第201話 アンジュちゃん完全休日ときたらデートでしょう!
「という訳で娼館の女性三人も魔王討伐祭りの神輿に担がれてくれるそうです」
「そうか、それは良いのだが……」
翌朝、アンジュちゃん迎えに来てもらい、連れられてムームー帝国領内、
カヤヤ村へと戻ってきたのだが、国境の魔法障壁は入る時は何の抵抗もなかった、
まさか撤収したのかな、と引き返したらやっぱり見えない壁はあったので元からこうなのだろう。
(入るのは簡単、出るのは大変、まさにそんな感じだ)
それはそうとニィナさん、何を考え込んでいるのだろう。
「デレス、妙にスッキリしていないか?」
どきり!
「昨日の夕方、アンジュが帰ってきた時、デレスだけ泊まるとは前もって聞いてはいたが、まさか」
「あ、あくまで娼館の皆さんとお話をしただけでして」
「昼から朝までか、そんなにか」
ば、ばれてるうううううううう!!!
「いやその、昼に一回、夜に一回です、そんなに時間は」
「三人相手になら合計六回か、それでどうだった」
「い、いや言わせないで、ご、ごめんなさいっっ!!」
クラリスさんが歯を磨き終えてやってきた。
「デレス様はあいかわらず、そこまで聞いていない事まで喋ってしまいますわね」
「え? じゃあひょっとして、ハッパかけた?!」
「葉っぱ♪ 葉っぱ♪ 頭にのせよー♪」
アンジュちゃんは変なテンションだし!
「デレス、まあその件は今夜、じっくり」
「は、はいぃぃ……」
(でも、今夜のお仕置的なリスクを考えても、昨日は良かった、さすがプロ)
ヘレンさんは外でサキュバス六体と朝の体操だ、
え、一体足りないって? その説明はまた後で。
「それはそうとアンジュ、ここの所すっと働き過ぎだったゆえ、今日は完全休養だ」
「うんー、デレスくんと一日やすむー、ひとりじめするよー」
「ええ、デートは聞いてたけれど、一人占めまでは聞いてない!」
ニィナさんクラリスさんを見る。
「アンジュのこれまでの働きからすれば、仕方ない」
「そうですね、アンジュちゃん、あまりデレス様を困らせては駄目よ?」
「あーーーーーい!!」
朝からハイテンションだったのは、このためかぁ。
「デレスくんデレスくん」
「な、なにかな」
「タミィさんに聞いてんだけどー……」
こうしてアンジュちゃんとのデートが始まったのだった。
(まず最初はいきなり空中散歩かぁ)
カヤヤ村から一本道を進む進む、
たまに会う馬車に空中から挨拶してびびらせるアンジュちゃん、やめなさいって。
「それでアンジュちゃん、どこ行くの?」
「ネミーユ村だよー、このあたりから坂道だよー」
結構急な坂だが空中移動の僕らは何の苦も無い、
やがて山を登っている事に気付き、中腹の村に到着した。
「こーこだよ」
「のどかだね、何があるの?」
「んーと、あれ、あれー、あれだよー」
麓を見渡せる柵のある崖上、
そこに大きな、立派な椅子が設置されている、背もたれがハートマークだ。
「これ二人用だよね」
「だよー、なんかね、なんかの用できた、この国の女王さまのお父さんとお母さんが、ここに座ったんだってー」
「へー、ムームー帝国の、女帝の両親が、ねえ」
先代の国王夫妻がデートに来て座った椅子かぁ。
「でー、ここ座ってー」
「うん、良い景色だね」
カヤヤ村はどこかなーって思って見ていると……
チュッ
「アンジュちゃん?!」
「キスした恋人同士は、幸せになれるんだってー」
「あはは、そ、そうなんだ」
この時間だから他に観光客とかいないよな?
そう思って見回したらガチ登山勢に横目で見られていた、恥ずかしい。
「んーアンジュちゃん」
「なあに」
「えいっ」
チュッ
「えへへへ」
「アンジュちゃんが居てくれたら、もうそれだけで幸せだよ」
こうしてしばらくいちゃついたのち……
「じゃーつぎー」
「え、次はどこへ」
「釣りするよー」
瞬間移動で湖のほとりへ!
「あ、見覚えある」
「でっかいワニを凍らせたとこー」
「ええっとそっか、アイジニアス湖か」
って、結構遠いはずなんだけどな。
「アンジュちゃん凄いね、転移の範囲が広がっている」
「えへへ、でもカヤヤ村からマスマ町までは魔方陣でないとまだむりー」
「そうだよね、でも逆に言えば魔方陣さえ描ければ」
ひょっとしたらスターリ島経由でミリシタン大陸まで転移できるかも?
「はーい釣り道具」
「あ、ありがとう、どんなお魚を釣るのかな」
「お魚を釣って、そのお魚を餌にして、ワニを釣るんだよー」
とまあこの日は田舎なりに(失礼)デートを楽しんだ、
そして最後に訪れたのは、カヤヤ村の縦穴ダンジョンだ。
「まだまだいっぱいあるー」
「うん、近いうちにいっぱい採られそうだけどね」
ふたりして万日草採取、
敵は大人しいが時たま跳んでくる寄生種に注意だ。
「最後がお金稼ぎとは」
「ちがうよー、お花を摘んでるんだよー」
「ま、まあそうだけれども」
普通の冒険者が命がけで来る場所も、
僕らにとっては単なるデートの一か所か。
「あーーー」
「どったの?」
「引っこ抜くねー」
と、僕の首筋に手を!
ぶちぶちぶち!!
「い、いででで」
「抜けたよー」
「あ、ありがとう」
寄生植物、パラサイトプラントがくっついていたのか。
「この種、万日草に紛れたまま回収とかしないように注意だね」
「ちゃんと鑑定してるよー、今のもデレスくんを鑑定してわかったー」
「あ、ありがとう」
アンジュちゃん自身はスキルで平気だよな?
と思って見たらローブにめっちゃ種ついてるし!
「あ、あとで、上に戻ったら色々とチェックしよう」
「わかったー」
こうして沢山の万日草をもぎ取って、
この日のデートは終了である。
「たのしかったー」
「うん、僕も」