第215話 少女の謎判明と祭りのシンボル
食事を挟んで夕方まで見に行ったものの、
正体不明の巨大な鳥は影すら無かったのだが、
働いている労働者の皆さんから情報を集めた。
・とにかく素早い
・現れたと思ったら、物凄い勢いで上空に舞い上がって点になった
・火を吐いた
・羽ばたいた翼で牛が吹き飛んだ
・朝に入った娼館で嬢に作って貰ったお弁当を取られた
・後頭部に金貨大のハゲがあった
・鳴き声はグエーーーーッだった
・セミ系の魔物は死ぬ間際に大きく羽音を出す、これがほんとのセミファイナルなんちゃって
などなど、まあ毎日張れば姿くらいは見れるかもしれない。
「ただいまーーー」
学校が終わって転移を繰り返し戻ってきたアンジュちゃん。
「おかえり、どうだった?」
「ビッグマムが、いっぱいしばいてた」
「そうか、平和そうで良かった」
あ、そうだ、お願いしなきゃ。
「アンジュちゃん、戻ったばっかりで悪いんだけれども」
「なあに?」
「またニィナ城へ行って、ケルピー三頭を連れて来て欲しいんだ」
「んー、今すぐー?」
「夕食の後でもいいよ、バウワーさんも……いや、いいや」
ヘレンさんで事足りるか。
「わかったー」
「皆さん、夕食の準備が出来ましたわ」
今回はクラリスさんが手伝ってくれた。
「アマリも手伝ったよー!」
奴隷少女アマリちゃんは自分の事アマリって言うのか。
「あ、アンジュちゃん、鑑定」
「あーい」
さあ、何が出てくるか……?!
「名前:アマリ 年齢:十三歳 性別:女 レベル:1
職業:アサシン 個人スキル:生意気メスガキ(敵を挑発)
あとの数字とかは、めんどくさーい」
「なるほど、ってアサシン?!」
パーティーに居ないレア職業きたあああ!!
(うん、やっぱり持ってる、幸運値のおかげだ)
こういう子に出会えるっていう幸運に感謝だな。
「アマリちゃん、ボク、アンジュだよ」
「アマリはアマリだよ! 君、こっちより年下?」
「年上だよ、十九歳」「ふーん」
留守番奴隷とはいえ仲良くできるかなぁ。
「アマリを買ってくれた勇者さんはいくつー?」
「えっ? 僕も十九歳だけれども」
「……変態! 変態! へんたーい!!」
むっかつく!!
「こら!」
ゴチン、と爺さんに殴られてやんの。
「いたぁ~い」
「ご主人様に何を言っておるんじゃ」
「あー奴隷だったー忘れてたー」
……よく考えたらふたりとも訛らず普通に喋ってるな、
どこからどう流れて奴隷になったのだろうか?
後で、いや、時間ができたら改めて聞こう、答えてくれないかもだけれど。
「ちゃんと謝らんかい」
「はーい、お兄ちゃん、ゴ・メ・ン・ネ」
「こら舌を出すでない!」
これもメスガキスキルの成せる技か、
順調に育てばカミーラさんみたいになるかも、
いやそれって順調か?!
「すまんな、すっかりお転婆で」
「いえ、でも凄いですね、アサシンって」
「アサシン……??」
あ、この爺さん、ひょっとしてわかってなかったのか?!
「えっと、アマリちゃんの職業鑑定は」
「しておらん、出来る環境になかったからの」
「え、でもこっち来た時は」
「商業ギルドは職業までわかる鑑定水晶は無かろうて」
「そ、そうなんですか」
ここはちゃんと教えた方が良いな。
「うちのアンジュは鑑定持ちで、アマリちゃん、職業アサシンです」
「な、なななんとー?! ……薄々はわかっておったわい」
ズコー。
「じゃ、じゃあなぜ高く売らないんですか」
「アマリはワシと離れたくないと言ってくれておるからのう」
「あー、アサシンってばれたら確かに単独で引っ張られそうですね」
一緒に買ってくれる人を待ってたのか。
「安心して下さい、無理に引き離すような事はしませんよ」
「本当か?!」
「はい、そもそもこのお屋敷の留守番を頼もうと購入したんですから」
これにはアマリちゃんも反応する。
「よかった~、それでアサシンって?!」
「んーアマリちゃんは冒険者になりたい?」
「わかんなーい」
さよですか。
「まあ話は後で、とりあえず夕食をいただきましょう」
こうしてみんなで食べ終わった後、
奴隷ふたりに皿洗いをさせる、ジュマジ爺さん意外と嫌がらなかったな。
(ちゃんとした食事が食べられるだけでも幸せ、とか言ってたもんな)
ニィナさんがそれとなく聞き出そうとしたが、
他の村に住んでて洪水にあって、という情報までしか聞き出せなかった、
ただここがマスマ町から馬車で四時間の距離なのになぜ訛りがきついか聞いたら、
「あーそれは帝都からの距離じゃな」
と詳しく教えてくれた、
ようはマスマ町は意外と帝都から近いが、
ここラルス村は帝都から遠いので訛りが強いんだとか。
(横の線より縦の線で考えろみたいな話かな)
まあ後は単純に村から出た事があるかないかの差だろうと。
そんな話を僕も皿洗いしながら聞いた、ってそれくらいはしないと。
「じゃ行ってくるー」
ケルピー三頭を結局、ひとりで取りに行ったアンジュちゃん、
そういえばニィナさんは? と思ったら玄関の方から戻ってきた。
「いやしつこかった、是非、祭りに参加してくれと」
「えっ、行かないとこの屋敷を謎の黒覆面集団に壊されたりしませんか?!」
「さすがにそれは無いと思いたい、高い金を出して買ったのだからな」
うーん、この村ともある程度の交流は不可避かも?
「ちょっと覗いてきますね」
そう思って窓から外を見ると、
とんでもないモノの形をした巨大オブジェを村の男衆が掲げていた!
(あーあれは……男のシンボル的な)
うん、早く村を出よう、厳重に鍵かけて。




