第252話 勇者アサシンとダンジョン同時攻略
ムームー帝国の冒険者ギルドを帝国側で牛耳っているらしい、
お局様であらせられるストレーナさんからあらためて説明がなされる。
「ここアスリクの帝国冒険者ギルドでは、ライタニーの力が必要不可欠です、
本人も数日お灸をすえられたようですし、今後の事を考え、わたくしの権限で奴隷を解放致しました」
うーん、まあこっちとしてはすでに終わった話だから、
引き取った冒険者ギルドがどうしようが勝手だけれど、
納得いかない、とまでは言わないが、本当にこれでいいのかな。
「ナッキチ殿はそれでいいのか」
「ああ、致し方ない、中央の、帝都の判断だからな」
「そういう訳だ、これからは俺様に敬意を持って……」「おだまりっ!!」
あ、ストレーナさんに一喝されてライタニーが首をすくめているや。
「もちろんこれを機に、帝国冒険者ギルドはモバーマス大陸冒険者ギルドと協力関係を築き上げて行きたいと思います」
やけに物わかりの良いストレーナさん、
おそらくこの状況、その経緯を鑑みて、
対立せず僕らと手を結んだ方が良いと考えて舵を切った感じかな。
(おそらく思い切った方向転換だろうけど、うん、賢明な判断だ)
「そこでまず手始めに、合同でここのメインダンジョンを攻略してしまいましょう」
「随分と簡単に言うものだな」
うん、ニィナさんのツッコミはよくわかる。
「ニィナスターライツの皆さんのお力があればすぐですわ」
「ではあらためてここのメインダンジョンをおさらいしよう」
とナッキチさんの説明で再確認、
入口がふたつあるメインダンジョンは最後の魔王部屋までは繋がっておらず、
それぞれ地下四階の準魔王を同時に倒す事でやっと魔王部屋が開いて中で合流できる。
(これまでは帝国と外国人側が仲悪すぎて、それができなかったんだよな)
ごくまれにたまたま同時に倒して門が開く事があっても、
魔王そっちのけで冒険者同士で小競り合いをしていたとかなんとか、
まあライタニーさんを見ていればそうなるわなって感じはする。
「……という事で時間を決め同時攻略をする、
外国人側はニィナスターライツ、帝国側はライタニー、ファイラのパーティーだが
十二勇者ナンバーワンとツーのパーティーが合同であっても攻略確率は10%程度らしい」
「おうよ、そこでちょいとナスタシアと、そちらのサキュバスを借りたい、さすれば問題ないだろう」
うーん、ヘレンさんナスタシアさんの奴隷ふたりを貸すのは良いけれど、
そうなるとこっちの戦力が、ナスタシアさんはともかくヘレンさんはサキュバス合わせれば
下手すると1パーティー分の戦力があるからね、さてどうしようか、とニィナさんを見る。
「……ヘレンとサキュバス八体を取られるのは痛いが魔王部屋で回収できるのであれば問題無い、
こちらも助っ人のパーティーを呼ばせてもらおう」
あっ、あてがあるのか、あれかな、ニィナさんの兄弟子パーティー、
でも初めて会った時に全滅しかかっていたけどあれでいいのか?
まぁ僕らがメインで闘う補助としてなら、使えない事も無いのか。
(そしてナッキチさんが全体を見渡して話をまとめるみたいだ)
「よし、ではメインダンジョン攻略は明日にでも始めよう、各自準備をおこたらないように」
みんな頷く、
そしてナッキチさんはナスタシアさんの方を見た。
「それにしても、勇者アサシンというのは本当か」
「はい、あらためて鑑定していただいて、確定しました」
「そうか、おそらく冒険者ギルド史上、初めての特殊職業になるな」
勇者もアサシンも特殊職業としては有名な方だけれど、
その両方となるとそれはもうケーキにドーナツを乗せるようなものだ、のそっと。
「レベル50でスキル『一撃必殺』という、当たりさえすれば敵を必ず倒す攻撃を身に着けました」
「そりゃあすげえ! おいナスタシア、俺の、冒険者ギルドマスターの権限でお前を買い直してや……いでででで」
あーあストレーナさんに思いっきりつねられてるライタニー、懲りないなこの人も。
「アナタが奴隷解放されてギルドマスターに戻れたのは善意だという事を忘れないようになさい」
「……うっす」
しょぼんとしてら。
そしてナスタシアさんが話を戻す。
「ステータスによれば素早さが跳ね上がっていました、
おそらく勇者アサシンは素早さに特化した職業なのだと思います」
「だとすれば前衛にはもってこいだな、しかも一撃必殺もある、素晴らしい」
ニィナさんが褒めるのもよくわかる、
敵にでくわしてもこれで最初の一匹は確実に勝てるのだから。
(ますますニィナスターライツがバケモノパーティーになってきたな)
何を今更とは思わなくもないが。
「にしてもお前らすげえな、前衛がばかでかい剣の女勇者と一撃必殺を持つ勇者アサシン、
中ではまだまだ現役で戦える勇者ポーターが控えて魔法は聖女と幻術師が万全の構え、
さらにサキュバスを大量に出せるサモナー、これはもう天下取れるな」
褒められてるんだけどライタニーに言われると何かムカつく。
「褒めるのは良いがそちら側もきっちり仕事をしてもらうぞ」
「おうよ!」
とまあこうして冒険者ギルドでの打ち合わせは終わったのであった。
「では一旦、城で食事と行こうか」