第521話 避けて通っちゃった人と避けては通れない方々
天大樹のあるここ、
忘れがちだがラルス村はモバーマス大陸最大の国、
ムームー帝国の領内にある、って僕らが植えちゃった(育てちゃった)んだけれども。
「まあ確かに七大魔王のうち、帝国に住むふたつを倒しちゃいましたからね」
片方は代理だったけれども。
「そうだ、なので次の都市への移動を開始する」
「ええっと、またドラゴンに乗って移動中あんなことやエグいこと」
「そんなに空中プレイが好きか?」「いえ、ただ毎回のお約束なので」
今回、六人でってなるとお城が飛ぶな、そんなのある? あるね!
(あったあった、ルーナ魔王城も今後の用途を考えなきゃ)
国の間の移動には贅沢過ぎる。
「残念ながら今後の移動は転移スクロールだ」
「あっ、まあ時間がもったいないですからね」
「向こうでわざわざ宿に泊まる必要も無いが、どうする」
うーん、
そのあたりちょっと旅行気分というか、
いや冒険者気分だ、一泊くらいはしたいかも?
(拠点をここやニィナ城にするにしても、ね)
ちなみに今日ここに集まっている間、
僕らのそれぞれの拠点は、別で留守番や警備をお願いしています、兵士さんとか。
ナツネェさんも例のうさぎ小屋を……ってシューサーくんとめっちゃ密着して朝食採ってるな。
「それでええっと行き先は、チャンミオですよね」
「そうだ、華やかな都市だ、娯楽都市とも呼ばれている」
「七大魔王は」「それが色々と特殊でな、普通の戦闘では無いらしい」
何をして戦うんだろう、
娯楽都市っていうくらいだから……賭け事?!
だとしたら『幸運値』とやらがある僕らは勝ったも同然だけれども。
「チャンミオへ行かれるのですね」
「あっストレーナさん、そうみたいです」
「帝国のギルドマスターとして紹介状を書かせていただきますわ!」
えっ、ギルマス???
「ええっとストレーナさんって、この国全体のサブギルマスでは」
「本日付で帝国冒険者ギルドの総ギルド長に、これも『ニィナスターライツ担当』として当然の出世ですわ」
「えっ?! い、いつのまに、じゃあ前の方は」「荷物をまとめて昨日の内に出国されたかと」
うっわあぁぁ……悪い事しちゃったな、
結局、僕は会えなかったや、ええっと名前なんだっけ、
まあいいや、いつかきっとどこかの冒険者ギルドで会うだろう。
(結果的に、避けて通っちゃったな)
いや、たまたまお休みだった時もあったっけ。
「シュッコとしてもっ、んーーー……是非っ、推薦状をばっ!!」
「あっチアーさん、ヒョウくんの胸にあるのは」
「金色の羽根ですわっ、んもーーー……素敵っ!!」
朝からテンション高いなこのおばさん。
「ということでデレス、朝食が終わって落ち着いたら旅立ちだ」
「あっはい、まずは様子見という事で、明日からまたアンジュちゃん学校ですし」
「今日の所は正規メンバーのみだが、必要に応じて招集をかけよう」
次なる都市チャンミオ……
はたして、どのような冒険が待ち受けているのやら。
とまあ僕は体力回復のため果実多めで朝食を終えると、ある一団へ。
(うん、いたいた、三人増えて十四人になっている)
これについては避けては通れないな、
僕はその中で、まだ羽根が全て白い三人に話しかける。
「その、中に入れたんですね、ハーゥメさん、ジョセナさん、ミベルさん」
「んぐぐぐ、なんだか天大樹のレベルが上がって、小人数なら良いそうです」
「アマタツさんからお仕置が終わったのでお情けで、と」「ただし、近いうちに羽根を金にしないと……」
あーはいはいそうですか、
色々と聞きたい事もあるけどアマタツさん、
今は女帝の対応で忙しそうだ、あっちもあっちで喰ってるな。
「とにかくもう三人共、旅を続けなくて良いんだよね?」
「それなのですが」「もう天使族に、男性が居ません」「それを探す旅に」
「あっそうか、うん、カレンダだっけ天大樹があるって国」
ヘレンさんの故郷だ、
国に行くだけなら転移スクロールで可能だけれども……
「その件なのですが」「お姉ちゃん!」
ハーミィさんが出て来た、
輝くように揃った金の羽根が綺麗だ。
「あいかわらず人は、特に男性は怖いのですが……」
「僕は平気なんだよね?」「怖すぎて食べちゃいたいくら……ひっ!」
「え? あっ、ニィナさんに睨まれたのか、まあ気にしないで」
視線で殺すスキルでも身に付けたのかな我が正妻。
「今後のために、私達もきちんと冒険者として加わりたいです!」
「ええっと、大丈夫? 天使族って弱いんでしょう?」
「アンジュさんのサモンおじさんが、やり方次第で相当な戦力になれると」
サモンおじさんって言い方面白いな、
ミリシタン大陸のカイラクオジサンや、
シュッコのダンジョンに居たウパーを思い出す。
(イワモトさんの方が知能は全然高いけどね、変な長話がアレだけど)
見渡すと……奴隷女勇者と一緒に、
料理の補充とか客に言われて持って行ったりとかしている、
空いた皿を重ねて持って、奥へ行こうとしているのを呼び止める。
「イワモトさんおはようございます、お疲れ様です」
「はい、なんでございましょうか、食事と言えば昔、警備していたテレビ局の控室でマッチョな外国人が暴れていまして、何かと思ったら……」
「その話はいいから、天使族って戦力的にそんなに凄いんですか?」
両手が塞がりつつも頷くイワモトさん。
「以前も申し上げた通り、速さと魔力を上げ続ければ、下手なアサシンより強くなりますぞ」
「でも打たれ弱いんでしょう?」「当たらなければ良いのです、そういう狩場もゲーム時代はありましたぞ、
やたら体力と攻撃力の強い敵から逃げ回りながら遠距離攻撃を、素早さ特化の職業だからこそできる芸当ですな」
あと天使族の場合は飛べるっていうのも大きいのだろう。
「天使族の皆さん、男性天使族を探すため、また旅に出たいらしいんですが何か強くなるアドバイスは」
「安全なダンジョンで地道に経験を積むべきですな、ここの新しく出来るダンジョンが最適ですぞ」
「あっ、もう出来てるのかな」「まだメンテナンス中と聞いております」「あー、それがあったかぁ」
ダンジョン絶賛生成中って感じか。
「天使族を強くするアイテムって何か特には」
「種ですな」「あっはい、それは確かに、まあ」
「それとは別の話ですが、男性天使族を作る方法はありますぞ」「えっ?!」
男性天使族を……作る?!
「本当ですかっ?!」「召喚とかするのでしょうかっ」「イケメン出してー」
うわ、朝食中の天使族が、喰いつく喰いつく!!
「お待ち下され、食器を下げたらそのアイテムを出しますゆえ」
「私達が持って行くよー」「早く、早くそのアイテムをっ!」「お願いします、お願いしますっ!!」
あー、天使族のうちふたりが食器を強奪して裏へ持って行っちゃった。
「では、アイテムを……これを使うのですぞ!!」
そう言ってアイテム袋から取り出したのは紙、
見知らぬ感じのスクロールだった、金色のそれを拡げて見せる。
「ええっと、それは……?!」
「このアイテムはMAINAさんからいただいた『種族変更スクロール』ですな」
「それを使うと」「二時間だけ、使用した者を好きな種族に変更できますぞ!!」
(な、なっ、なんだってーーーーー?!?!?!)




