第524話 チャンピオン防衛とあえて追い討ちされてみる
「しゅ~~~りょ~~~!!」
「あああぁぁぁ……やっぱり負け越したぁぁ」
「わぁいわぁい」「デレス6勝、アンジュ14勝だよ~にゃはは」
こつは、こつは掴めているんだよ!
ただ、それに慣れていないというか、
いやこれはアンジュちゃんの方が対僕の対策が出来ているな。
(さすがに学習されちゃったかぁ)
これはもっともっと鍛錬を積まないと。
「で~、勝因は何かにゃ~?」
「イワモトさんとの、とっくんでっす!」
「そんなのやっていたんだ!!」
くやしいな、よーし、こうなったら……!!
「アンジュちゃん!」
「なーにー? 知ってるー?、ちくわぶ大明神」
「知らないけど、イワモトさん呼んで」
あっ、アンジュちゃんがそっぽ向いた!
「クレームは、受け付けまっせん!!」
「そうじゃないよ、戦いたい」
「それならまー、いっかなー……いでよー!」
無事、亜空間から召喚された。
「はいっ、実は私の地元新潟には、かつて『レインボータワー』なる物がありまして、
このタワー、驚くべき事にな、なななんと! 展望室が回転しながら上昇するという……」
「あっ、それ天大樹でもやりたい!」「にゃはは、レベルがもっと上がったらね~」
はっ! しまった、
そんな話に心躍らせている場合では無いや!
「イワモトさん、アンジュちゃんと組んで」
「私が召喚主様とですか、ではデレス様はどなたと」
「僕は僕、僕ひとりです、これで一本でも取れていれば僕の勝ちかな」
あくまでも僕的にはだけれども!!
「だってーおっちゃん」
「はぁ、まあご指示とあらば」
「ぢゃあ~20本勝負~、すた~~~~~っと!」
僕は死力を尽くした、その結果……!!
「だ、駄目だあああああ!!!」
「デレスくん、ざんねん、もーいっぽでしたー」
「守りに関しては鉄壁ですゆえ、いかに勇者殿相手でも負けませぬぞ」
タンク並の防御力があるアサシン相手じゃ、そりゃ無理かぁ。
「デレス0勝、アンジュイワモトペア20勝、結果……」
「言わなくていいから!」「にゃはは~休んだら~?」
「う、うん、ちょっと休もう、あとふたりだけれども」
でも心地良い疲れだ、
あえて追い討ちされてみるのも悪くなかった、
あわよくばこれで1本でも取れてたら気持ち良かったんだけどなぁ~……
「陛下、いかがでしたか?」
「はいクラリス様、なかなか見応えが、ウチの衛兵全員に見せたいくらいでした」
「困りましたわ、闘技大会にはデレス様は出ないタイプですので」
目立ちたくないんだよう……
アマリちゃんがお水とタオルを持ってきてくれた。
「ありがとう、ふう、大変だったよ」
「アマリ、もし1勝したら、ハーレムに入れてくれるー?」
「んー、4、いやせめて5年後かな、それまで鍛錬しててね」「うん!!」
(ハーレム枠、それまで空いてるかな)
すでに入っているとか言わないで! 誰が?
などと考えているとアンジュちゃんがヒールをくれた。
「ありがとうね」
「きのーのてきは、きょーのおともだよー」
「いや敵じゃないし! アンジュちゃんが敵に回ったら、もうおしまいだぁ」
いや、わりとまじで。
(悪い奴に騙されないように、しっかり教育しなくちゃ)
そういや今日出発したとしても、
アンジュちゃんは明日、学校なんだよなぁ、まだもうちょっと通う。
でも卒業したらシューサーくんともお別れか、さっきナツネェさんと帰ったらしいけど。
(いや、ニィナ城で裏のウサギ小屋へ行けばいつでも会えたりして)
よし落ち付いた、再開と行こう!
「も~いいの~?」
「うん、じゃあヘレンさん!」
「はい、まずは単独で行かせていただきますわ」
鞭がしなるしなる!
首を撒かれたら、絞まらなくてもその時点で負けだ。
「ほいじゃ行いっくよ~、れでぃ~~……あた~っく!!」
結果は順当に……!!
「はぁ~い、デレス20勝、ヘレン0勝、もっとこ~、手心っていうか~」
「いや、この後の事を考えたら、ねぇ」「悔しいですわっ!!」
あー、ヘレンさん地面を鞭でべチンと叩いて悔しがっている。
(本気で戦ってくれていたんだなぁ)
さあ、ここからが僕的には本番だ。
「ではヘレンさん」「まずはどのサキュバスから」
「全部です」「えっ」「いきなり八体、全部出して下さい」
「か、かしこまりましたわ、旦那様」「決闘だから旦那は無しで」「はいっ」
亜空間からぞろぞろ全員召喚だ。
「にゃは~特別ルールだよ~」
「アマタツさん?!」
「デレスはサキュバス掻い潜って~、ヘレン本体を叩いたら一本ね~」
まあそれもアリか、
僕としては九人、いやサキュバス八体とヘレンさんひとりを、
同時に相手にしてこそなんだけれども……とりあえずあっても良いルールかな。
(ヘレンさんも頷いているし)
「そんじゃま、最初はヘレン先頭でサキュバス後ろね~」
「アマタツさん、わざわざそこまで指定しなくても」
「ちゃ~んと考えてるよ~にゃはははは」
さあ、これで僕が一本でも取れれば総合で勝ちだ、
大逆境の中に活路を見出す訓練だと思っていざ……勝負!!
「スタンバイいいね~? では~~~……はじめっ!!」
そして結果はというとですねえ……
「うー、やっぱり1対9は無理があったかぁ」
「ヘレン軍20勝、デレス0勝、全試合合わせると引き分けだね~」
「デレス様、いえ終わったので旦那様、私の負けですわ」「うーん、訓練だから!」
とはいえまずいな、
今までの所、これだとニィナさんが最弱になってしまう。
(という事で、ラストは気が抜けないな)
そう、ここでやっと新入り登場だ。
「ナスタシア、前へ~」
「はい、よろしくお願い致します」
「うん、アスリクの決闘ではシル姉ちゃんが勝ってたんだっけ」
とはいえ今や勇者アサシン、
その素早さは僕なんかじゃ及ばない……。
(と、思うでしょう?!)
「組み合わせはラストだよね~?」
「あっはい、時間も時間ですし」
速く終わらせないと、お昼過ぎちゃう。
「最終戦20番勝負、デレス対ナスタシア、始め!!」
なぜか真面に号令をかけたアマタツさん、
そしてその言葉を発した瞬間、ナスタシアさんの姿が……消えた!!




