第335話 中で何が起こっているのか、そもそもルーナ魔王城とは?!
ザザムの高級別荘、
その豪華な居間で五人、掲示について考案する、
進行はもちろん我らがリーダー、ニィナさんだ。
「ハズッキ殿、前回観た掲示とは内容は」
「違いますね、二日前は複雑な謎解きで、何かを掲げれば門は開くというものでした、
先ほどギルドに居たパーティーが挑戦したようですが、謎が解けず時間切れのようで」
「それであれだけボロボロに」「もう、あきらめて帰られるそうです」
あー、じゃああのテイマーの爺ちゃんが送って行くのかな。
(モグナミさんがみんなに紅茶を出してくれてる、うん、この胸は鈍器だ)
「そもそもあの城は何だ、他のギルドで軽く説明は受けたが、あらためて頼む」
「はい、空中浮遊型要塞であるルーナ魔王城は七大魔王のひとつルーナが治める、
十階建ての城で主にムームー帝国内、十三か所にランダムで着地していました」
「マスマ町の冒険者ギルドでは、魔王城は行方不明と聞いたが」
あっそうだ、どこに居るかわからない、遥か上空では? って聞いた覚えが。
「はい、十三カ所に居ない以上、一般への説明は行方不明という事ですね、
このような危険な状況ですので基本、ここに居るのは秘密にされているようです」
「我々には良いのか」「黄金勇者様ですし、それにほら、隣が」「まあな」
隠しようがないか、
それにしても黄金勇者なのにマスマ町では隠されていた?!
いや、あのユルい過疎ギルドだ、大して何も考えず秘匿したって落ちだろう。
(単純に情報が、田舎過ぎて来てなかっただけだったりして)
「本当に強い一部の黄金勇者様だけに依頼としてお願いしている状況です」
「事情はわかった、城については」
「一階と二階が初心者エリア、三階と四階が一般エリア、
五階と六階が中級エリア、七階と八階が上級エリア、
九階以上が危険エリア、全て入るたびに中は色々と変わるようです」
それが今や全て危険エリアになっていそうだな。
「どういった敵が」
「アンデッド系ですね、しかも夢魔系、のはずでしたが」
「今やそれどころではないな」「はい、夜には一部の魔物が海の中にまで」
迷惑な、
そういえば人魚族さんとやらにも一度、会ってみたい。
「早く倒さないとまずいのか」
「これはもう、実質スタンピードと言っても構わないでしょう、
帝都に救援をお願いした所、外国の凄腕冒険者パーティーが向かうと」
「つまり、我々がここへ来るように仕向けられていた訳か」
ですよねー、色々とおかしいと思った、
別荘を売りに出されていた時点ですでにコレだったと、
もうこれは手を回して僕らが落札するように仕組んだ、まであるな。
(ピンポイントで僕らじゃなくても、金持ってる所が買えばそうなるか)
「ハズッキ殿の話はわかった、クラリス、掲示を見てどう思う」
線だらけのメモを見て考え込んでいる、
これはこれで本人にだけわかる文字らしい。
「魔物側で何かアクシデントがあったようですね、
それでこちらへ緊急着地して誰かが逃げたか、
もしくは誰かが逃げたために緊急着地したか、ということは……」
逃げたって、いったい何が?!
「クラリス、それだと魔物が強くなった原因は」
「強い魔物が出るようになった原因は、魔物を発生させる魔法か何かが暴走、
すなわち壊れたか、ひょっとしたら逃げた者がその出力を最大にして逃げたか」
「戻せないとすると」「逃げたのはそれを操る事が出来る、側近や幹部とか」
七大魔王のひとり、ルーナが反乱を起こされた?!
「ちょっと待って下さい、そんな無責任な、相手は七大魔王ですよね?!」
「そうはいっても魔王にも色々いるだろう、ゲームマスターになっている奴もいる」
「それって、キュンさんの事ですか……あっ、彼女に何か聞けば」「そうだな、話が詰まったら聞こう」
よくよく思い出せばあの掲示文章も、
ゲーム感覚な気がする、同じノリの人なのかも。
「よし、ハズッキ、屋上は安全なのだな?」
「屋上というかテラスですね、幻術師様の防御壁が働いていますから」
「魔王城をよく見るぞ、確認したい事がある」
という事でテラスへ、
うーん、城の上部からどす黒いオーラと敵が……
あそこからの進入は無理だな、湧き出る泉に突っ込もうというようなものだ。
「よし、窓がいくつもあるな」
「そりゃあ城ですからね」
「という事はだ、アンジュの転移で入れるという事だ」
うん知ってた、
でもその十階が危険な魔物でぎっしりだったら……
「クラリス、浄化魔法は長くもつか」
その言葉に少し考え込んでいる。
「……逆にお城の中でしたら、全方向から一気に来る訳ではありませんから、
魔力の消費も抑えられるかと、しかし前後から敵が挟み込んでくるのでしたら、
私がもうひとりは欲しいですね、現実的にはアンジュちゃんの力技に頼るのが一番でしょうか」
それなら、なんとかなりそうだけれども。
「クラリス、試しにあれを攻撃できるか」
「やってみましょう」「あっ、それは」
慌てて止めに入るハズッキさん。
「まずいのか」
「はい、全体魔法、浄化魔法で城に攻撃したパーティーは何組がいらっしゃいました、
そのたびに放出される魔物の量が多くなり、個も強くなっているようですので」
内部を調べて元から絶たなきゃ駄目だなこれ。
「わかった、アンジュ達と合流するまで待とう、
そういえばこの別荘、広大な庭がついていると聞いてきたが」
「その庭に魔王城が」「つまりこの下か」「城の下全部ですね」
不法占拠じゃないですかー!!
「よしわかった、あの掲示が変わるという事は、
まだ中に話ができる者が居るという事だ、そいつを探そう」
「窓を見て回れば、そいつが居る部屋がありそうですね」
という話で居間に戻るとハズッキさんモグナミさんが出る準備を。
「では私達は他の別荘の管理を、皆さんはこの後は」
「大丈夫だ、アンジュさえ合流すれば、そちらのギルドへは行ける」
まだアンジュちゃんは行った事ないけれど、
目視で誰も居ない場所へ転移を繰り返せば、
安全な街中まではすぐだろう、敵が気付いても次の瞬間にはもう移動してるだろうし。
「ではこちらの別荘には戻らず、見回ったらギルドへ戻りますね」
「ああ、世話になった、また相談に行く、またな」「ありがとうございました」
クラリスさんが丁寧に頭を下げているのでつられて僕も。
出て行く時くらいモグナミさんのすんごいアレをそれとなく見よう。
(うん、確かにお給金払う価値はあるな、でも僕だと埋もれて死んじゃいそう)
二人がダッシュで出て行ったのを確認し鍵を閉める、
落ちついた所で座って紅茶を飲むとニィナさんクラリスさんが詰めてきた。
「やはりああいうのには目を奪われるのか、デレスも」
「デレス様、やはり男性にとっては大きければ大きい程、良いのですか?」
「い、いや、あれは物珍しさで見てたというか、魔物を撲殺できそうなレベルのアレはちょっと」
ニィナさんクラリスさんも十分おっきいんだけれど、
自分以上に大きい胸に僕が目を奪われるとやはり嫉妬してしまうのかな、
いや確かにまったく興味が無い訳では無いのだけれども、重くて硬いのは、怖い。
(ヤンデレなヘレンさんが居なくて良かった)
「確か彼女はここの、冒険者ギルドマスターの愛人ではなかったか」
「アムァイ様の愛人のようでしたわね」
「あの奥さん、ハズッキさんよく許してますよね、喧嘩にならないんでしょうか」
今も別荘の確認中、背中からズブリ! とか。
「見た感じだが、雇用主とバイトの関係がしっかり成り立っているようだ」
「あくまでもビジネスライクという事でしたら、娼館からお金を出して呼んでるようなものですわ」
「あー、冒険者活動もやってくれる高級娼婦がシュッコに何人も居ましたものね」
うん、僕も相当お世話になっている。
「割りきれば嫉妬はそれ程ないだろう、モグナミ氏の心の内まではわからぬが」
「そういう事ですか」
「むしろ夫婦間が冷めている状況でしたら、処理をしていただいて助かっている、とか」
処理ってクラリスさんのその言い方!
「デレス、ではデレスは私達で処理するか」
「それは良いですわ、デレス様、わたくし共で是非、処理を」
「い、いや、みんないつ帰ってくるか、それに休むんじゃ、うわ、わ、わあああああ!!!」
という訳で別荘でしばらく休みました、うん、これもまた休憩。




