第28話 新しい剣と狙われる聖女
攻略三日目、もうすでに六時間以上潜っている、
いま進んでいるのは狭い通路、魔物溜まりで敵を倒しまくるニィナさんとカーナさん、
それを的確に補助、回復するクラリスさん、僕の出番はあまりなく雑用係みたいなものだ。
「……という事なんだ、まったく恐ろしい暗殺聖女だろ」
「ふーん、ニィナも彼氏も大変だねぇ」
戦いながら昨晩の、
日付的には今日、明け方前の出来事を説明したニィナさん、
カーナさんは手斧でウッドゴーレムをかち割りながら喋る。
「つまりまとめると、そこの聖女さんはベッドで暗殺する個人スキルを持っていて、
内外的に危険で命を狙われていると、それを避けるために別の個人スキルで上書きしたい訳だ」
「ベッドとは限りませんでしたけどそうですね」
「ダンジョンでもかい?おそろしい、そのくらいの美貌と胸じゃ並の男じゃイチコロだね」
「それが無垢な新人の聖女も……もう、一生背負っていく十字架です」
「罪悪感はちゃんとあるんだね、それならまあいいさね、良くはないけど」
僕も会話に加わろうかと思ったが魔石回収でそれどころではない、
ウッドゴーレムの死骸は木材になるらしいけどいくらでも取れるからいらないらしく、
クラリスさんがたまに遠慮なく魔法で焼いている、通路が詰まる程溜まった時には助かる。
「それでクラリス、別のターゲットにあてはあるのか」
「ありません、先に女神教への貢献をしてから考えます」
「私もデレスも一緒に考えてやる、なあデレス」「はいっ」
ニィナさんに急に話を振られて焦る、
そんな会話をしているうちに部屋の扉だ、新たな罠だろうか、
カーナさんが耳をあててみる、首を振っているから音はないか、わからないのか。
「デレス、中の反応は?」
「んー、小さいのがひとつだけあるっぽいですが弱くてよくは」
「よし、入ってみるか」
そのニィナさんの判断に頷いて扉を開けるカーナさん、
その中は空の宝箱が散乱していた!
カーナさんはガッカリした声で言う。
「あーこれは罠部屋が終わった後さね」
「うむ、おそらく普通の宝箱とミミックが混ざった部屋だったのだろう」
「これって一匹引っかかったら他のミミックも一斉に襲ってくる罠みたいですね」
僕の言葉はこの宝箱の散乱具合から間違いないだろう、
あたりかまわず炎系魔法をまき散らした跡もある。
「あら、これは」
クラリスさんがひとつの宝箱に気が付いた、
杖をかざして魔法を唱える。
『ダイヤルロック!!』
反応し四桁のダイヤルが表示される。
「やはりかかっていたようですね、開けますね」
「番号わかるんですか?」
「賢者全員にあてた場合は0000ですが、そうでない場合、教会別の数字もあるんです」
まずはそのまま開けようとしたが無理みたいだ、
念じてダイヤルを回し始めた時、僕は慌てて止める。
「待って!さっき言った魔物の気配、この中から感じる」
「えっ、ミミックですか?」
「違いますね、中です、魔力は大したことないですが」
「ふむ、デレスのその話だと嫌な予感しかないな」
「いかがいたしましょう、私、気になります」
うーん、何か良いアイテムないかな
「一応、これがありますが」
低確率で守ってくれるデスデリカちゃん人形を出す。
「それかい、相変わらず変な表情の人形さね」
「怖いですよね、なんでこんな顔にしてるんでしょう」
つい力が入ってむぎゅっと握る。
『そこはデスデリカちゃんセクシーだねって言うんだよ』
変な事をシャベッターのでアイテムボックスに戻す、
さあどうしよう、中に魔物が入っているなら収納もできないはずだ。
「クラリス、開けるだけ開けてみるか」
「はい、とはいってもダイヤルはわかりませんが、
教会別の数字というのをいくつか試してみますね」
「聖女さん、一応こっちに来な」
「はいカーナさん、ありがとうございます」
大きい盾をふたつ構えたカーナさん、
その盾と盾の間に隠れてダイヤルを念じながら回す。
「……次は女神教のダイヤル、最初の3つは……最後0は無理と、では……」
回しているうちに僕らでもわかる『カチッ』という音が聞こえた。
「開きました!こ、これは」
「これは?」
「最後の1つは私への個人番号です、ダンジョンに潜る聖女は女神教では五人いて、
私は末尾7なのですが、それに反応しました、私宛のメッセージですね」
「にもかかわらず中に魔物の反応とはなんだ」
「わかりません、従魔でしょうか、それとも」
絶対罠だこれ。
「後は開けるだけなんだね?アタシに任せて、下がるよ」
端まで下がって盾を重ねて二重にし、その後ろに隠れる。
「防御魔法も張ります、エアーバリア!」
空気の層が目の前を覆う感覚がした。
「よし行くよ?この手斧で……」
ニィナさんが黙って僕を覆いかぶさるように護ってくれる、
クラリスさんも固唾を呑んで見守る、
カーナさんが遠くなげた斧が宝箱に当たると蓋が開いた!
『ゲコッ!』
中から出たのは禍々しい模様のカエル型モンスターだ!
「まずい伏せろ!」
その声の瞬間!
ドッガーーーーーン!!!
とんでもない大爆発……
部屋自体が壊れて扉も壁も燃えている、
僕らは盾と防御魔法で大した怪我はないが煤まみれだ。
「げほっ!げほっ!大丈夫かい」
「ええ私は、みなさんは怪我はありませんか?」
「デレス、平気か」
「苦しいっ!ニィナさん、抱きしめすぎっ!」
しばらく待つと他の宝箱も燃え尽きていた、
初期風魔法ウィンドで煙を奥へ追いやるクラリスさん、
僕の身体をはたいてくれるニィナさん、ちょっと過保護すぎ。
「無事でよかった……それにしてもさっきの魔物、ボンバーフロッグか」
「そうさね、ちょっとのダメージで大爆発する危険なヤツさね」
「私個人への暗証番号でした、ということはターゲットは私……」
「ほんとに狙われてるんですね、ということは身内ですか?」
「わかりません、教団別番号は、特に五教会は普通に漏れます、どこもこまめに変えてはいますが」
危うく巻き添えになる所だった。
「んークラリスさん、これは早く解決した方が良さそうですね」
「その、助けて下さい!本当なら、聖女なら、
私だけを捨てて皆さん他の街へ、と言うべきなんでしょうが」
「いや、正直で私は好きだぞ、それに同じパーティだ、仲間を見捨てる訳にはいかない」
「ニィナ様……ありがとうございます!」
「ふう、盾が一枚駄目になっちまった、それはそうと、これは報告するのかい?」
考え込むクラリス。
「こういう事があったという報告はして構わないと思いますが、ギルドハウス内でなければ基本、
冒険者ギルドは公平かつ争いには不干渉ですから、無駄に騒がない方が良いという面もあります」
僕も一緒に考えて話す。
「女神教には報告するんですか?」
「……正直、私が信頼できるのはもう教祖レナン様だけですので、レナン様にお会いしたら」
「ニィナさん、色々と急いだ方が良さそうですね」
「ああ、とりあえずはこのダンジョンのボスを倒そう」
「そこまで急ぎますか!上手く行くと良いのですが」
とはいえクラリスさんの手柄にすれば『女神教への貢献』はクリアできそうな気がする。
「今日はもう帰るさね」
「そうだな、その盾なら中ボス部屋にでも迷い込んだら危険だ」
「すみません私のせいで」
「丁度良い時間ですよ、明日がんばりましょう」
「ありがとうございます」
ボスかあ、まだ明日まで様子見の予定だったんだけどな、
って、なんで様子見なんだっけ?
とにかく続けられる空気でなくなったのは確かだ、
本当にすまなさそうにするクラリスさんを慰めつつ、
僕らはからくりダンジョンを引き上げるのだった。
「あれ?僕、まだアダマンタイトソード、一度も使ってない!」




