第38話 まさかの再会と三人での旅立ち
ドラゴン場が見えてきた、
僕はあえて歩みを遅くし、ニィナさんクラリスさんの後ろにつく。
「ん?どうしたデレス、疲れたか?」
「私たちの歩く速度が速かったのでしょうか」
「そんな、デートでペース合わせるみたいな!良いので少しこのままで」
少し首をかしげるふたりを後ろから見て歩き、思い出す。
(リッコ姉ちゃん、フラウ先生……)
僕を捨てた婚約者たちと過ごした元パーティー、
そこで僕の前を歩きながらよく話をしていたふたり、
背の高い女剣士リッコと胸の大きい女僧侶フラウ、
彼女たちの背中を思い出し、いまのふたりになぞらえる。
(うん、ニィナさん、クラリスさんだ)
リッコ姉ちゃんより背の高いニィナさん、
フラウ先生より胸の大きいクラリスさん、
ふたりとも本当に良くしてくれる、うん。
(……そして)
今来た道を振り返る、
当然ながら誰も居ないはずのそこに、
かつてのパーティー仲間の残り、魔法使いミジューキと、
テイマーのハービィそしてティムしたケルピー三頭が一瞬見えた気がした。
「あとふたり、かな」
「何か言ったか?もう少しだが、おぶってやろうか」
「疲れたのでしたら『遊派味覚教』の聖者さんにいただいた甘い飴を」
慌てて僕はふたりに追いつく。
「なんでもないよ!なんでもない」
「そうか、なら良いのだが」
「アプレイザル!……この飴に毒はないわね」
昔の婚約者の事を思い出してました、なんて言ったら
他の女の事を考えたな、ってまたベッドでお仕置されてしまう、
そういえばクラリスさんの事はニィナさんとしては、どうなんだろう?
「実は考え事をしてて、ニィナさんとクラリスさんのコンビって、様になるなあって」
「それでわざわざ後ろから確認していたのか」
「はい、女勇者と女賢者すなわち聖女様ですからね」
「でしたら、そこに私の愛する勇者ポーター様も入れていただかないと」
「ほら、真ん中に来い、並んでドラゴン場へ入ろう」
……左右に手を繋がれたが、まるで親子三人みたいだ。
「ニィナさんはクラリスさんを、認めてくれているんですよね」
「ああもちろん、賢者を仲間にできたのは最高の想定だった」
「狙ってはいたんですか」
「あぶれた聖女とか居やしないか、そんな都合の良い事はないだろうがもしや、とは」
「居れば幸運って感じだったんですね、本当に運が良いや」
クラリスさんも、にこにこしている。
「そうですね、私もデレス様とニィナ様にお会いできていなければ、今頃、殺されていましたね」
「それで、クラリスさんは、本当に、本気で僕と結婚する気でいるの?」
「もちろんです!できれば毎晩愛し合いたいですが、正妻のニィナさんの許可が必要ですよね」
「えっ正妻って!ニィナさんは、クラリスさんが来るの嫌がってませんでした?舌打ちして」
「何の事だ?ああ女神教での舌打ちか、あれはひと暴れしたかっただけで、クラリスに対してではない」
良かった、じゃあ大丈夫そう、かな?
「だが嫉妬はするぞ、良い方向にな」
「良い方向って」
「クラリスに負けたくはない、クラリス以上にデレスを愛したいと」
「私としてはニィナ様と一緒にデレス様を愛したいという気持ちもありますわ」
「それは良い考えだな、試してみたいものだ」
ふたりの握る手がきゅっ、と強くなる!
まずい、話を、話題を変えよう。
「次のシフリン国でしたっけ、魔法使いをどうやって見つけましょう」
「冒険者ギルドで拾い上げを待つ魔法使いが何人か立っているはずだ」
「でもそれって、優秀、有能な人ってさっさと取られていますよね」
「だが相性というものがある、他のパーティで駄目でもウチなら、というのはよくある」
「そのあたりは情報収集ですね、冒険者ギルドで聞かないと」
でもギルド職員に聞いても中立公平だから教えてもらえなさそう、
あれ?そういう時のために、確か顔役冒険者がギルドに居るんじゃなかったっけ?
「クラリスさん、今更ちょっと疑問が」
「はい、なんでしょう」
「この大陸って、各冒険者ギルドに顔役冒険者が居るって聞いたんですが、ルアンコでは」
「居ますよ、勧誘している聖女がそれです」
「あ!でもクラリスさんみたいな若い子も多かったですよね」
とはいっても二十八歳だけど。
「一応、それぞれの教団で、その場に居る聖女で適した人が仲裁や新人の相談に乗っていますね、
その中で一番仕事が多いのは『十七歳教』のマームさんです、ボス戦にも加わっていただいた、
確か実年齢は、ご……やめておきましょう」
うん、嫌な予感しかしない。
「さあ着いたぞ、寂しいが手を離そう」
受付でニィナさんが冒険者カードを見せると、
大した手続きも無く奥へと案内された、そこに居たのは……!!
「デレスさん、こんばんは」
「あれ?ええっとアイリーからここへ送ってくれた、確か、ミリカさん!」
「はい、ニィナにお願いされて、皆さんをシフリンまでお運びしますね」
そしてドラゴンの背中には、またテントが、
あ、もうジト目になってるよこのドラゴン!
「いいんですかニィナさん」
「ああ、もちろん無料ではないが貸切だ、なあミリカ」
「実は今日、たまたまアイリーからルアンコへの便を操縦しまして、
明日はたまたま、シフリンからアイリーへの便を操縦するので、
ルアンコからシフリンへたまたま回送で飛ぶので、それをたまたまニィナが」
た、たまたま、ね、うん、まれによくある。
「まあ大きい、私、ドラゴン便も、ルアンコの外に出るのも、初めてなんです」
「クラリスさんが、はしゃいでる!」
「テントの中を見てもよろしいですか?これは……横になりながら移動するのですね」
続いて覗くとやはりというかマットが敷いてある、そして枕がみっつ!
「ニィナさん、またこんなの用意して!」
「予定通り三人で休めるようで良かった」
「真ん中はデレス様ですね、こちらは脱衣の籠でしょうか」
中に入った僕らを笑顔で覗き込むミリカさん。
「ではもう出発します、ドラゴンの姿勢が安定するまでは我慢して下さいねー」
何を我慢するの!って言おうとしたらもうテントが閉められた、
しばらくののち、ドラゴンが上空に舞う感覚がし、やがて動きが安定する。
「……もういいな、ではデレス、脱がせてやろう」
「あらそういう事でしたら私も、ふふ、こういうのも良いですわね」
「ちょ、ちょっと、こんな所で、ふたりがかりで剥かないでっ!」
「新パーティ、ニィナスターライツの親睦を深めるだけだ、なあクラリス」
「はい、デレス様がおっしゃってたような、ニィナ様とコンビネーションを練習しますわ」
そ、そこまでは言ってないのに!
「うわ、わ、わーーー!!」
「ふふっ、デレス、やはり愛しているぞ」
「私もです、デレス様、愛していますわ」
……新たにパーティーに加わった聖女クラリスさん、
奪われた元婚約者のフラウ先生と比べちゃいけないのかも知れないけど、
そんな過去を忘れさせてくれそうな予感、いや、期待をしてしまう、
次の街ではどんな魔法使いさんを仲間にできるかわからないけれども、
とにかく今はニィナさんクラリスさんを、今度こそ、誰にも奪われないようにしなくちゃ。
(みんなで幸せになって、寝取られた過去を、上書きして行くんだ!)
第三章へつづく。




