第55話 休日出勤と告白準備
明けて急遽休みとなりクラリスさんはアンジュちゃんと女神教の教会へ、
僕はニィナさんと第八階層でデートである、って休みって何だろう??
「ハアアアッッ!!」
昨日の痛みも何のその?
絶好調なニィナさんは今日も無双している、
相手がノーマルなレッサードラゴンとドラゴンモドキだけで、
四人だと第九階層まで行った方が効率が良いがペアならここでも十分だ。
「ヒール」
とまあ、こうして湧き過ぎた後に僕がちょっと回復魔法をかけるくらいで、
楽過ぎて欠伸が出る、たまーに攻撃を代わってもらうものの、
ニィナさんの身体が疼くのか、またすぐに再交代になってしまう。
(アンジュちゃん以外のレベル上げ、ここ来てからしてないもんなあ)
詳しい話は省略するけど能力向上と育成スキルの関係で、
その系統のスキルを持っていないアンジュちゃんにほぼ経験が集まる事になった、
だから一度アンジュちゃん無しの組み合わせで経験がどのくらい入るかやってみたかった。
「今度はクラリスさんとペアも良いですね」
「なんだ、デートの最中に他の女の」
「いやパーティーでの戦闘、冒険者の経験値稼ぎの話ですよ!」
やばい、お仕置返しを狙ってるんだろうか?
そこそこ喜んでいたような気もしなかった訳じゃないんだけれど!
「そうだな、アンジュにはあの指輪も使う事だしな」
「僕とクラリスさん、クラリスさんとニィナさんの組み合わせでもいいですから」
「そのあたりは余裕があれば進めよう、魔王退治の備えもあるからな」
まだこのダンジョンの半分も行ってない、
本物のドラゴンが出現する階層からが本番らしい。
「ふう、たまにはポーションでも飲むか」
「はいどうぞ」
敵が落ち着いたタイミングで少し休んでいると、
また見知らぬ冒険者パーティーがやってきた、
鍛えてはいないものの格好の良い眼鏡男の三人組だ。
「ニィナスターライツのニィナさんですね?」
「いかにも」
ふらふらと一匹やってきたレッサードラゴンを雷系魔法で倒す魔法使い、
もうひとりは杖でわかるが僧侶だ、そして話し掛けてきた男の杖を見ると、
上半分が僧侶、下半分が魔法使いの杖、すなわちこの男は……
「私はつい昨日、自由都市シュッコから戻ってきました、
シンフォニックグラスのリーダー、賢者ミジョルと申します」
多分三十代だろうけど顔つきとか気配が猛者なのを感じさせる。
「何の用だ、マナー違反でもしたか?」
「とんでもない!今日はこの私、魔法学院を首席卒業し冒険者Bクラスにまでなった私が、
直々に誘いに来たのです、今日はいつもの魔法使いは不在のようですね、回復の僧侶も」
あークラリスさんの役割がアンジュちゃんに半分わけて見られているのか、
きっと派手にわかりやすく魔法を使うクラリスさんが魔法使いで、
ヒールはあの恰好のアンジュちゃんがやっていると、幻術師って知らないとそうなるかな?
「首席と言われてもな、賢者コースでもあるのか?なら人数が限られているだろう」
「学院の同学年、全ての生徒の中でですよ!ちなみにこちらの僧侶ラキシス、
魔法使いマキノンもそれぞれ首席卒業ですよ」
エリート集団からのお誘いか、
話を進めるために、さらに寄ってきた敵を魔法で一掃してくれている、
なかなかだけどクラリスさんには遠く及ばないな、
うちのパーティーではスキル効果でレベルの四倍は強い状態にあるから。
「その首席卒業軍団がどうした」
「いえ、ようやく我々に相応しい勇者を見つけましてね、
賢者と組めるなんて光栄に思っていただけるかと」
「ほう、その勇者はどこに居るのだ?」
あえてきょろきょろ見回すニィナさん、
うん、どこに居るんだろう?あ、僕も勇者だった!
って心の中でだけつぶやいてみる、言う気は無い。
「あとシュッコに行っていた間に聞いた話がありまして、
ここシフリンにフリーの幻術師が居て強い仲間を待っていると」
「ほう、面白い話だな」
「私どもはその幻術師を仲間にしようと検討しています、
賢者、勇者、幻術師と揃えばそれはもう最強ではないでしょうか?」
うん、劇的に無敵だな、
そんな女性だらけのパーティーがあったら恋しちゃうくらいだ。
「めったに居ない幻術師、しかもフリーなどそう易々と転がっていてたまるか」
「それがそうでもないらしいのですよ、いかがです?よろしければそちらのポーターさんも」
「ええっ僕ですかー!役立たずポーターの、僕もですかー!」
暇だったのでわざとらしく返事してみる、
声かけられたのがちょっと嬉しかったのもあるけれど。
「ほう、見所があるな」
あ、ニィナさんも、ちょっと嬉しそう!
僕が認められたと思ってくれているのだろう。
「もちろん他の方々もですよ、八人パーティーで行きましょう」
「つまり全員まとめて吸収したいと」
「合併と言ってください、パーティー名を変えてもかまいません」
今までは一方的にニィナさん目当てが多かったけど、
全体を受け入れたいというのはまあ、まだマシではある、けれども。
「断る」
「な、なぜですか、悪い話ではないでしょう」
「まず八人パーティにするなら前衛はふたり必要だ」
「貴女だけで十分ですし、九人目に前衛を探しましょう」
「さらにまだ加入してもいない幻術師で釣ろうろするのが気に食わない」
確かに。
「いえ信じられないかも知れないのですが若い幻術師が行き場が無いと噂で」
「きっとその幻術師は噂に翻弄されて酷い目にあっていたのだろう、
もう冒険者ギルドで待っては居ない」
「もしや、貴女のパーティーに幻術師の格好をした冒険者がいましたが」
「そういう事だ、あとうちのクラリスも賢者だ、杖を見てわからなかったか?」
「あの遠さだと……し、失礼しました」
素直にすごすご帰っていった、
敵も増えてきた事だし丁度良かった、
内情がかなりバレたがよく観察してたらわかる事だし、
一番の隠し玉である『もうひとりの勇者』には気付かなかったようだ。
「さあ、私達もレベルを上げてしまおう」
夕方になって冒険者ギルドへ戻ると、
勇者専用受付で帰ってきた報告だけしてレベルアップを確認せず帰る、
今日は僕らを注視するギャラリーがミロさん含め多かったからだ。
「やはり確認するには夜中だな」
「はい、それはそうと僕は寄りたい所があるので先に帰っていただけますか」
「構わないが娼館とかだったら後で仕置だぞ」
「行きません!行った事ないです、シフリンでは場所すら知らないです」
「なら良いがおかしな女にホイホイついて行かないようにな」
普段なら一緒に行くとか言いそうだが、
なんとなく察してくれたのかもしれない、
僕はニィナさんと別れてひとり、高級な装飾品ショップへと向かった。
(ここかあ、超豪華だ)
中に入ると綺麗な女性店員さんに出迎えられた。
「いらっしゃいませ、本日は」
「はい、婚約指輪をみっつ、買に来ました」




