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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 寝取られ勇者と鋼鉄のバーサーカー
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第3話 そしてこの朝チュンである

 チュンチュン、チュンチュン……

 小鳥さえずる朝、僕はベッドで全裸のまま、両手で顔を覆って……泣いていた。


(奪われた……はじめてを……あんなことこんなこと……はじめてだったのに……うううぅぅ……)


 情けない事に一方的に蹂躙された、

 思い出して震える僕はさぞ見た目以上に小さい男だろう、

 元・婚約者たちとは一線を越えるどころか大事にして手を握るのも躊躇していたくらいだったのに!


(行く所まで行き切ってしまった、いや、連れて行かれてしまった……もう戻れない……ううっ……)


 浴室から戻ってきた大きな人影にビクッとする、

 首からバスタオルをかけ、美しい肉体美を隠しもせず僕の方へ寄ってくる、

 見れない、恥ずかしくって、しかも泣いてる顔なんて、見せられないよぉ……


「すまなかったな、色々と」

「は、はいぃ……」

「まずはこれを飲んで落ち着いてくれ」


 そっと紅茶の入ったカップを渡してくれる、

 美味しそうな良い匂い、僕は起き上がって飲む……

 その間にニィナさんが下着とか履きはじめたのは見ないようにしよう。


「今更だが、その、初めてを半ば強引に奪った事は謝罪する」


 いや、半ばというより八割は逆レ●プだったような……

 男が受け身で奪われたとか言うのは改めて聞くと情けない響きだ、

 僕の純潔がとか言うと乙女になってしまうから考えないようにしよう。


「もし本気で嫌な思いをしたのなら、これで忘れてくれ」


 勇者の持つ基本スキル、アイテムボックスの入り口を空間に出し手を突っ込み、

 じゃらじゃらと金貨を出す、五十枚くらいはある、ベッドにぼとぼとと落とされる。


「慰謝料だ、雌のワーウルフに噛まれたくらいに思って忘れてくれれば良い、

 何なら引っ叩いて出て行ってもかまわぬぞ」

「そんな! その、に、二割くらいは合意だったというか、

 嬉しかった気持ちも無い訳ではないですし、その」

「その、なんだ?」

「はいっ、本気で嫌だったら、本当に駄目だったら逃げてました、

 でも、ちょっと色々考えて、最終的に、ほんとに最後は……受け入れました」

「良かった、合意か、ならばこれはもういいな」


 金貨を回収しはじめたニィナさん、

 でも十枚残った、そしてその上に銀貨を落としはじめる。


「これはまず宿代の金貨十枚と、受付嬢に渡した銀貨十枚、

 さらには冒険者ギルドの酒場で払った食事代、二人合わせて銀貨五十一枚だ」


 やけに記憶いいなぁ酔いつぶれてたはずなのに!


「い、いや僕の分は……」

「それくらいの謝礼はさせてくれ、元騎士団員の名が折れる」

「は、はあ」


 謝礼って、酔ったのをここまで運んだ事の方だよな?

 男娼になった覚えは無いし!


「そこでだ、あらためて話がある」


 ベッドに乗ってきて黒い下着姿のまま迫ってきた。


「私は昨日、冒険者となった、そこで早速だが一緒にパーティを組まないか?」

「えっ、ニィナさんとですか?!」

「ああ、これも何かの縁だ、むしろ運命的な出会いとでも思っている、これは一言で言えば天命だ」


 重い事言い始めるなあ、とその大きい身体を見て思う、

 あらためて見ても恵まれ過ぎたそのボディは様々な意味で最高と言える、

 いや、まじまじ見ているうちに恥ずかしくなってきた、僕は顔を逸らす。


「その、僕はポーターですよ、アイテムボックスのある勇者様には不要では」

「そうか?S級勇者パーティだと三、四割は戦闘中に勇者を補佐するポーターが居たと思うが」

「よ、よくご存じで」


 確かに前線で戦うタイプの勇者がいて僧侶の回復が追いつかなかったり

 魔法使いの魔力が切れたりすると、それをアイテムで補佐するポーターは必要だったりする、

 あとすごく聡明な軍師的ポーターも居たりして伝説にもなってる、

 逆に悪いパターンだとそういう高レベル勇者のポーターは雑用係だったり

 酷い所だと使い捨てみたいな奴隷だったりするらしく偏見もある。


「必要であれば雇おう、賃金は言い値で良い」

「いえっ、その、お仕えする立場になるかどうかはわかりませんが、仲間という事であれば、その」

「ふむ、ではとりあえず今日、試しに組んでみようではないか」


 やさしく僕の頭に手をかけて軽く撫でてくれるニィナさん。


「今日から、ですか?」

「ああ、君がポーター試験に受かるための準備と資金稼ぎだ、

 あと私の戦い方を見て組めるか判断してもらいたい」

「そ、そうですよね、まだお互い何も知らないですから」


 昨夜の事は別にして!

 いやベッドの上の事じゃなく!!


「とりあえず前向きな反応で良かった、では風呂に入ってきてくれ」

「そ、そうですね、では行ってきます……」

「何なら私がお姫様抱っこでもして運ぼうか?」

「いえっ! だ、だいじょうぶですからっっ!!」

「転ぶなよ、運動神経の良い君なら大丈夫と思うが」


 逃げるようにして風呂場へ行き裸そのままでシャワーを浴びる、

 せっかくだからお湯にも浸かろう、さっきまでニィナさんが入っていたお風呂……

 昨夜は凄かった、むさぼられた、まさかこんな形であんな相手いやその言い方は失礼か、

 ニィナさんみたいな大きな女勇者に愛されたなんて……まだ僕の身体に痕が残っている、

 なぜだろう、わずかに僕を捨てた婚約者たちに申し訳ない気持ちが湧いてくる、裏切られたのは僕なのに……


(うん、これは、この出来事は、僕に吹っ切れって言われているようなものだろう)



 お風呂を堪能したのち身体を拭き、

 アイテムボックスから出した下着を履いて脱衣所備え付けのバスローブを着る、

 せっかくこんな超高級宿に入ったんだからもう少しの間ゴージャスに浸りたい、

 一番ゴージャスだったのはニィナさんの身体だったけど!とリビングの方へ戻ると、

 豪勢な朝食がたくさん並べられていた、丁度メイドさん達が引き上げていく所だった。


「うわあ、高級なサラダや果実がいっぱい」

「肉はあまり食べないと言っていたからな、君の分はこういう朝食にお願いしておいた」

「逆にニィナさんの方は肉々パラダイスですね」


 食事しながら僕は昨日聞けなかった、

 少し引っかかった事を聞く。


「その、どうして実家には戻らなかったのですか」

「ああミシュロン家の事か、私が本当に肉親と思えるのはお爺様だけだったからな」

「両親とはその、あまりよろしくなかったんですね」

「妹や弟には少し思う所はあるが、あそこはもう捨てた、

 私を勇者という道具としか見ていなかったからな」


 寂しそうにダッシュブルの肉を頬張る、

 朝からステーキは凄いな。


「そうだひとつ聞いて良いか」

「はいなんでしょう」

「その、昨夜の私は……どうだったか」

「昨夜って酔いつぶれてた事ですか?」

「いやそうではなく……いや、もういい」


 あ、顔が少し紅くなった!

 それを見てなぜか少しほっとする僕であった。

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