第474話 狩りの再開とナスタシアさんの新技
天大樹でのゆっくりとした昼食、
作ってくれたのはなんと天使族では無く……
「にゃははは、知識にある限りで、一生懸命作ったよ~」
そう、アマタツさんである。
(食事を頂くのは僕とヘレンさんだけだからね、まぁ)
それは良いとして、
アマタツさんの知識と言う事はだ、
事実上、元となったコロメの手料理という事になる。
(そこをいちいち気にしてても、しょうがないよね)
普通に美味しいし……
さすが悪い事をしながら世界中の美味を探求していただけの事はある、
犠牲者に冥福を祈りながら頂こう、僕も危うく死ぬところだったし。
「はいデレスちゃん、コモモジュースよ」
「ありがとうシル姉ちゃん!」
ちなみに配膳はサキュバスの皆さんで、
まるでベッドでの延長線上のようにシル姉ちゃん、
シルバーサキュバスが甲斐甲斐しく世話をしてくれている。
(僕への呼び方を、『デレスちゃん』にしてみたよ!)
ヘレンさんを見ると……
ナスタシアさんみたいに嫉妬はしてないみたいだ、
いや我慢しているだけかも知れない、謝っておこう。
「すみませんヘレンさん、昨夜は」
「……昨夜という事は、旦那様の御実家での事ですか」
「い、いやそっちじゃなく……ごめんなさい」
でもまあそう考えたらヘレンさんとも、
いやしかしその後にシル姉ちゃんを借りちゃって、
賢者タイムの今となっては三人でも良かったかも、今更ながら。
「……旦那様がそうしたい精神状態でしたら、仕方がありませんわ」
「いやその、きょ、今日は一緒に狩りをしましょうね、な、仲良く」
「おそらくナスタシアも一緒ですが」「あっそうか、経験値を溜めなきゃ」
という事はクラリスさんはどうするんだろう、
時間的にはザザムで昼食がとっくに終わった頃だろう。
(僕が起きるのが遅かったからねっ!)
「んっとアマタツさん」
「なにかにゃ? なにかにゃ~? にゃははは」
「なんですかその含み笑いは、それで結局、天使族の皆さんは」
ここまでひとりも居ないとちょっと不思議だ。
「クラリスさんの狩り、そのアシストってゆ~か協力?」
「あっ、解体作業か」
「それで他の天使族も呼ばれてるみたいだにゃ~」
じゃあ羽根白の皆さんもか、
若い天使族って下手するとユマシロさんで最後かもしれないから、
金羽根組を増やすとなると相手は熟女天使に……うん、まあ、その時はその時で。
(確か旅立って行方不明の天使が三人くらい居たはずだけど……)
確か目指した先はヘレンさんの故郷だっけ。
場合によってはやはり行く必要が出てくるかな、
カレンダだっけ、人も亜人も魔物すらも仲良く暮らす国だとか。
「それで旦那様」
「はい、僕の愛するヘレンさん」
「……本日の狩りですが、化粧はいかがなさいましょう」
いやなんでそんなこと聞くのーーー?!
(貴族のお化粧が、嬉しかったのだろうか)
「あっ、アマタツさん、コロメって化粧の腕は」
「やってみる~? 試してみるのもいいかもね~」
「あっはい、じゃあヘレンさん」「かしこまりましたわ」
……結果、やはり悪の女幹部みたいになった。
(コロメは年齢が年齢だったからね! 享年三十八だっけ)
とまあこんな事がありつつザザムの別荘へ、
クラリスさん達はテラスで絶賛、狩りの真っ最中だったのだが……
気配を感じてか、いや一瞬ちょっとだけこっち見たかな、海へ無詠唱の攻撃を続けながら挨拶してくれる。
「デレス様、おはようございますですわ」
「うんおはよう、あっ、急に変な事を聞くけど、聖女には聖女用の化粧の仕方とかあるの?」
「はい、ただ基本、本格的なのは三十代からですね、私は化粧は薄い方かと」
そう言いながら僕を見やるも、
直後にヘレンさんの顔を見て一瞬、固まった。
(やはり悪の女幹部に見えてしまったか……)
「それはそうとナスタシアさんのその魔法は」
なんだか知らないが浮いた魔物や大きな魚を、
光と闇の網で掬っては裏庭の方へ落としている、
それに群がる天使族、でっかいのを解体してくれている。
「あっ、御主人様、お昼過ぎですがおはようございます」
「おはよう、新しい魔法?」
「スキル『クノイチ』の熟練度達成による網魔法ですね、名称はそのまま『投げ網』です」
これはまた便利な、勇者アサシン独自かな、
でかい竜とか魔物を捕縛するのにも使えそう、
網目が粗いというか大きいから、小型の敵や魚には使えないけど。
(なるほど、これで獲物を、素材を)
最前列、手すりの所では姫姉妹が魔法を撃ちまくっている、
クラリスさんの聖魔法シャワーだけでも十分そうな気もするけどね、
でもまあ特にナタイラちゃんの雷魔法は合わせ技に最適か。
「では皆さん、一旦止めましょう」
「あ、終わっちゃうんですか」
「デレス様と交代です、皆様を連れて港の方へお願い致しますね」
場所移動かぁ、
うん、裏庭を見ると素材とか食料は十分過ぎるほど確保してある、
天使族も新たな供給がなくても解体作業に夕方くらいまでかかるだろう。
「それでクラリスさんは」
「私は女神教の教会回りですね、残りの皆さんで船までお願い致します」
「ええっと留守番は」「まだバラカとカミーラが」「あっ、そうか」
あと天使族も留守番っちゃあ留守番かな?
という訳でクラリスさんと別れてヘレンさんの転移で船の上へ……と、その前に!
「クラリスさん!」
「はい、何でしょうか?」
「愛しています!!」「……まぁっ!」
抱きつかれてキスされちゃった、てへてへ。
(ナスタシアさんは爪噛んでないな、ヨシッ!!)
さあ、『妖精の指輪』効果でナスタシアさんの経験を爆上げさせるぞー!!