第514話 新派閥「一回組」とかいう言い方
「それではサモナーのヘレン様、テイマーでもいらっしゃいますね」
「はい、よろしくお願い致しますわ」「ここから一回組だねー」
「あのアンジュ様、『一回組』とは」「デレスくんとしかー」「くぉら」
恥ずかしいから止めさせよう、
僕はアンジュちゃんを引っ張り抱き寄せる。
「うわーお」
身長的にはほぼ同じなんだけど、
ちょっと浮いてたから強引になっちゃった、
でもそれが良かったのかな、頬にスリスリしてくる。
(アンジュちゃんが見えているのは経験人数なんだから『一回』ていう言い方は厳密には……)
そのうち魔法の熟練度が上がれば、
人数だけじゃなく本当に回数も見れるようになるのかも?
いやいやこんな魔法の熟練度を上げられても困るか、口に出しちゃうし。
「あの、ヘレン様はレベル70です、これはもう名サモナーですっ!」
「あ~ら、名のあるサモナーになったのね、嬉しいわぁ、ふふふふふ」
「ヘレンさん?!」「旦那様、私は旦那様のために、悪女路線で行きますわ」
そんな急にキャラ付けしなくても!
(わざわざそんな口調にしなくったって、元から悪女に見えて素敵なのに……)
過去何度か悪女役やらせて、
僕が喜ぶって学習しちゃったからかなこれ。
「ふむ、デレスはそんなに『悪女パーティー』にしたいのか」
「いやニィナさんがそれやったら本当にシャレになりませんから!」
「あのー、よろしいでしょうか」「ああすまない」「ヴァルビンちゃん、ごめん」
ニィナさんと僕、息を合わせて謝っちゃった。
「サモナー魔法『クリスタルチェンジ』を覚えました、これは魔石の種類を変換できます」
「どのような魔石でもかしら?」「はい、ただし光魔石と闇魔石は通常魔石三個が必要ですね」
「通常魔石とは?」「水魔石、土魔石、火魔石、風魔石ですっ」「よくできました、ふふっ」
わかってて聞いてる悪女って感じかヘレンさん。
「あと、熟練度が上がると更に上位の魔石と交換できるようですっ」
「まあ、金魔石やガス魔石のことかしら?」「多分そうだと思いますが」
「ヴェルビンさん、今すぐここで調べなさい」「はいストレーナ様っ!!」
分厚い魔法書を読まされている、
これ時間かかるな、まあいいか研修だ。
「あの旦那様」
「はいヘレンさん」
「このような悪女キャラで、よろしいでしょうか」「無理しないで」「……はい」
そういうのはベッドでだけでいいよ、
まあ、とは言いながら時と場合で演じさせるけど、
僕から指示があった時だけで良い、変に人格を作らせたくは無いよ、無理には。
(いくら僕が喜ぶからってね!)
「……ありました、今は無理ですが、熟練度が上がれば、
通常魔石六個もしくは光・闇魔石ふたつで金魔石かガス魔石、
そして通常魔石六十個もしくは光・闇魔石三十個もしくは金・ガス魔石十五個で……」
まさか、もしや!
「レア魔石に! ただし、相当なレベルと熟練度が必要なようです」
「凄いですわね」「ただし過去、そこまで達したサモナーは居ないようです」
「居ないのにどうしてわかるのかしら?」「そ、それは」「ヘレンさん意地悪しないで!」「はい旦那様」
多分、推測とかそういう表示とかされてるんだろうな。
(にしてもエリクサーの材料が自前で造れちゃうのかぁ)
「ヘレンさん、サキュバスの餌が捗りますね」
「それですが、最近は天大樹の実で事足りておりますわ」
「あっ、そうなんだ」「でも、おっちゃん用には使えるよー」
まーだスリスリしているアンジュちゃんが話に入って来た、
そうか、召喚異世界人には魔石をセットで渡さないといけないんだったよね。
(宴会で出て来た女の子には後でちゃんと渡したのかな)
「続きまして勇者、アサシン? ナスタシア様」「はい」
「デレスくーん、一回組が増えた方がうれしーい?」「アンジュちゃんは大人しくしてて」
「はーいアンジュちゃんはこちらへ来ましょうねー」「わーい、クラリスママー」
おいおいおい、いつアンジュちゃんがクラリスさんのママにー?!
(知らない所で知らない関係が築き上げられているな)
「勇者アサシンはレベル65ですね、スキル『魔法吸収』持っている武器や防具が、
敵のかけてきた魔法を吸収して無効化します、吸収量は武器や防具の強さに比例します」
「素晴らしいですね、でも吸収量を超えると」「武器や防具が破壊されてしまいます」
これはちょっとリスキーかな、
おそらく一本しかないあの『光のアサルトライフル』だっけ、
あれが壊れたらもったいないどころの話ではなくなる。
(でも、吸収量も凄そうだけどね!)
「それともうひとつ、『クノイチ』のスキルが『上級クノイチ』になっていますね」
「それは、どのようなスキルに」
「ええっとですね、なんでも抱いた、抱かれた? 男性を丸一日、痺れて動けなくさせる事が可能だそうです」
この場合の『抱いた』『抱かれた』の意味って……
「あーあー相手はデレスくん一回だけなのにー」
「アンジュ様、御主人様とは私、一回どころではありませんが」
「ナスタシアさん、そんな反論はやめてー!!」
そもそも『一回組』っていう区分は止めさせよう。
「あの、他にもクノイチのスキルを使用していけば、
更なる新しい特技が生まれるようです、今はまだわかりませんが」
「……そうですね、今までに居ないまったく新しいクラスですから、『勇者アサシン』は」
と言った陰キャ眼鏡がクイッと眼鏡を直す、
冒険者ギルドとしても要観察って感じかな。
「ナスタシア様は以上となりますね」
「ありがとうござざいました、一流の『クノイチ』を目指します」
(だからといって、僕を痺れさせるのは勘弁な!)
「次が最後の方ですね、勇者ポーター? のデレス様」
「はい、僕が勇者ポーターのデレスです、待っていました」
さあ、僕のレベルアップでは、何を覚えたのかな?!