第661話 上級ダンジョン設定とウッキウキのマリウさん
「ふむ、カウンターがひとつ増えただけか」
レベルアップした天大樹の樹の中、
地下の冒険者ギルドは受付が三つから四つに増えていた、
左端が勇者専用、右端が初心者用受付になっている。
(で、左からモグナミさん、ヴェルビンちゃん、休止中の札、ダペナちゃんっと)
また誰か初心者用ダンジョンに潜っているのだろうか?
ニィナさんが勇者専用受付へと行く、いやもちろん僕も連行されているよ!
「おはようございますニィナ様」
「ああ、早速だが依頼はあるか」
「はい、ダンジョンを増やしていただければ、と」
そうか、それがあったっか。
「デレス、一緒に入るか」
「ええっと、天大樹の中へですよね」
「ああ、カスタマイズだ」「んっと……ニィナさんにお任せします」
このあたりはニィナさんを信頼しているし、
ぶっちゃけ面倒くさい、また目の前にいっぱいの□や■が並ぶと、
文字数稼ぎと思われる、いやもとい、目がチカチカするからねっ!
(いま、よくわからない意思が入ってきたけど、とにかくニィナさんから離脱して、っと)
「わかった、上級ダンジョンで良いな」
「はい、魔物って足りてますよね多分」
「だと思うが、いざとなったらティムしたドラゴンを使うか?」「いや広さが」
小さいのもいたっけな、
でもまあ、今は昆虫系とかで足りる気もする。
「では行ってこよう……このあたりで良いか」
何も無い木の壁に手をつけると、
開かれて中へ入って行った、あとはお任せだ、
改めてギルド内を見ると受付前の壁際に木のベンチが設置されてたりしていた。
「やはり広くなってますね」
「はい、実は部屋も増えていまして、まずはあちらを」
モグナミさんが指し示すのは初心者受付の先、
大きめの扉があるな、ニィナさんを置いて悪いが、みんなと入ってみると……
こちらもカウンターがあって受付が四つ、でも誰も居ない、ええっとここは……
「あっ、商業ギルドか!」
「にゃははは、せいか~~い」
「うわっ、コロメが生えてきた!!」
アマタツさんだけどね。
「ここで商売できるようになるよ~」
「何をすればいいんですか」
「したい事をするといいかにゃ~にゃはは」
そもそも必要か? っていう。
「……あれ? 何か焦げ臭いっていうか、これは」
「デレス様、あちらの扉ですわ」
「あっ、何か隙間から熱風が……」
冒険者ギルドの部屋でダンジョンの入口があった位置に、
こっち商業ギルドの部屋では大きな扉がある、開いて見て見ると……!!
「ここは、鍛冶屋だ!!」
「そだね~、朝から張り切ってるお姫様が居るかにゃ~~」
「ええっと、お姫様という事は……!!」
慌ただしく鍛冶用の設備をいじっているドワーフのお姫様、
他にも助手ドワーフが五人ほど手伝っているな、うん本格的だ、
気配に気づいたのか踏み台の上から振り返ってこちらを見るマリウさん。
「あなた!!」
「あっはい、僕です」
「来てくれたのね、嬉しい!!」
飛びついて抱きついてくる!
いやいやススが……でも愛情は伝わってくる。
「ええっと、ここは」
「私の工房です、ですから私の国の一部です!」
「あっ、そういうことに、だから『あなた』って」「はい!!」
おさらいすると、
僕はドワーフ国の敷地内でのみ、
マリウさんとは夫婦という事になっています。
(ていうか頬をスリスリしてきてるううううう!!!)
ニィナさんなら無理矢理に剥がしてたな多分。
「マリウさん、落ち着いて」
「落ち着けません、私の工房をデレスさんの、あなたのアジトに!」
「ま、まあそうだけれども」
何このウッキウキなドワーフのお姫様は。
「もうこれでずっと一緒です!」
「ええっと、ここに住むの?!」
「似たような物です、実はこれを」
と、一枚のスクロールを出す。
「それって」
「いただいた転移スクロールを参考に、複製しました!」
「えっ」「ただこれは行き先が双方一か所ずつで、ドワーフ国とここのみの行き来です!」
それでもあのアイテムを複製するのは相当なものだぞ?!
なんというか、これも僕の傍に居たい一心で完成させてしまったのかも、
恐ろしいな愛の力は……つまりここにはもう、いつでも好きに来られる訳だ。
「マリウさん以外でも使えるんだよね?」
「もちろんです! これからドワーフ国の工房の方にも、来られますか?」
「えっ……そ、それは、まあ、また今度」「今度、来て下さるのですねっ!!」
彼女も彼女で圧が強いなぁ、
さすがニィナさんと互角にやりあえるだけある、
いや、実はニィナさんより上手、まであるな彼女は。
(だからといって僕にとっての正妻は、ニィナさんだ)
「ええっと、それじゃあその、これからも、よろしく」
「はい、あ・な・た♪」
あっ、目を閉じてキスを待ってるううううう!!
(ここは軽く、形だけ……)
と、素早く終わらせようとしたら……
うん、この後数分の事はあえて語りません。
(クラリスさん達の目が怖かったよ!)
そしてマリウさんが一言。
「デレスさんだけじゃなく、皆さんにも認めていただけるよう、頑張ります!」
こうして逃げるように商業ギルドの部屋へ、
待っていたアマタツさんは開いていた扉からずっと見ていたようだ。
「にゃははは、濃厚だったね~~」
「いや助けて下さいよ、ってさすがにそれは頼り過ぎかな」
「それなんだけどね~、魔導具かにゃ~、あの部屋、入れなくなっちゃった~」
えええええアマタツさんが?!
「扉をくぐれないんですか?!」
「だね~、壁からも天井からも床からも無理で~、
強力な結界魔法だね~、いやこれとんでもないことだにゃ~」
まったく恐ろしいドワーフの愛だぜ……
「うーん、商業ギルドはしばらく無人でも良いかな」
寂しかったらアンジュちゃんから例の人形三体借りれば良いし。
という感じで賑やかな冒険者ギルドルームへと戻るとニィナさんが!
「カスタマイズしてきたぞ」
「あっはい、ありがとうございます、どうでした?」
「ボスにメタルコモモを設定した、運が良ければレア魔石が出るであろう」
……うん、これって何気に凄い事ですよ、これは!!
(後は枕を出す、原人系の魔物を仕込めば完璧だな)
エリクサーの価格暴落、待ったなしだ。
「早速、入ってみますか」
「そうだな、ダペナも来てくれるか、妖精の指輪を渡す、レベルを上げよう」
「はいっ、では『冒険者ギルドへの依頼』という事でっ!」
あー、職員としての時間だとそうなるのか、
後ろに溜まっている他所のギルド職員も頷いてら、
じゃあとりあえず、さくっとメタルコモモ狩りに行ってみますか!
「では行くぞ、みんな良いな」「あっはい」
「はいニィナ様」「ニィナ様、旦那様、サキュバス無しでもお任せ下さい」
「私は前衛で」「範囲魔法は私が」「私は吟遊詩人のスキルを生かして!」「アタシも頑張るよ~にゃははは」
ええっアマタツさんまでもーーー?!?!?!