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【ついに完結】草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第二章 勇者ポーターと暗殺聖女
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第19話 教会都市と謎の聖女

「もうすっかり夜ですね」

「ああ、だが冒険者ギルドに寄る時間くらいはあるだろう」


 貸切の勇者便から降りた僕たちは街へと入る、

 すっかり汚してしまったテントはミリカさんがしっかり後片付けしてくれるらしい、

 乗せてくれていたドラゴンの目がジト目だったような気もするが、忘れよう。


「ここルアンコ教国は教会都市だ、他のギルドと様子が違うから驚くなよ」


 すっかり満足して女性ながら賢者タイムのようになっているニィナさん、

 機嫌良さそうなのは足取りでわかる、僕もまあ、怖かったけど、そこまで嫌じゃなかった。


「教会って宗教は何教でしょう」

「様々だ、確か十三の宗教が集まって都市を作っている」

「そんなにですか!僕は実家のアヴァカーネ伯爵家が確か純聖教だったかと、個人的には無宗教に近いですが」

「私の家は祖母が自由教だったせいで各自別々だ、私個人としては宗教より国を信仰していたとでも言おうか」

「冒険者パーティーでも同じ宗教で統一してる所とかありますよね、僕はそうじゃなかったけど」


 冒険者ギルドは確かに白を基調とした教会っぽい建物になっている、

 入るとやはりというか教会っぽい、しかも冒険者まで僧侶が多い、前衛より多い。


「勇者受付はあそこか、ダンジョンと宿の情報を聞こう」


 豪華で広くも誰も並んでいない勇者専用受付に入ろうとすると、

 ひとりの美しく胸の大きい僧侶が薄紫の水晶を持って前に立ち塞がった。


「申し訳ありません、お手数ですが手をかざしていただけますか?」


 すいっと差し出すように向けてくる水晶、

 綺麗だ、普通の冒険者ギルドにあるのとは違い、より高価そうだ。


「勧誘なら断る」

「いえ、人探しです、お願いします」

「信者さがしなら他をあたってくれ」

「違います!お願いします!私の命がかかっているんです!」

「……これでいいな」


 面倒くさそうに水晶に手をサッとかざす、

 それで終わってさっさと冒険者受付へ入ろうとしたが、

 水晶は眩しく反応した、驚く僧侶、僕もびっくりしたけど。


「貴女です!探していたのは貴女です!」

「だから勧誘なら……」

「私と、結婚してください!!」


 は?!、という表情になるニィナさん、

 さすがの鋼鉄のバーサーカーも、こんな突拍子もない事を言われればそうなる。


「おーい受付嬢、こいつを何とかしてくれ」

「話だけでも、話だけでも聞いてください!」

「すまないが私にはすでにパートナーが居るんだ、素敵な男性のな」


 照れる。

 これでもう本当に話は終わりとばかり受付に入った。


「勇者様、ようこそルアンコ冒険者ギルドへ!」

「まずはここのダンジョンの特徴を教えて欲しい」

「はい、ここはモバーマス大陸屈指の迷宮ダンジョンが有名になっておりまして、

 ダンジョンそのものが、からくりのような形で動いています、

 階層もおおよそ地下百二十階くらいまで、としかわかっておりません」

「ひょっとして階数まで変わるのか」

「はい、ですから階を降りると敵が急に強くなったり弱くなったりといった事もあります」


 聞いているだけで相当やっかいそうだ。


「マッピングはされているのか」

「階層内でもルートが変わる事が多いので無意味かと」

「わかった、他に特長は?」

「この通称『からくりダンジョン』は、宝箱が豊富な事で有名です、量で言えば大陸一ですね」

「それで賑わっているのか」


 一攫千金にはもってこいのダンジョンみたいだ。


「ただトラップも多いので気を付けてくださいね、

 麻痺や毒や催涙、睡眠、おまけに催淫といったものまであります」


 うん、最後はニィナさんがよくかかっているやつだ、素で。


「わかった、後は潜ってから何とかする、話は変わるが宿のおすすめはないか」

「特に宗教のご希望は」

「そんな所まで宗教が関係しているのか、まあ無いな」

「冒険者カードをご提示いただけますか?」

「ああすまない、これでいいか」


 カードを水晶にあてて浮かび上がる情報を読み取っている。


「ニィナ様は二十三歳ですので二十五歳以下割引の宿をご利用できますね」

「いや、安くなくても良い、むしろ少し高めでもいいから、男女二人で泊まれる良い感じの宿が知りたい」

「そういうことでしたか、はい、そういう宿でしたら博愛教会の運営する……」


 ニィナさん、リッコ姉ちゃんと同い齢だったのか!

 二十三歳という若さであんなに騎士団員に慕われていたとは……

 ずいぶん若いうちに入隊していたらしいし、頼れる、頼もしい所があるのは知っている。


「ご苦労、では泊まってくる、クエストは明日聞こう」

「ありがとうございます、ゆっくり体調を整えてくださいね」


 受付嬢に頭を下げられて後にした。


「ここへ来た目的は、からくりダンジョンだったんですか」

「それもあるが、買い物と待ち合わせだ」

「……あの、すみません、私と結婚を……」


 さっきの紫水晶を持った僧侶さんがついてきた、

 やっぱりやばい人だったのか、触れないようにして話を続ける。


「待ち合わせってお知り合いですよね」

「ああ、よくアイリーに来ていたパーティのひとりでな、どんな奴かは会えばわかる」

「すみません、話を、話だけでも……」


 しつこいけど相手をしたら負けだという雰囲気がニィナさんと共通認識である。


「その人を引き抜くんですか?」

「それは無理だろう、既婚で夫がメンバーに居る、剣士の旦那が中心だからな」

「……助けてください、結婚していただけないと、私、命が……」


 このまま宿まで行って大丈夫かな、

 さすがに入り込んでまではこないだろうけど。


「せっかくの教会都市ですし、僧侶を仲間にしたいですね」

「能力もだが性格重視だ、僧侶と魔法使いの相性は知っているか?」

「あの、き、聞いて、くだ……さ……」

「あーはい、僧侶と魔法使いのコンビネーションがパーティーの力を決めるとも言われていますね」

「体力がない魔法使いは僧侶がいかに気を使って助けるかが肝になる、我の強い僧侶では上手くはいかない」


 前のパーティー、デレスフライヤーズでも、

 僧侶のフラウ先生と魔法使いミジューキお姉ちゃんの連携は抜群だった、

 魔力の切れたミジューキお姉ちゃんを、回復するまで丹念に護り切ったフラウ先生の計算力は凄かった。


「ここは実は魔法使いもそこそこいてな」

「えっ、じゃあ両方探すのも可能ですね」

「……お願い……聞くだけでも……」

「ただ、そう簡単に相性の良い僧侶と魔法使いの組み合わせを一度に見つけるのは不可能だ」

「ミリシタン大陸では凄いのいましたよ、双子で兄が僧侶、弟が魔法使い、コンビネーションばっちり」


 学園の同級生だ、その双子、互いに仲は悪かったけど、

 組むと何の合図もなく意思疎通できてたんだよな、不思議だった。


「だがそのふたつを一気に解決する方法がなくはない」

「何ですかそれ?あ、もしかして」

「賢者だ、僧侶の回復・防御魔法も、魔法使いの攻撃魔法も使えたうえ賢者独自の魔法もある」

「勇者に次いで有名なレア職業ですよね」

「ああ、ただ人数は勇者より少ない、この教会都市においては女性賢者を聖女と呼んで崇めているらしいが」


 宿が見えてきた、あそこかな、結構豪華な宮殿ぽい感じ。


「聖女様かあ、そんな人はダンジョン攻略とかしなさそうですね」

「そうだな、特殊スキルを地上で使うだけで丸儲けらしい、レベルも無理して上げる必要もないのだろう」

「……あの、私、その聖女なんですけれども……」


 ……えっ?!

 僕とニィナさんは顔を見合わせつつ、

 背後のストーカーに目をやる。


「やっと見てくれた……私、女神教の聖女、クラリスと申します、

 あの、お姉様、私と、私と結婚してくださいっ!」

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