第384話 それじゃあまあ、天使族の集落へと行きますか
屋敷の方へ戻るとアマリちゃんが元気にやってきた!
「ねーねー、どーだったー?」
「実が食べられるようになったよ、はいどうぞ」
「ありがとー、アマリ食べきれるかなー」
部屋ではコットンネちゃんが幻術師ハーゴさんとお喋り中。
「んでねー、天大樹は本来、樹の上がドラゴンの棲家でー、
真ん中が天使族の棲家でー、根元が人間で昔はみんな奴隷みたいにしててー」
「そうか、勇者を奴隷にしていたのか」「特に男の勇者を攫ってきてー……」
物騒な内容だがそんなにべらべら喋って良いものなのだろうか、
会話中にも関わらず、ニィナさんがハーゴさんに話し掛ける。
「戻ったぞ、もう良いだろう、ストレーナと帝都へ戻れ」
「これをいただきました、ズッキ様にご献上を」「なんだそのでかい実は」
ガタッと立って色めき立つコットンネちゃん!
「そ、そっ、そーれーはーーー!!」
うっわヨダレが出てきた。
「アマリも貰ったよー」
「ひっ、ひとくち齧らせてくださーい!!」
「よせアマリ、ひとくちと言って全部食われるぞ」
コットンネちゃんも土下座を始めた!
「どーか、どーーーか、お恵みをーー!!」
「ふむ、我々にメリットを示せ」
「んとー、天大樹の資料を好きなだけ読んで貰って構いません!!」
そんなのあるんだ、
確か天使族の集落に図書館があるんだっけ。
「俺は残って天使族やその樹についてもっと知りたいのだが」
「……ハーゴとやらの目的は何だ」
「いや、ただ伝説の天使族やそれが棲む樹を知りたいだけだ」
うさんくさいなあ。
「とにかく戻れ、そもそもアリスを飛ばしての貿易、
シュッコと帝国との間での運搬の打ち合わせに来たはずだろう」
あっ、そうだったんだ。
「俺には知る権利がある」
「なんだそれは、こっちには教えなくてはならない理由は無い」
「……強くなりたいんだ、教えてくれ、頼む」
あっ、頭を下げた。
(そういう事か)
ウチの強さの秘密を知りたかったのかな、
それに天使族や天大樹が関係しているかもと。
「ストレーナ嬢、引き取ってくれ」
「かしこまりました、さあ」
「……また来させて貰う」「いや、もういい」
玄関から出て行った、
あっそうか、本来は別々にしたばかりだった、
ウチのプライベート用転移魔方陣と、ギルド間との。
(これで落ち着いたかな)
「なんだ、帰って行ったのか」
「あっジュマジさん、猿のお世話お疲れ様」
「遊んでいるだけで経験とか上がっていると良いんだがな」
あっそうか、ティムモンスターなら戦わせて育てなきゃ。
(ケルピー達もなんだか今やペット状態だし)
残りの天使族ふたりも戻って来た、
と思いきや土下座してるコットンネちゃんの両脇へ行き、
同じように並んで土下座し始めた。
「お願いしますっ」
「私達の命が掛かっていますっ」
「とりあえず、ウチに来てみてくださーい!」
誘ってやがる……
でもまあ、確かに資料は気になる。
「まあ、一度見に行くのは悪くは無いな」
「ですよねっ?」「ですです」「でしょー?」
どっちみち一度は様子を見に行かなきゃいけなかったからね。
「デレスとクラリスはどうだ」
「行きましょう」「行きますわ」
という事で転移スクロールをハーミィさんに渡す。
「さあ、これで一瞬だ、連れて行ってくれ」
「はい、アマタイジュとありますね、ではここへ!」
「アマリも行きたーい」「こらこら」
さすがに今回は、ね。
「では行ってくる、テーマリーとコットンネは引き続きこちらでな」
「はい、お待ちしております」「行ってらっしゃーい」
こうして四人で転移した先は……!!
「きゃっ?! あっ、ハーミィ! それと……人間さんたち?!」
うん、いかにも古い図書館といった中の、
その受付の前だ、驚いているのはミリーナさんか。
(つまり、図書館が冒険者ギルドの役割で、その受付嬢扱いがミリーナさん、と)
これは『資料を見る』という目的にそのまま、ダイレクトに来ちゃったな。
「邪魔する、天大樹の資料はあるか」
「は、はいっ、お任せ下さいっ!!」
四人で一緒に奥へ行く。
「なんだ、廃墟では無いじゃないか」
「室内はそうですね、でも外へ出ると……」
ミリーナさんが説明しながら奥へ行っている最中、
ハーミィさんが何気に僕の腕を組もうとしてくる。
「ちょ、そんな仲じゃ」
「そんな仲の事、しましたよねっ?!」
「はいはいデレス様は私と腕を組みましょう」
とまあクラリスさんに無事? 保護されながら、
奥の奥の奥、結構奥行あるなあ、と進んで行くと……
「こちらの一角にまとめてあります」
ミリーナさんが一冊の重そうな本を抜いて開いた!
「ふむ、これは……」
「どうしましたニィナさん? あっ、これは!!」
うん、よくわからない文字で、読めない!!!
「私が翻訳しますよ、あと……ハーミィ、ネアリーさんを呼んで来て」
「はーいっ」
「とりあえずこのふたりで翻訳致します」
良かった、やさしいね天使族。
(時間かかりそうだけれども!)
ニィナさんは早速、ミリーナさんに読んで貰っている、
僕は待っている間、窓の外を見ると……!!
「あー、ここ山の上ですね、山って言うか山脈の高い所だ」
「デレス様、クイックドラゴンの群れですわ」
「下は」「あれは稲ですわ、山の斜面に田んぼが、あれは棚田という物ですわね」
ラルス村はどこだろう、上空過ぎてわからないな。
(あと空中ダンジョンとかいうのも、どのあたりだろうか)
そうこうしている間にネアリーさんが来た!
「あっ、ネアリーさんも羽根が!」
「はい、パワーアップ、グレードアップ致しました!!」
(金と銀で、輝いているううぅうう!!!)
まずいな、その、するとバレバレになっちゃう。