第490話 もう寝取られたくないと思った所へ感動の再会
「クラリスさん! クラリスさああああん!!!」
「まあデレス様、どうされました?!」
「愛していますううううう!!!」「あらあら、まあまあ」
人目もはばからず抱きついてしまう!
チラッと幻術師スフマを見ると……微笑ましそうにしている。
「ほっほっほ、若いのう」
「クラリスさんは、僕の奥さんです!」
「わかっておる、ちいとばかしアンジュちゃんを」「貸しませんっ!!」
……やっぱり実家に帰ったせいもあるのだろうか、
急にクラリスさんが寝取られる心配が湧いてきてしまった、
ちゃんとしっかり愛してくれているのは、わかっているはずなのに!
(リッコ姉ちゃん達との再会が近いからなのだろうか)
「旦那様、少し席を外しますね」
「あっはい」
気を使ってか転移魔方陣でどこかへ行くヘレンさん、
いやいやヘレンさんだって僕の大切な奥さんだ、
ないがしろにして良い訳じゃないんだけれども……
「まあ、やはりハーレムというのは大変ですわね」
「ストレーナさん……」
「それよりも天使族の方が増えてらしているようですが」
そうだそうだ、紹介しないと。
「ええっと、ずっと、ずーっと隠れていたハーゥメさんです」
「あのう、助けていただいてありがとうございます……」
深々と頭を下げる、隣りのジョセナさんも一緒に。
(あっ、そういえばこっちも紹介してなかったや)
「もうひとりも改めて、石化されてたジョセナさんです」
「天使族の方ですわねっ、どうしてこちらへ?」
「あのっ、そのっ、まあ色々とありましてっ、すみませんっ」
あっそうか、勝手に忍び込んでた泥棒だった、
だからストレーナさんの質問にしどろもどろになっているのか。
(ここは僕がフォローしておこう)
「天使族も天使族で独自に調査に来てたみたいです、敵にやられてしまいましたが」
「まあそれは、大変でしたわね」
「は、はいっ、まだひとり見つかっていませんが」
……これで上手く誤魔化せられるかな?
と思ったがジェイヴさんがいぶかしげな表情だ。
「そういやあ、食事が不自然に消失する事件がずっと続いていたなぁ」
「そっ、そそそそそうなんですかっ?!」
「……まあいいや俺も助けてもらった身、これ以上は言うまい」
ばれてるうううう!!!
いや、たった今ばれたとでもいう感じかな。
(てか、どんだけ盗み食いしてたんだよ!!)
それよりもだ。
「クラリスさん、あんまり他の男性といちゃつかないで下さいね」
「ふふ、そこまではしておりませんよ、でも嫉妬されるのは嬉しいですわ」
「愛してますから、ちゃんと愛していますから!」「次は女性といちゃつきましょうか」
クラリスさんが過去にやっていた事を考えると、洒落にならないや。
「もう、もう寝取られるのは嫌です!」
「はい、デレス様がきちんと愛して下さっている間は、大丈夫ですよ」
「愛します、あ・い・し・ま・す、ちゃんとしっかり、愛しますからぁ!!」
しっかり顔をうずめる僕、
クラリスさんの、どこにとはあえて言わないが。
「デレスさん、翻弄されていますね」
「モグナミさん……まあ、こういうパーティーです」
「私も上手くやっていけるでしょうか」「それはまあ」
(ってパーティーの話だよね?!)
本人は正規メンバーに入るつもりで居るんだろうか、
そのあたりも含めてニィナさんときっちり詰めて貰わないと。
「それでこれからどうなさいますか?」
「あっストレーナさん、やはり先に魔王を倒します、石化された囚人はその後で」
「罪人は構わねえ、ただ仲間を早く頼む」
ジェイヴさんが目をやる方向にはサキュバス達が運んだ石化された看守が!!
「あっそうですね、ヘレンさんは……」
「ただいま戻りましたわ」
そう言って後ろに連れてきたのは……!!
「ハーゥメ! ハーゥメじゃないの!!」
「おっ、お姉ちゃん! ハーミィ姉ちゃん!」
「もう、ずっと心配してたんだからあああ!!!」
あっ、生き別れの姉妹、感動の再会だ!
(そんな大袈裟な物じゃないかな?)
でも、ずーっと心配してたもんなあ、
泣きながら抱き合っている、もらい泣きしそう。
「ヘレン、それでは石化解除しますので」
「はいクラリス様、欠損や止血等はお任せ下さい」
こっちはクールに解呪、治療開始だ、
……下半身が無いのとかこれ本当に戻るのか?
などと思っていたらストレーナ女史がすすすっと僕の方へ。
「それでは勇者デレス様とは、魔王対策について詳しく」
「ええっと冒険者ギルドでそこそこ聞いては来ましたが」
「おさらいを致しましょう」「ストレーナさんが?!」「冒険者ギルド所属ですから」
あっ、そうだった。
「わかりました、ここの魔王『九分の七ぎょどん』ですよね」
「その相棒が大変強いそうです」「えっ、奥さんが居るんですか?」
「親友の女性だそうです、名前を『シャユリ』というセクシーなタコ型モンスターだそうですわ」
魔王部屋で補助する敵の事は聞いていたが、
そこまで詳細には知らなかったな、さすが統括サブギルマス。
「ちなみにその『シャユリ』の夫は『イチャロー』という、イケメンのイカ型モンスターですわ」
「それも居るんですか」
「はい、こちらも『九分の七ぎょどん』の、男性の親友ですね」
とまあ、それぞれ各自する事をして魔王戦に備えている中で……
「あぁ……後はミベル、ミベルはいったいどこに行ったの……?!」
そう、天井を見上げてつぶやく、ジョセナさんだった。