでは私の中へ入るのは大変だぞ」
「ですからこのままで、もちろん心はニィナさんの奥深くに入ったままです!!」
……大丈夫かな?
納得してくれると良いのだけれども!
駄目だと言われたらもう一回くらいはゴネたいな。
「わかった、デレスがそこまで言うなら」
「はい、ニィナさんのために、幸運を捧げます!」
「ではまずハッピーアイランドから行こう」
こうしてジェットコースター乗り場へ、
確かシャマニース大陸首都のムンサンだっけ、
あそこにあったラティスランドって遊園地にもこれあったなぁ。
(でも島と島とを結ぶ、海を超えるのは凄いな)
うん、これだけでお金を取れそう、ウチのじゃないけど!
「マナーオ、乗り賃は」
「無料やで~」
「気前が良いな」「来るだけでなんぼかかかるからな~」
課金アイテムとかなんだっけ、ビート板。
「では行くが、最後に注意事項は」
「瞬間移動の魔法はごく一部のセーフティーゾーン以外、使えへんで~」
「なにっ本当か?!」「あと海に逃げるのも禁止やで~、不思議な力で入られへんから~」
色々と制約があるみたいだ。
「セーフティーゾーンはどうやったらわかる」
「表示されるから、行ったらわかるで~」
まあ、わかるって言うならわかるのだろう。
「よし、では行ってくる、みんな座れ」
「「「「「「「「はいっ」」」」」」」」
「承知した!」
僕ら人間&異世界人はもちろん、
アザラシやドラゴンやゴーレムまで律儀に乗って座る、
人間体ベアード様もセクシーゴーレムと並んで最後列だ。
「ほな、ハッピーアイランドへ、行ってらっしゃ~~~い!!」
―――この時、僕はまだ知らなかった、
この特別な島で、まさかまさかの再会を果たす事を、
そして、その相手と僕が、本気で戦うといった展開を……!!!




