第561話 こんな時間にみんなでどこへ行こうというのか
「デレス、起きろ、デレス」
「……はっ、八回戦ですかっ」
「なんだ、相手が三人居てそれだけしかやっていないのか」
ニィナさんに起こされた僕、
まだ外は暗い、室内も暗い、
天井から伸びるツタを引っ張って灯りをつけると……!!
「うわ、みんな装備してどこへ」
うん、ニィナさんを筆頭に冒険者スタイルだ。
(クラリスさんもアンジュちゃんも、ヘレンさんもナスタシアさんも!)
さすがにモグナミさんや姫姉妹は居ない。
「本当ならデレスに黙って、私達だけで済ませようと思っていた件だ」
「ひょっとして……マリウさん関係?」
「なんだ、呼んだ方が良かったか」「いえ全然」
じゃあ何だろう。
(冷静に考えたら、マリウさんと戦っても意味が無いや)
まだ僕は寝ぼけているっぽい。
「一応、シャワーでも浴びてくるか?」
「えっと、お出かけですよね」「そうだ」
「では急いで……うっわ、羽根まみれだ」
ベッドでは天使族の三人がすやすや眠っている、
そして白い羽根が散乱、いや早速、金色もあるな。
(ヤバい羽根は抜かされずに済んだっぽい)
天使族もお仕置が怖いのだろう。
「あっ、お風呂にお湯が」
「さっと身体を浸からせて来るがよい」
「えっと時間は」「風呂の時間分くらいなら良い」
とはいえ、さささっと済ませた僕だった。
(お風呂から上がると、みんな羽根を回収してるや)
べとべとなやつとか一回、洗うのだろうか。
そして相変わらず眠ったままの天使たち、満足そう。
「御主人様、お身体を拭かせて下さい」
「あっ、ナスタシアさんありがとう、じゃあ急いで」
「髪の毛もしっかり拭かせていただきますね」「ボクもー」
アンジュちゃんも加わってふたりがかりで、わしゃわしゃと……
ヘレンさんも魔法で温風を飛ばしてくれる、うん、気持ち良い。
(疲れも一緒に吹き飛ぶよ)
こうして乾いた後、
急いで着替えて装備を着けようとする。
「おっと防具は必要ない、武器だけ持っていてくれ」
「ええっと、プライドソードで良いですか」
「ああ、いつでも抜けるようにな、さあ来い」
胸元を開けるニィナさん、
うん、今日もビキニアーマーが眩しい、
そして収納されるとマントが閉じられる……
(他のみんなも表情が冒険者モードになった)
アンジュちゃんもフードを深く被り、
謎の幻術師モードだ、手には死神の鎌、背には例の黒い長杖。
「とーへんぼく、だすー?」
「……イワモトのことか?」
「あっ、よーじんぼーだったー」
中身はアンジュちゃんだ、良かった。
「サモンに関しては言ったらすぐ出してくれ、ヘレンもな」
「はいニィナさん」
「では行くぞ、こっちに固まってくれ」
天使族が巻き込まれないようにして、
転移スクロールをかざすニィナさん、
瞬間移動した先は……こっ、ここは、この冒険者ギルドは!!
「ニィナさん、ここって!」
「ああ、デレスの実家の隣街、ジュタピだ」
「空はまだうっすら夕焼けの残りが……ほとんどもう夜ですが」
いつのまに来たんだろう、
僕の実家で誰かに使って貰えばすぐか、
そして出入りする冒険者のガラが悪い事、悪い事。
「デレスは決して出るな、もしもの時は合図する、良いな」
「あっはい」
まさに僕は、懐刀状態だ。
「失礼する」
中に入ると雰囲気も悪い、
アレだ、ムームー帝国のアスリクで、
帝国民用の冒険者ギルドに入った時を思い出すな。
(いかにも『一軒さんお断り』っていう感じだ)
「なんだあの黒い連中」
「よくみたら全員、女なのか?」
「おいあの幻術師、浮いているぞ」
ざわつくざわつく。
唯一の良心? ナスタシアさんも、
今日は黒装束アサシンのモードだからね。
(受付嬢は勇者専用だけで、あとは男性職員だな)
もうこれだけで『荒くれ者の街』という雰囲気が伝わる。
「……ニィナスターライツの連中だな」
うっわ、まさに『荒くれ者選抜』みたいなのがやってきた、
コイツらの方がよっぽど『連中』なんだけどな、『ヤカラ』とでも言うか。
とはいえ実力もちゃんとありそう、山賊レベル50って感じか、イメージ的に。
「そうだ、話は通っていると思うが」
「ああ、イツトラから聞いている、上だ、来い」
みんなで階段を上がる、
僕は相変わらずニィナさんの胸の中へ潜んだまま……
そして奥の部屋に入ると、ゴチャゴチャしたいかにも『アジト』といった感じの場所だ。
「リーダー、連れてきやした」
「時間通りだな、お前達か、ブラヌシアタの冒険者ギルドを荒らした連中は」
うっわ、悪そうな顔!
プライドソードを三本も身に付けている、
いいのか一人一本のはずだぞ、でもこの中で一番強いのは、わかる。
「荒らしたのはお前たちの方だろう、
まあ良い一応名乗っておく、S級冒険者パーティ、
『ニィナスターライツ』のリーダー、『ニィナ』だ」
敵の巣窟でも物おじしないニィナさん、さすがだ。
「……ここジュタピ冒険者ギルドの顔役パーティー、
『ブラックワーウルフ』のリーダー、勇者アルトアイズだ」
偉そうな椅子に座ってこちらを品定めの表情、
あっ、座っている椅子ってギルマスとかがかけるやつじゃ、
冒険者ギルドにアジトがあるって事は、うん、ズブズブ過ぎる。
「……いまだにブラヌシアタの冒険者ギルドへ、ちょっかいをかけているようだが」
えっ、そうなの?!
「イツトラはやり方を間違えただけだ、いま送り込んでいるルバノクは問題ないはずだが」
「あたりの良さそうな女僧侶だが、スパイなのがバレバレだぞ」
「ウチから出しているだけでスパイ呼ばわりは心外だな」
そうなんだ、人を代えたのか。
「……彼女は元々、この街で連れ去られた新米冒険者という事は調べがついている」
「人聞きの悪い事を言うな、あくまで合意の上でスカウトしたまでだ」
「まあ良い、その話は今はいい、早速本題に入ろう……ブラヌシアタから、完全に手を引け」
うっお、ニィナさん、かっこいいーーー!!
(さすがは、僕の本体!!!)
いや、それでいいのか僕。
=お知らせ=
と、いうことで? 新作『メイドが本体!』毎日連載中です、
人気無さ過ぎて泣きそうなのでどうか読んでやってください! お願いしまちゅーほーむず。




