第646話 急に静かになった魔王部屋とあんなドラゴンこんなドラゴン
ドラゴンが住まう浮遊島の魔王、
その名も『テイマードラゴン』をまさかのティムしてしまったヘレンさん、
とたん、他のドラゴンも急に静かになる、良く統率の取れた事。
♪カチカチカチ、カチカチカチ
「♪おやまをのぼって~おかをくだって~おやおや割れ目が~」
「もうその卑猥な歌はいいぞ」「……あらそう」
カスタネットの音も止まった、猥歌(春歌)も。
「ふう、良くやった、怪我は無いか」
「あっても大したことはありませんわ」
「見た感じ、無事そうだな」「僕も見てくださーい」
とニィナさんの胸元に収納されたまま言ってみる。
「デレスは私の一部だからな、大丈夫なのはわかっている」
「では、もう出ても」「却下だ」「そんなあ!!」
「さて、このとんでもない量のドラゴンをどうするかだ」
うん、死骸も生きているものも、めっちゃ居る。
「おいテイマードラゴン、こいつらの状態は」
「ゼンブ ワレガ ティム シテイル」
「ということはヘレンが間接的にティムしているのか……?」
ていうか種類が半端ないなコレ。
「ニィナ様、とりあえず生きているドラゴンを端から運びましょう」
「うむ、ではヘレン、連れて行くのは出来るか?」
「はい、えっと……しかし一度に操作できるのは八体までですね」
サモンのサキュバス八体は別で考えて良いんだっけ、
で、ティムモンスターは今はホワイトベアード一匹だけ、
まあこれは戻せば良いか、とりあえず転移魔方陣で……あっ!
(こんなでかいの、一度に八匹も運んだら、馬車の屋敷が壊れちゃう!)
転移スクロールでとりあえず天大樹の冒険者ギルド、
ってあそこもあそこで室内だった、となるとシュッコかなザザムもあるけど、
とりあえずシュッコの冒険者ギルド前へ転移スクロール、そこから瞬間移動でティムモンス小屋へ。
(両方いっぱいになったら、どうしよう)
という話を僕はニィナさんに体内からした、
いやそんな感じですっぽり収まっているからね!
「ふむ、そこまでの数を運べばここに転移魔方陣を造れるだろう」
「じゃあ転移先を」「室内限定だが天大樹の倉庫に、
いや枚数はもったいないが天大樹のギルド前でも三体ずつ位なら転移スクロールを」
んでもまあ仕方ないか。
「あのっ」
「どうしたナスタシア」
「テイマードラゴンを転移させたら全員、ついてくるのでは」
あっそうか、
わざわざ所持者を移動しなくても!
クラリスさんも頷いている。
「それは私も思いましたが、これだけの数ですと」
「ううむ、やはり雨で消えても良いので一時的に天大樹の空中庭園に転移魔方陣をだな」
「わかりましたわ、時間はかかりますが、そろそろアンジュちゃんの授業が終わる頃でしょうし」
そういやお腹が空いた。
「ふむ、とりあえずは置いておくか、実くらいは喰わせてやるが」
ということでクラリスさんはとりあえずアンジュちゃんを迎えにシュッコへ転移、
人魚族の子もそろそろスクロールが切れるので実をいっぱい持たせて帰すことに。
「……別にいいけど、早いうちに呼んでよね、別に行けど……夜に……別にいいけど」
ヨダレが漏れてますよカウミさん、と思いながら転移スクロールでザザムへさよなら、
いやこれ僕がベッドに呼ばないと行けない流れなの?! ニィナさんを見ると首を横に振っている。
(勝手に期待しているだけとはいえ、ちょっと罪悪感)
とまあクラリスさんが馬車の転移魔方陣へ戻ってくるまで、
僕らは自分の分の実を食べながらドラゴン達をチェックする、
種類を確認したら実を渡す感じで……ダペナちゃん組とヘレンさん組で分かれる。
「私の方はダペナか、よろしく頼む」
「はい、この眼鏡で種族を鑑定させていただきます!」
「天大樹の実は私が渡します」「ああナスタシア、頼んだ」
アイテムボックスだからね、いっぱい入っていそう。
「では最初は『エクストリームドラゴン』次は『ダイナミックドラゴン』それと『クイックドラゴン』、
続いて『ファジードラゴン』そして『クレイマードラゴン』こっちは『シャルウィードラゴン』みんな一体ずつですね」
「まるでドラゴンの博物館だな」「ニィナさん、シュッコのティムモンス小屋が寂しいから作れますね」
ただ入場できるのはS級の人に限られるんだよなぁ。
「次は『マッチョドラゴン』こちらは『宴会部長ドラゴン』この細いのが『おすましドラゴン』、
この膨らんだのが『巾着ドラゴン』そわそわしてるのが『駆け抜けるドラゴン』それから……」
「名前を読み上げられたのに実を渡しますね」「うむ、二度渡さないように注意な」「あ、はいっ!」
あんなドラゴンこんなドラゴン、種類がいっぱいだぁ。
「これは『夜になるとお肌が荒れるドラゴン』こっちは『先日、吉祥寺で見たドラゴン』何でしょうね、
そこのが『男が泣いて喜ぶ、ぬるぬるするドラゴン』デレスさんお試しされますか」「いやさすがにドラゴンは」
「なんだ、そういうプレイが良いなら手配するが」「ニィナさんも話に乗らないで!」
ていうかこのドラゴン、オスだかメスだかわからないし!
いやメスでも嫌だ爬虫類みたいなのは、ドラゴンはドラゴン類だろうけど。
「こちらは『ドラゴンと見せかけてドラゴン』というドラゴンです」「ドラゴンじゃん!」
「続きまして『タップダンスドラゴン』落ち着かないですね、実を食べても落ち着かないようです、
次は『年間パスポートをぶら下げたドラゴン』どこのなんでしょうか」「いや知らないから!」
聞こうにも唯一、喋れるであろうテイマードラゴンはヘレンさんの方だし!
「これは『一発ドラゴン』意味がわかりません、あれは『無常ドラゴン』そんな顔していますね、
そっちは『ドラゴン後藤とファンシースターズ』だそうです」「いや一匹だよね?!」「はい」
「じゃあファンシースターズはどこ行ったの」「デレス、我々が倒したのかも知れん」「あっ」
じゃあドラゴン後藤でいいじゃん!
「この大きいのが『りえママドラゴン』次は長いです『テ●ルズシリーズでメインヒロインが不自然に途中で代わった
あの作品に出てくるあのドラゴン』いったいどういう、どのドラゴンなんでしょうか」「いやわざわざ僕を見て聞かないで!」
ニィナさんの胸元から顔だけ出してる僕に!
「こういうのはイワモトかハイトウに後で聞こう、続けてくれ」
「はいニィナ様、次も長いです、『この小説の作者が放送作家時代、何をどう間違えたか東京FMから物凄くオシャレで美人な
人気声優さんのラジオ番組のメイン構成作家をしてくれとオファーが来て、いつもはAMで珍奇なラジオの作家をしているのになぜ俺?!
しかも真面目なFMで! というので恐れ多過ぎてオファーを断ったその声優さんが声をやっているドラゴン』なんなんでしょうかこれは」
とまあ何となくこの世界の創造主に関係ありそうなドラゴンとかも捌きつつ、
クラリスさんがアンジュちゃんを連れてくるのを待って、ドラゴンの確認&餌やりを続けたのでした。
※もう25年も前の話です




