第305話 闘技大会二日目と今日の予定
朝食後、みんなでコロシアムへ、
僕と一緒に並んで進むのはクラリスさんとナスタシアさんだ。
「へえ、結局、今回の大会は今日が最終日なんですか」
「はい、人数と質によって二日開催か三日開催かが決まるようでして」
「そうなんだ、エキシビションが多いのもそのせいなのかな」
アンジュちゃんが居ないのでみんな徒歩でぞろぞろ、
出場組は早めに朝食を摂って、さっさと行っちゃったみたいだ。
(当日朝のルール確認ミーティングとかあるらしい)
道中やはり僕らは目立つのか、
ニィナさんが居ないからなのか話し掛けてくる連中も多い。
「よう、今日はでかいのは居ないのか」
「すみませんニィナスターライツに入れてください!」
「おーい、そこの女勇者を売ってくれ、奴隷なんだろう?」
このあたり、今日はでろでろエクスタシーの連中が払ってくれる、
まあ奴隷でメイドだからね、一番護りたいのは自分とこの姫姉妹だろうけど。
アスリクの男性奴隷勇者は子供組を護ってくれている。
「ああっ、カミーラ様ではありませんか、踏んで下さいっ!」
「いつか白金貨を溜めて、カミーラ様を買い取ってみせますからっ!」
「カミーラ様、カミーラ様の奴隷になりたい、どうか、どうかっ!」
おいおいおい追い払う係のカミーラにまで変な連中が……
ていうか奴隷の身分で普段、街で何やってくれているんだまったくもう。
(身体売ったりする許可は出してない、はず)
でもこうなると東Aエリアの娼館に売る手も、
と思ったが昨夜の事を考えるとそれは可哀想か、
それになんだかんだ言って、でろでろの連中には情が湧いてきた。
(まだ全員の名前を憶えていないけれど!)
コロシアムが見えて来たあたりでクラリスさんがパンフレットを確認する。
「本日の出場はアンジュちゃんの幻術師部門、天使族のエキシビション、
ご指名があればヘレンのサモナー部門、あと勇者部門のベスト4ですね」
「それなんだけどさ、昨日、ちゃんと四人、勝ち抜いて出揃ったよね?」
「はい、その中にニィナ様は、プリンセスバタフライはいらっしゃらなかったですね」
でも確かに昨日、ベスト4からの参加だって聞いた、
いったいどうなっているのだろうか、今日の試合を見たらわかるか。
(いよいよ高レベルな攻防が見られる、これは勉強になるな)
僕だけじゃなく、観戦に来ているみんなも。
「子供部門、出たかったのにー」
「はは、シカーダちゃん、ママに止められちゃったんだっけ」
「アマリも次、出たーい」「にゃあ……出たくない」
ペロちゃんは乗り気じゃないのか。
「あれ? ペロちゃんひょっとして、闘技大会、見たくなかった?」
「……みゃあ、見るだけなら、だいじょうぶみゃあ」
嫌なら無理矢理連れて来る事もなかったけど、
そのあたりは確認済みのはず、たとえ奴隷であっても。
「さあ、入ろうか」
今日はいきなり朝からコロシアムの名物弁当に列ができている。
「ご安心下さい、今日はさらに多めに作ってきましたから」
そう胸を張るのはお料理勇者のシティエさん、
昨夜は遅くまでお弁当を作りに作っていたらしいけど、
試合中、観戦中に寝ちゃたりしないかな、ちょっと心配。
「さて席は……昨日と同じ、あのエリアだ」
みんなで座って待っていると、
今日も司会の西冒険者ギルド勇者受付、
チアー女史が四方に礼をして喋りはじめた。
「さあ本日も皆様、あ皆々様方、ようこそいらっしゃいますーん!」
軽い笑いが起きる、
掴みは良好ってやつだなこれ。
「第1887回シュッコ定例闘技大会、二日目にして最終日、はじめるざますよーー!!」
沸く会場、うん、楽しみだ。
「それではオープニングマッチですが、皆さま、驚いて下さいませ、
昨日初披露いたしました仮面勇者、プリンセスバタフライ様の、早速の登場です!!」
うっわ、いきなりニィナさんか!
うん、でっかいベルセルクソードで相変わらず正体はバレバレだ。
「対するは、あっ、この四名でええっっすう!!」
反対側から入って来たのは昨日勝ち抜いたベスト4だ!!
「それでは只今より、特別プレーオフ、準決勝割り込み試合を始めます!!」
(な、な、なにそれええええええ?!?!?!)
ニィナさんは、いやプリンセスバタフライは
やる気満々でベルセルクソードを振り回している!!
「ルールをご説明致します、この五人でバトルロイヤルを行い、
脱落者が一人でた所で終了となります、よって、個人で戦うもよし、
誰が誰と組んでも良し、とにかく一人を脱落させていただきまああっす!!」
その言葉にニィナさん以外の勇者四人が集まった、
プリンセスバタフライと向かい合う形で……うん、向こうの腹は決まっている感じ。
「さあ、さあさあさあ、この試合、どのような結果になるのか!
審判も多めに用意しております、それでは早速オープニングマッチ、始めちゃいましょう!!」
これ寝坊で遅刻した観客、大損だな。
さあ、ニィナさん対四人とはいえ相手を一人ぶっ倒すだけでいいんだ、
結構簡単な話のはず、逆に向こうは四人でニィナさんを倒さないと優勝は無いと見たか?
「クラリスさん、大丈夫ですよね?」
「ええ、信じましょう」
ステージの四方にも審判が控える、
副審か、そして中央の主審が一対四の間に入って……
「それでは……はじめっ!!」