第44話 まずは見た目から入るスタイル
朝食を終え、まずは歯磨きから教えたアンジュちゃんを居間に連れてきた。
「ねえアンジュちゃん、幻術師のローブを作ったの、着てみてくれる?」
クラリスさんが普通サイズのセクシーパンサーローブを、
アンジュちゃんサイズにあらためて直してくれたものだ、
昨夜、僕が疲れて眠った後にしてくれたのか、朝早く起きたのか……。
「……これ、まだ、ぶかぶか」
「似合ってるよアンジュちゃん!これくらいの方が丁度良いよ」
「……デレスくんがそう言うなら」
頭を撫でてあげる、うん、照れる反応かわいい、
確かにまだちょっとサイズ大き目だけれども今後成長するからとかじゃなく、
あえて両手両足顔が隠れるようにした、これでも大分切ってある。
「なんだアンジュ、幻術師っぽいじゃないか」
「そうよ、アンジュちゃんはまず形から入るべきなのよ」
「女性陣ふたりがそう言っているから間違いないと思うよ」
まずはおだてよう、と思ってたらさっさと脱ぎはじめた。
「どうしたアンジュ、気に入らなかったのか?」
ニィナさんの言葉に対し首を左右にぶんぶん振る。
「……お風呂入ってくる」
朝から、これから出ようかっていうタイミングにかぁ。
「きっとアンジュちゃん、照れてるのよ」
ちょっと褒めたら照れてお風呂って、かわいいな、
きっと新しいローブに似合った自分を作るために綺麗にしたいのだろう。
「ニィナさん時間大丈夫ですか?」
「まあ多少の朝風呂くらいなら良い」
「ひとりで大丈夫かしら」
「さすがに溺れたりはしないでしょう」
「貴重な幻術師だ、そんな事で亡くしたりはしたくないな」
多分、生命の危険が及んだら僕のスキルでわかるだろうし。
「それでデレス、昨日の流れからわかるようにアンジュの恋人になってやってくれ」
「意図は大体わかってくれてますよね?」
「うん、おそらくアンジュちゃんは恋人の言う事なら優先的に何でもきくんでしょう?」
「そうだ、逆に言えば恋人が居なければ誰の言う事でもきいてしまう」
「デレス様に役を押しつけてしまうのは申し訳ありませんが、アンジュちゃんのためにも」
何も騙している訳じゃない、本当にかわいいと思っているし、
きちんと今の状況をある程度矯正できれば、恋人にするのは嫌じゃない、
アンジュちゃん自身がこの中では僕を一番慕ってくれているみたいだから当然の流れだ。
「一応、恋人と僕からは公言しません、その、そこは線を引きたい」
「律儀だな、まあアンジュがすっかり恋人気分だからそれで良いが」
「いったい何に気を使ってらっしゃるんですか?」
「そ、そりゃあ、一番の恋人であるニィナさんと、同じくらい恋人のクラリスさんにです」
「「!!」」
あ、変な空気になったかな?
と思ったらこれは二人とも喜んで照れてる感じだ。
「そうか、デレスはそんなに今夜も可愛がって欲しいのか」
「昨夜がよっぽど良かったのでしょうか、もっと喜ばせてさしあげないと」
「と、とにかく!アンジュちゃんがまた変なのに変な事されないように、
しっかりコントロールしますから!」
話を変えよう。
「そういえばアンジュちゃんの武器どうしましょう」
「武器も何も、当分は居るだけだからな、幻術師用の盾とか無かったが」
「レベルによって幻術師の杖がもらえるはずですが、
魔法学院卒業で貰ったりはしていないのでしょうか」
「本人に聞いてみますが、最悪、その辺の木の棒でも」
「酷い事言うなデレス、それでも形にはなるのだろうが」
あの見た目の幻術師様が持っている木だ、
ただの木であるはずがない!とかならないかな。
「市場にはなかったんですか?幻術師の杖」
「物凄く高いのがありました、ただ、怖くて今は買ってあげられません」
「あっ、そうですね、無くしたり取られたり売ったりとかありそうですから」
本当に使えるようになったら、ちゃんと管理してあげなきゃ。
「あれ?もうアンジュちゃん出てきたみたいです」
「早いな、浴びた程度か」
「では出発の準備をしましょう」
案の定びちゃびちゃで入ってきたアンジュちゃんを、
僕は慌てて褐色の肌をタオルで拭く、
履いてきた下着も濡れちゃってる。
「もう、ちゃんと拭かないと駄目だよ?」
「……デレスくんに拭いて欲しかった」
「お腹冷やしてないかしら?トイレはもう行ってきた?」
「……うん、お風呂の中でおしっこしたから、大丈夫」
「そうかそうか、って、ええ?まさか、湯船の、お湯の中で?!」
コクコク頷いたのを確認して、
僕は急いで連れてお風呂場へ逆戻り!
「ざっと流してきます!」
「やはり一緒の方が良かったか」
「あらまさか、昨夜もなんていうことは」
うん、ちゃんと教えよう。
「アンジュちゃん、お風呂のお湯の中でおしっこしちゃあ、いけないよ」
「……そうなの?」
「そうなの!わかった?」
もういっそ十年くらい女神教に預けたい気分になってきた、
でもこんな事で心が折れちゃあいけない、うん、頑張ろう。
(妹ができたというより、新しいティムモンスを育ててる気分だよ)
でもアンジュちゃんは十八歳の女の子、
そこはちゃんと敬意を持って接しないとな。
「デレスくんが……言うなら」
こうしてなんやかんやあって、ようやく宿を出た。
「アンジュちゃん、幻術師スタイルだからもう隠れなくていいよ」
あいかわらず僕のマントに隠れたがっている。
「……会いたくない人、いるから」
「それでなんだ、昨日、そういう人、見たの?」
コクコク頷く、
今のフードを深く被ってる感じだと、
よっぽど正面から見ないとわからないはずなんだけどなあ。
「よしアンジュ、私の胸の入るか」
マントを広げビキニアーマーの胸元へ誘うニィナさん、
どきっとするようないやらしさ、
僕があそこに収納されたら正気でいられるかどうか。
「……行った方がいい?」
「うんいいよ、とりあえずあそこへ入ってみて」
「わかった」
すっぽり納まってマントの前を閉じられると姿が消える、
うん、このまま歩数さえ合えば誰にもバレないな。
「どうだアンジュ、苦しかったりしないか?」
「……足が軽い、身体がもっと軽くなった」
「お?これはどういう事だ?私に変化はないが」
マントの閉じた所から顔だけ出したアンジュちゃん。
「こうすると、歩かなくて、いい」
どうやらマントの中で足を浮かせているみたいだ、
ニィナさんは構わず普通に歩く、うん、重くないみたいだ。
「ふむ、これなら隠したまま移動できるな」
「ひょっとしてマントの効果が倍になってるんでしょうか」
「ありうるな、私のマントの中に入った事により、
アンジュのローブと相乗効果で、軽減が倍、いやそれ以上になっているのだろう」
それは凄い!僕も疲れたら利用してみたいくらいだ、危険がなければ。
「ニィナ様の身体の大きさだから出来る芸当ですわね」
「そうだね、あとアンジュちゃんの身体の小ささもあるけど」
「ふむ、いっそこの状態で戦闘してみるか?」
「いやさすがにそれは、アンジュちゃんを天然の盾にするのは」
「デレスくん、一緒に入ろ」
いやいやそれはさすがに無理!
「あっ」
その声とともにサッと顔をマントの中へ引っ込めるアンジュちゃん、
冒険者ギルドが見えてきたからか、うん、やっぱり嫌な思い出があるんだろうな。
「そういえばアンジュちゃん、魔法学院卒業したとき、杖とかもらわなかった?」
「……どっかいった」
「いつ?どこで?」
「わからない……パンになった気はする」
「そっか、なら仕方ないね」
貴重なものだったとしても今までは宝の持ち腐れだもんな、
機会があったら探して同じものを持たせてあげたい、
それにはまず、きっちりレベルを上げて、戦力にしてあげないと!
「よし勇者受付は空いているな、すぐ入るぞ」




