第664話 なんでこんな石像がとなんでこんなクリスタル像が
「戻ったぞ」「おかえりなさいませ」
天大樹の冒険者ギルド、
受付は左の勇者専用から今、迎えの言葉を言ってくれたモグナミさん、
一般受付はヴェルビンちゃんとなぜかアーバンラミア、そして右端の初心者受付は……
「なんだ、ミリーナではないか」
「はい、天使族として正式な受付嬢に」
「そういえば真似事はやっていたな」「いや真似と言われても」
後ろのストレーナさんがガタッと立ち上がる!
「そこは『申されましても』でしょう?!」
「ひっ! は、はいっ、しっつれい致しました」
「またっ! しっつれい、ではなく『失礼』ですわっ?!」
きっびしいなぁ、別にいいけど。
(いっけね、さっきのカウミさんみたいなこと思っちゃった)
普通に勇者受付へ。
「ではモグナミ」
「はい、冒険者カードをお願いします」
「デレス、今更だが『勇者ポーター』のカードはまだ必要か?」
僕が両方出したのが、なにか引っかかったのかな。
「もう最近、両方出せって言われるのがわかっているので」
「そうではなく、ポーターの受注とか必要あるのか」
「ま、まあ、これはそもそも気持ちの問題でして」
みんなが出している間に少し考える、
まだ『勇者ポーター』で居る意味って何だろう?
寝取られたショックを振り切るために、勇者を捨て、イチからやり直す……
(やり直すどころか、勇者レベルがなんと100ですよ!)
うん、普通に考えたら勇者ポーターっていうセミリタイア制度、
僕がなんでまだ続けているんだってなっちゃう、でもまあ取っちゃたしぃ、
逆に今更これを返上する理由も無い気もする、変な依頼は断れるんだから。
(そこそも勇者ポーターの依頼、最後に受けたのいつだろう?)
とはいえ取得から、日数的にはそんなに経ってはいない、はず。
「……はい、確かに皆さんの冒険者カード、確認させていただきました」
そしてなんのかんのやったのち(省略)、
巨大魔石をニィナさんが出すとカウンター奥のギャラリー、
えっこの人たち今夜も泊まる気なんだって大陸の冒険者ギルド職員達から歓声が上がる。
「……これは冒険者ギルドで買い取っても」
「いや、鍛冶屋にお願いしたい、ここの冒険者ギルドお抱えのな」
「では隣の商業ギルドですね、あちらからどうぞ」
言うてもまだ無人で真っ暗だろう、
用があるのはそこから曲がったマリウさんの鍛冶工房、
と思って入って見ると……え、ええっ、えええええ?!?!
「「「「商業ギルドへようこそ!」」」」
カウンターの受付四つ、
全部、にっこにこのドワーフ受付嬢で埋まってるううううう!!!!
(ここまで占領されたああああああ!!!!!)
うん、見事にしてやられたねっ!!
ニィナさんは僕を胸元に閉じ込め……もとい仕舞ったまま、
一番近い商業ギルド受付嬢の所へ行って巨大魔石を見せる。
「失礼、これの加工をお願いしたい」
「はい、姫の、いえ鍛冶長様の工房へどうぞ」
「……一目でわかるな」
うん、工房への扉の両サイドに、
マリウさんの石像(可愛さマシマシ)と、
僕の銅像が仲良く並んでいるね、ってコレいつのまにいいいいい?!?!
「なんでこんな石像が……」
「デレス、大人しく隠れておけ」
「あっはい、マリウさんの鑑定眼だとバレバレでしょうけど」
入るとすでに、
中では炎をバックにキンキンキンキンやっていた。
「失礼する」
「まあデレス様、それとニィナさん、皆さんも」
僕が最初なんかーーーい!!
いや隙間すら、まだあんまり開けてないぞ?!
「表の石像は何だ」
「はい、ここ天大樹の入口に対抗してみました!」
「対抗……?!」「まだご存じありませんでしたか!!」
そういや地上からの入口、
正門なんて久しく見てないな、
ジュマジさんアマリちゃんくらいだろう通ってるの、それも昨日までだろうし。
「デレス、見てきてくれ」
「はい、ヘレンさん」「私も行きます!」
「あ、ナスタシアさんも」「三人で良いだろう」
ナタイラちゃんも行きたそうだったそぶりを止める、
そして瞬間移動で玄関近くの安全地帯(転移で人が来るから入らないでねエリア)へ、
天大樹がLv5になってもその区画は継続したままだったんだ、そして豪華な玄関へ。
(ちゃんと受付まであらぁ)
座っているのは知らない熟女天使族、
もうあの旧集落から何人来ているんだろうか、
あっちはドナジンとかいう妖精しか残ってないんじゃ……?
「旦那様、外へ」「御主人様、こちらです」
「うん夕方だね……こ、こっ、これはあああああ!!!」
玄関の横に、
でっかいでっかい僕のクリスタル像があああぁぁあああ!!!!!
「まあ旦那様、素敵です」
「ご主人様、かっこいいです」
「なんでこんなクリスタル像が……台座に何か書いてある」
ええっと『勇者Lv100記念 デレス=アヴァカーネ』って書いてある。
(そういえばイワモトさんが、なんかこんなこと言ってたっけ)
でもまさかクリスタル像とは!!
(しかもフルネームかよっていう)
「あの、ご主人様」
「はい、あナスタシアさん」
もう面倒臭いから、くっつけちゃえ。
「反対側が空いていますね」
「まあ、そう言ったらそうですが」
「私もLv100になって、並びたいです!」
勇者アサシンも対象になるんだろうか。
「ええっと、おそらくですが、それ、ニィナさんが『私が先だ』って言いそうです」
「……ですよね、失礼致しました」
「でもまあ、近くになら」「はい、ナスタシア、頑張りますっ!!」
ヘレンさんはどこか変な方向を見ている、空の彼方を……
「……旦那様、帰ってきたようです」
「えっ、誰が?!」
「アンジュ様です、ほら、あちら」
……そう言われて見た方向にあったのは……何か来る!!
「あれは、まさか、もしや……でも、でも!!!」
ドンドン近づいてくる、
次第にそれが何か見えてくる、
その大きな物体の、正体とは……!!