第377話 里帰りという事でシャマニース大陸にも行ってみた
「ここは……聞いていた通り、ドームだな」
転移直後、周りを見回し真上を見て確認したニィナさん、
僕は目の前の冒険者ギルドしか見てなかった、そして……
「ほ、本当だ、懐かしい、コガタンの冒険者ギルドだ!!」
感涙の声を漏らすアムァイさん、続いてハズッキさんも。
「あぁ、本当に、本当に一瞬で帰ってこられたなんて……!!」
「ねーねー、はやくパパとママのお家に行こうよー」
ふたりを引っ張るニッチちゃん、こう見ると子供の仕草だ。
(ちょっと聞いてみよう)
「えっと、ニッチちゃんって、おいくつ?」「二十六だけどー」
うーん、何とも言えない。
(ニィナさんより上かよっ!!)
見た目的には十代でもおかしくなかった……
それはさておき、アムァイさんが気を取り直して僕らに身体を向ける。
「冒険者ギルドに紹介した方が良いかな?」
「ふむ、説明が面倒だな、だがアムァイ殿はギルドマスターだ、なあデレス」
「はい、しかもここ出身なら信頼しても良いかなと」
狩りをするならどっちみち行かなきゃいけないし。
「そうかわかった、ここへの移動手段については」
「……とりあえず、隠して置いて欲しい」
「では『とある秘密の手段』と伝えておこう、ハズッキ、先にニッチちゃんと一緒に」「はい」
姉妹の方はご両親の所へ行くみたいだ、
そしてアムァイさんは冒険者ギルドの中へ、
僕らも入っていこうかなと思ってあたりを見回すと……
「ええっと、ニィナさん、これって隣がありません?」
「そうだな、ドームがふたつ、くっついているようだ」
大陸の第三都市っていうくらいの規模だものね、
これ何万人くらい住んでいるのだろう、観光したいくらいだ。
「ぼーっとしていても仕方が無い、入るぞ」
内部は綺麗かつ、なんていうか頑丈な造りだ、
そしてなんとなく扉とかソファーとか色々なサイズが大きい、
普通より120%とか135%とかのサイズだ、ニィナさんヘレンさんも安心。
(勇者受付がちゃんとあるな)
しかしアムァイさんを待たねば、とソファーへ座ろうとすると……
「やあ新顔だね」
やってきたのはサキュバスだった!!
リーダーのニィナさんが対応してくれる。
「ほう、それはコスプレか?」
うん、つい最近、身内で見た。
「サキュバスハーフさ、魔物と人のハーフ、アタイの名はメティクル、聞いて驚きな、サモナーさ」
「珍しいな、強いのか」
「ここの顔役をやっているくらいだからね」
うん、ナツネェさんのバニー姿もだったけど、
顔役として印象付けるにはバッチリだな、
でもここまでくると娼館の客引きと間違われそう。
「やはりサキュバスサモナーか」
「とんでもない、バットサモナー、コウモリ系だよ」
「そうか、それはそれでサキュバスらしいな」
ポンッポンッとコウモリを出す、ってでけえ!
僕やアンジュちゃんと同じくらいのサイズだなこれ。
「さすがにサキュバスサモナーなんて超レアは見た事無いね、
ドラゴンサモナーより珍しいよ、居たら是非、紹介しておくれよ、仲間にしたいからさ」
残念、もう所属してるんだなこれが。
空気を読んでかヘレンさんは何も言わず立っているし。
ニィナさんはコウモリを撫でてる、勇気あるなあ。
「強そうなコウモリだな」
「ドリームバットっていう種類さ、驚かないでくれよ、ほうら」
コウモリ二匹がそれぞれメティクルさんの両肩に止まると、
一気に空中へ引き上げた! ニンマリと微笑みながら見下ろしてくる。
(あー、ハーフだと自力じゃ飛べないんだ)
僕の飛ばれた第一印象が、それである。
ニィナさんはリーダーとして一応、リアクションを取ってあげる。
「すごいな、幻術師が飛べるのは知っていたが」
「こういう飛び方もあるのさ、アタイのパーティーだと四人まで同時に飛べるんだ」
じゃあこのコウモリ、一応フルの八匹まで出せるんだ。
「そこの坊やだと一匹で持ち上げられるかな」
「は、はあ」
「あっ、アタイがサキュバスハーフだからって変な目で見ないでおくれよ、
こう見えて身持ちは固いんだ、期待させちゃったらゴメンよ、ってまだそんな年齢じゃないかアハハ」
あっ、ヘレンさんがイラッとしてる。
そこへ視線が行かないようにかニィナさんが改めて自己紹介を。
「申し遅れた、『ニィナスターライツ』というパーティーのニィナだ」
「勇者でリーダーだね、この中で一番強いって一目見てわかったよ」
「すまない、ワケあってパーティーは今、二人ほど離れている」
ああぁヘレンさん歯ぎしりしないでえ!!
(それに引き替え、ニィナさんは大人だなぁ)
「アタシは『ウィングウィンガーウィンゲスト』のリーダーだ、そうだ、
ここへは観光目的じゃないだろうが、良い所へ案内してあげるよ」
「いや、人を待っているのでな」「話は通して来ました、先に行ってきて下さい」「うわっ!!」
僕が驚きの声を上げてしまった、
アムァイさんいつから居たんだろうか。
「そうか、済まない」
「おそらくあそこでしょうから、ここのギルマスも暇そうですし」
「なんだいギルマスに用事だったのかい、まあいいや、ついておいで」
こうして僕らはメティクルさんについて行くのであった。
(あの尻尾は本物? 偽物? どっちだろう……)
だからといって、引っ張ったりしないよっ!!