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【ついに完結】草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第三章 育成勇者と褐色ボクっ娘幻術師
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第51話 幻術師の本音と休日挟んで攻略四日目へ

 いかにもオシャレなカフェに入った僕とアンジュちゃん、

 フードを下ろして座ると見た目、子供カップルが勇気出して入ったみたいになっている、

 店員さんの反応がまさにそんな感じだった、まわりの客の視線もそうかも。


「あ、もうお水飲み干しちゃったんだ、店員さーん!」

「……デレスくんの、もらうね?」

「え?ちょっと待っ……あーあ飲んじゃった」


 まあいいや、と来た店員さんに両方に注いでもらう。


「ってまた飲み干して!」


 今度は店員さんの前だったのですぐ注いでもらうと、

 気をきかせてピッチャーごと置いていってくれた、助かる。


「ってピッチャーから飲もうとしない!」

「えー」

「ちゃんと注いであげるから!ね?」


 注文を取ろうとメニューを広げると黙って指を乗せるアンジュちゃん。


「え、この大きなパフェ食べるの?!」

「……ふたりで食べたい」

「ほんとだカップルパフェだって、いいけどお腹壊さない?」


 コクコク頷いている、

 僕も嫌いじゃないし、頑張れば僕ひとりでも何とかなる量だ、

 ホットミルクもふたりぶん一緒に注文し終わると、

 テーブル備え付けの砂糖を舐めはじめた。


「アンジュちゃん、ちょっといいかな」

「……ダメなの?」

「これからの話をしようよ」


 真面目な話をしようとするとなぜか窓の外に目をやった。


「……ボク知ってるよ、貰われた後、すぐに捨てられるの」

「いや、そういう話じゃなくて」

「今までそうだった、何度も、何度も」


 辛い思いをしてきたんだろうな、

 だから雰囲気を誤解して、お別れを切り出されると思ったのか、

 確かに話の流れではそうなるかも知れないけれど、それが前提ではない。


「アンジュちゃんは、これからどうしたいの?」

「……ボクがどうなるか、ボクもわからない、ただ」

「ただ?」

「娼館だけはやめておけってミロさんに言われた、なんとなく、わかる」

「あーうん、そうだね」


 アンジュちゃんのされた過去を考えたり、

 彼女の事を考えると、幻術師として生きる可能性は最後の最後まで残しておきたかったんだろう。


「でも、次、ダメだったらそこへ行くしかないかなって思ってたら、ニィナさんたちが来て」

「あー最後のチャンスだったかもしれないんだ」

「だから、だからボク、ボク……」


 あー泣いちゃう、

 アイテムボックスからタオルを出して拭いてあげる、

 うん、落ち着くまで胸で泣かせてあげよう、まわりの視線はどうでもいいや。


 ……落ち着いた頃に特大パフェが届くと、とたんに機嫌が良くなった。


「わぁ、これどうやって食べるの」

「どうやっても何も何もスプーンがふたつあるでしょ」


 続いてホットミルクを置いてくれた店員さんが笑ってる。


「先に食べていいよ」

「いっしょが、いい」

「じゃあ一緒にね、いただきまーす」


 クリームをスプーンですくって口に放り込むと満面の笑みになったアンジュちゃん。


「おーい、しーーい!」

「上の果物も食べたいのどんどん食べて」

「いいの?!」

「うん、いいよ」

「デレスくん、好き」


 いきなりの言葉にどきっとしてしまう、

 チョロい相手とはいえ、可愛い女の子だからなあ。

 果物はカップル用だからか一種につき二個乗っていて、

 でもそんなのお構いなしで大きいのは手掴みで食べてる、

 僕もちょこっとずつ食べながら話を続ける。


「アンジュちゃんは本当に冒険者になりたいの?」

「……ん、んむ、んぐ」

「この先、そんな事をしなくても十分、生きていける仕事があるとしたら?」

「むぐむぐ、んぐぐ、んむむむ」

「アンジュちゃん、美味しい?」


 大きくコクコク頷きながら食べてる、

 これは食べ終わるの待つしかないなあ。


(僕も集中して食ーべよ」)



 会計を済ませて手を握りながらの帰り道、

 ふいにアンジュちゃんが立ち止まる。


「どうしたの?」

「……杖、出して」

「アンジュちゃんの?駄目だよ『パーソナルウェザー』使ったら」


 そもそも使いどころのわからない魔法だけど、

 家庭菜園にはもってこいかな?レベルがもっと上がったらだけど。


「……そんな事しないから」

「わかった、ちょっとだけね」


 渡して上げると僕に向かって掲げた。


「デレスくんは、ボクを、好きになる、えいっ!」


 ……それだけやって杖を返してくれた。


「……効いたかな」

「はは、恋のおまじないかあ」

「……効いて、欲しい」


(レベル五十になるまでに、決断しないと)


 その日の夜はアンジュちゃんと一緒に、手を繋いで紳士的に寝た。



 翌日、冒険者ギルドではミロさんが待ち構えていた。


「いやはやさすがですな、アンジュのレベルをもうあそこまで上げるとは」

「ミロ氏、何を知っている」


 いいから白状しろといったニィナさんの迫力ある詰め、

 僕なら泣きながら犯される覚悟があるね、それだけ凄んでいる。


「冒険者ギルドの職員が、久しぶりにイリュージョニストロッドが出たと話しておりまして、

 いや、詳しく誰に渡したとまでは聞こえませんでしたが、そうですかレベル十に、いやはや」


 本当に盗み聞いたのだろうか?

 ギルドに居る顔役冒険者は雇われているようなもの、

 受付嬢や職員とはかなり太く繋がっているわけで、

 いかにギルドが冒険者間について公平といえども、

 距離が近すぎるとそういう情報もわざと流してもらえるのだろう。


「余計な話は漏らしていないだろうな」

「もちろんですが、すでに噂になっております、『黒の一団』という謎の冒険者パーティーが」

「ああ知っている、私たちの呼び名だな」


 まだ狩り始めて間もないのに目立ちすぎてるのは、

 もう仕方がない事とあきらめようって話にしたんだった。


「凄まじい攻撃力、剣の振りが全体魔法に匹敵する女勇者、

 白い僧侶服に黒いマントの女性はかなり遠くの敵をも一掃する、

 この二人だけで何時間も狩り続けていると、他のふたりも何かあるに違いないと」


 あー近くではっきり見る事ができないからそういう感じになってるのか、

 これ場合によってはアンジュちゃんが魔法使っているようにも見えちゃうな、

 よくフリして遊んでいるから、あと僕がたまに取りこぼしを倒してるのは見られてるのだろうか?


「吾輩にもあいつらは何だと聞いてくる冒険者が最近ちらほら」

「やましい事は何もない、『ニィナスターライツ』だと告げておけ」

「よろしいのですかい」

「ああ、ただし話があるならリーダーであるこのニィナに話すようにな」

「ではそうさせてもらいましょう」


 勇者専用受付に行って手続きを開始する、

 ミロさんは他の冒険者と会話しはじめた、

 間を取り持って欲しいとか言われたのだろうか?


「すまない少し聞いていいか」

「はい、なんでしょう」


 ニィナさんが受付嬢に不意に聞いた。


「このあたりで弓の練習になる所はあるか、ギルド内ではなく狩場で」

「そうですね、初心者用狩場が南にあります、清流の森ですね」

「人は多いのか」

「新人魔法使いや魔法学院の生徒がよく練習していますが弓の訓練も最適かと」

「これから行ってみる、そのあとメインダンジョンに潜る」


 受付が終わって出て行こうとすると昨日のデートを邪魔した?

 魔法使いがやってきた、が、すでにその出来事は話してあるので、

 ニィナさんはひとこと『断る』とだけ告げて横を通り過ぎる、かっこいい!


「さあ、では少々怖いがアンジュの弓の訓練だ」


 見ると、すでに装着してやる気満々のアンジュちゃんだった。

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