第607話 レベルアップ確認と魔導書による魔法習得
「では、まずはナタイラさまっ」
「はい、よろしくお願いします」
「レベル45です、あっ、踊り子のですっ」
しまった、受付嬢のコーチ役が居ないや。
(まあいいか、相手は三人だけだし)
「ありがとうございます」
「憶えた魔法は『ファイアートルネード』です、一体の敵を無数の炎が包む、灼熱の竜巻魔法ですっ!」
「うわあ、凄そうですね」「お試しはそちらで」
ダンジョンの入口を指してるや。
「あっ、お試しといえばナタイラちゃん、せっかくだから魔導書を」
「はいそうですね、せっかくなので、ここで」
「ほんとにいいのー? ちゃんとぜんぶみたー?」「アンジュちゃん、言い方が意地悪っぽい」
言われて流し見するナタイラちゃん、
実は地味に良い魔法が! とかあったら困るからね。
「……はい、『シューティングスターヒール』で」
「お待ち下さい、説明を」
「いやヴェルビンちゃん、書いてあるから」
……仕事をあえてさせた方がいいのかな?
「ひこーりつは、よくないよー」
「アンジュちゃん、なんてことを……」
「ゆびさして、ねんじてー」
使い方、知ってるんだ!
「……えいっ」
♪ジャンジャカジャーン
♪ジャンジャンジャンッ
♪ジャンジャカジャーーンッ
「憶え、ましたっ!」
「「「おおおーーー」」」
ヴェルビンちゃん僕アンジュちゃんで拍手、
豪華な音楽の演出はどうかと思うけどまあいいか、
アンジュちゃんの音楽魔法で高揚感に包まれているナタイラちゃん。
「使って、みたいです!」
「回復魔法だし、ここでもいいよねヴェルビンちゃん」
「は、はいっ、どうぞ」
両腕をあげて……
「シューティングスターヒール!」
部屋の中でまばゆい光の玉が降り注ぐ!!
「うお、これはすごい!」
「きれーい」
「本当ですね、凄いですっ」
とまあヴェルビンちゃんまで見惚れている。
「これ、祭りの儀式で最後に使いたいですっ!」
「うん、いいと思うけど儀式っていつどこでするの」
「あっ……」
黙り込んじゃった、
ひょっとして残酷な事を言っちゃったかな。
「ええっとじゃあ次はMAINAさんかな」
「んとねー、しょーりゃくでいいよー」
「なんで?! 出すのが面倒くさいからとか??」
あとはすでに、
亜空間の自室で寝てるとか。
「レベル72から73になっただけだったよー」
「あっそうか、アンジュちゃん見られるからね」
「だからー、呼んでもそれで、おしまーい」
じゃあいっか、
サモンだとレベルの上がり方が違うらしい、
異世界人だからかも知れないけれど!
「ちなみにー、MAINAっちが頑張ってくれたおかげでー」
「うん、どうしたの?」
「さんにんめ、だせるよー」「ええっ?!」
異世界人の?!
「もう出したの?」
「どっちにしよー」
「あっそうか、あとふたり居るんだっけ」
名前までは憶えていないけど。
「男と女、どっちがいいー?」
「アンジュちゃんはどっちがいいの」
「どっちでもー、賢者が男で吟遊詩人が女だよー」
どっちもレア職業だな、
レア度では吟遊詩人だけど戦力的には……
(あっそうだ!)
「ヴェルビンちゃん」
「はいっ!」
「賢者と吟遊詩人の説明をお願い」
分厚い冒険者ギルドの本を持ち出した、
読まず空で言えるようになるといいんだけどな。
「ま、まず賢者は通常魔法のスペシャリストで、
攻撃魔法と回復魔法を両方扱える、凄い 職業です、
高レベルになると光魔法で攻撃や回復が出来るようになります!」
うん、基本知識だ。
「クラリスさんがそうだよね」
「はい、『ニィナスターライツ』においては」
「ちなみに賢者と聖女の違いは?」
これくらい本を読まずに答えて欲しい。
「えっと、せい、じょ、聖女……」
駄目かぁ。
「ありました、教会に属する女性賢者で、
特に能力が高く認められた方がそう呼ばれていて、
各教会においては聖女そのものが崇められる事もあるそうです!」
神様の代理ってことか。
「ボクもペロちゃんも、あがめてるよー」
「あっ、女神教だったもんね」
「がっこーの帰りにコッソリよってるー」
いやコッソリでなくても!
「では吟遊詩人の方を」
「はいっ、ぎ、ぎ、ぎん……」
ナタイラちゃんは部屋の隅でまだ『シューティングスターヒール』を試してる、
ちなみに使った魔導書は魔力が無くなってるけど書いてある文字までは消えていないので、
カウンターの上に置いてあって貴重な資料として有効活用するだろう。
「吟遊詩人は補助魔法特化の上位 職業です、何らかの楽器、
基本はハープですね、あとはオカリナやリュート、珍しいのではハーモニカ等、
そういった装備で味方を強化、あるいは敵を弱体化する、とあります」
うん、幻術師に近いくらい人の居ない職業って聞いた事がある。
「アンジュちゃん、その異世界人の武器もやっぱりハープかな?」
「わかんなーい」
「そっか、呼びだしてからのお楽しみかな」
状態補助系はすでにスキルやアイテムで
お腹いっぱいな気もするけど、育ててみるのもいいかな、
それと異世界人は単純にとんでもないアイテムを持っていたりするし。
「でー、どっちにするー?」
「アンジュちゃんの好きな方で!」
「ぢゃあ上から順番でー」
アイテム袋から魔石をゴチャゴチャ取り出すアンジュちゃん、
あっそうか、最初の召喚に必要なんだったっけ、
MAINAさんの時は無かった気が……おそらくは、事前に一回、呼びだしてたのかも。
(宴会の打ち合わせをしたんだろうね)
「時間かかりそう?」
「ちょっとねー」
「じゃあヴェルビンちゃん、最後に僕を」「はいっ!」
さあお待ちかね、
僕のレベルアップ確認の時間です!
果たしてどんな魔法かスキルを憶えているのか……?!




