第527話 緊急依頼と急転直下の行先変更
本日付て帝国全体の冒険者ギルド長となったストレーナさんが、
息を切らせて慌ててやってきた、いったい何が起こったのだろう?
ニィナさんも切迫した雰囲気を感じてか、真剣な表情で対応する。
「どうした、何があった」
「はい、『キカエデ』という国から緊急連絡です、七大魔王のひとり『バドリン』の討伐に失敗し、
都市全体が現在、かなり酷い攻撃を受けている真っ最中だそうです、我が国に救援要請が!」
……さあこれからチャンミオ
というタイミングでかぁ、うん、これはどうするんだろう。
(いや、どうするも何も、僕たちはS級冒険者パーティーだ)
ずっと特別席みたいな所で見てた女帝も立ち上がってこっちへ来た。
「キカエデは友好国です、そのピンチを見逃す事は出来ません、
黄金勇者様、『ニィナスターライツ』の皆さま、お願いできますか?」
まあ帝国の友好国だからと言われても、
まだ宮廷伯を受けた訳じゃないんだけれども……
それでも女帝自らお願いしてきているんだ、頭まで下げて。
(何よりな魔王案件だ、僕らが倒すべき七大魔王の)
僕らを見渡すニィナさん。
「これは行くしかないと私は思うのだが、クラリス」
「はい、助けられる命は助けましょう、一刻も早く!」
「そうだな、皆も良いな? では……キカエデに行った事にある者は」
ヘレンさんが手を挙げた!
「それでは、わたくしが転移スクロールを」
「私も行きますわ」「それではーーわたくしっめも!!」
ストレーナさんチアーさんも付いてくるみたいだ。
(おっと、最低限の情報は聞いておかないと)
僕は控えめに前へ出る。
「すみません、その『バドリン』って、どんなタイプの敵ですか?」
「それはですね、その姿は……あちら、まさにあのモンスターですわ」
「ええっ?!」
ストレーナさんが指をさしたのは……ライリアちゃん?!
「少女型モンスターですか」
「いいえ、あの服に画かれている」
「えええええ、あの、クソダサくまちゃん?!?!」
そう、ナタイラちゃんライリアちゃんは今、
お揃いであのくっそダサい熊ちゃんのシャツを着ている。
「あれは魔王『バドリン=ミッチェル』を模して描かれたシャツですの」
「そうだったんだ……って許可は」
「魔王相手にそんなもの、必要ありませんわ」
いいんだ、びっくりだな。
「よし、念のためアンジュのサモンをもうひとり出そう」「あーーい」
アンジュちゃんが女性異世界を出す。
「あっMAINAさん!」
「どもども、チェケラー!!」
「ついでにイワモトさん、この熊に心当たりは」
僕はナタイラちゃんの方を手で示す、
姉妹そろってずいっと前に出てクソダッサい熊ちゃんの絵を見せる。
「ふむ、よくよく見ると心当たりがありますな」
「異世界にもあるんですか、これ」
「着ぐるみアイドルで、まあピンクのクマといえば『こんにちわ、幸せな世界』というキーワードの……」
まーたわけのわからない話になってきたぞ。
「皆さん、急を急ぎますわ」
「わかったストレーナ、ではヘレン」
「はい、皆様、お気を付け下さいませ」
一応、戦闘の構えを取って見せるみんな、
イワモトさんも例の『さすまた』とやらを持ち出した、
MAINAさんは……何だろ、よくわからない黒い耳当てをつけた。
(何か音が漏れ聞こえてきているな、音楽か)
こうしてみんなが見守る中、
ヘレンさんが転移スクロールを手にし、
さあいよいよ、いざ……キカエデ国へ!!
(……あれっ?! スクロールの照らした範囲内に、姫姉妹が?!?!)
こうして転移した先は、とんでもない事になっていた!!
「きゃああああああああ!!!」
「出るな、建物から出るんじゃない!!」
「転がって来るぞ、窓も何かで塞げー!!!」
悲鳴や怒号が飛び交う冒険者ギルド前、
まさに阿鼻叫喚といった状況の都市では、
上空から無数の『何か』が大量に降っていた!!
「クラリス!」
「わかっておりますわニィナ様!!」
憶えたばかりのバリア魔法『スマイリークラウン』を使うクラリスさん!
飛んできた物体を弾く弾く、それを見てMAINAさんイワモトさんが思わず反応した!!
「これ、でっかい音符じゃん!!」
「ですな、フラットにシャープも、ト音記号も降ってきてますな」
「あっ、倒れている人が何人も!!」
僕は慌てて起こそうとするがバリアから出られない!!
「連れてくるよー」
アンジュちゃんが瞬間移動で拾ってバリアの中へ、
続いてダクちゃん(ダクネスサキュバス)やヘレンさんも……
こうして十数人を回収したのち、クラリスさんゴッちゃん(ゴッデスサキュバス)、ヘレンさんが治癒魔法をかける。
(僕も軽い怪我の人をヒールで癒そう)
まだ比較的、意識のしっかりしている衛兵ぽい人に勇者ヒールをかける。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう、お嬢ちゃん」「えっ?!」
(そ、そういえば僕、今って女の子の格好だったーーー!!!)
「あは、あははははは……ど、どうも……ぃやん(ポッ)」
「?!?!?!」
こうして突然、変更となった次なる行先、
音楽都市キカエデはまさに壊滅の危機が訪れていた、
はたして七大魔王の四つ目『バドリン』を倒す冒険は、どうなることやら……?!
「あの、すみません」「私達、ついてきちゃったみたいです」
戸惑う踊り子姫姉妹と共に、第六章へ続く。




