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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第五章 黄金勇者と謎のアサシン
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第190話 幻術師と幻術師

「ほっほっほっほ」


 金と銀の刺しゅうが施されている立派なローブ、

 その中の老人はいかにも『只者ではない』雰囲気を醸し出している、

 何よりあの魔方陣から転移してきた時点でレベル50を超える幻術師なのは間違い無いだろう。


(一気に空気がピリついた)


「ムームー帝国の追手か」


 ベルセルクソードを抜いて構えるニィナさん、

 僕もクラリスさんもアンジュちゃんもヘレンさんも取り囲む、

 そしてサキュバスは転移予定の11名を護っている、でも気は抜けない。


(幻術師の強さは仲間で良く知っているから……!!)


 鋭い目で中央の幻術師を睨む僕ら、

 それに対し突然、ニカッ! と何本も歯が抜けている笑顔を見せて杖を仕舞う。


「これは勝てんの、お前さんたちは強すぎる」

「……それでは帰って貰おうか」

「だが、嫌がらせくらいならできるぞい?」


 と今度はローブの中から禍々しい鎌を取り出した、

 そう、これは見覚えのある、僕らがオークションに出しムームー帝国が買い取った……!!


「死神の鎌か」

「これはのう、見ん事な国宝級武器じゃ、誰じゃこんなものオークションに出した奴は、

 敵に渡るっちゅう可能性を考えておらなんだかのう、ほっほっほ」

「何が言いたい」


 ニィナさんの声とほぼ同時に、

 アンジュちゃんも対抗して死神の鎌を目の前に浮かせる!


「どっちが強いかなー」


 そう言って鎌自体をくるくる回してる!

 触らずに……これ、相手の首を刎ねるまで追尾しそう。


「ま、まだ敵では無いがの」


 と、死神の鎌を仕舞う老幻術師。

 でもニィナさんはベルセルクソードを構えたまま、

 むしろ握りが強くなったくらいだ。


「さっさと用件を聞こうか」

「確認じゃよ確認、我が国の国境はこのワシの魔力、スキルによって『絶対に』

 転移できんハズだったのじゃが、どういう訳かのお」


 あ、これは話に出たばかりの『ステータス矛盾』に当てはまるのかな?!


「……調べに来たのか」

「報告せんといかんからのう、そうじゃの、とりあえず早いうちに帝都まで来るようにの」

「わかった、全てはこのダンジョンの準魔王を倒してからだ、さっさと帰れ」


 アンジュちゃんをじーーーっと見る幻術師。


「ほうほうほう、なるほどなるほど」


 鑑定か、逆にアンジュちゃんはこの幻術師を見れているのだろうか?


「……よしわかった帰ろうかの」

「そうしてくれ」

「じゃがの、これだけは確認させてくれい、アンジュとやら」

「……ナンダ、カエレ」


 おお、謎の幻術師っぽい言い回し!

 これもシューサーくんの入れ知恵かな?


「浮いてみてくれんかの」

「ナゼダ」

「なあに確認じゃよ、できるだけ高くのう」


 そうはいっても洞窟内だし。


「本当にそれで帰るのだな?」

「今回はの」

「アンジュ、上がってやれ」


 ふわふわ浮きあがると老幻術師が死神の鎌を振るった!!


(危ないっ!)


 間一髪避け、靴が片方脱げただけだ!


「貴様!」

「ほっほっほ、またのう」


 さっさと転移魔方陣でマスマ町の方へ帰って行った……みたいだ。


「なんだあいつは」


 ベルセルクソードを仕舞うニィナさんにヘレンさんが声をかける。


「追いかけましょうか」

「いや、やめておこう、依頼が先だ」


 僕は靴を履き直すアンジュちゃんに近づく。


「大丈夫だった?」

「うん……あんまりかんてーできなかった」

「どこまでできたの」

「んっとねぇ……『名前:スフマ 性別:男性 年齢:119歳 職業:幻術師 レベル:81』ってとこまでー」

「そっかそっか、ありがとう」


 アンジュちゃんより丁度100歳年上かぁ。


「デレス、油断はできない、さっさとこちらの11名を順番に運ぼう」

「そうですね、アンジュちゃん、もう大丈夫?」

「ちょっと浮いただけだから、もういけるー」


 こうしてようやく輸送作戦を実行できたのだった。


(ふう、やっと運べる、でも油断はしないでおこう)



 最初の爺さん(幻術師ではない)を無事に国境村まで送り届けた後、

 帰りの魔力溜めの最中に話し合う。


「デレス、さっきの幻術師、どう思う」

「んっと、意外と余裕無さそうでしたね」

「やはりか、クラリスは」

「魔力がやはり凄いかと、底が知れません」

「アンジュ……アンジュ?」


 あ、寝てる!

 夜中だもんね仕方がない、

 って魔力溜まったらちゃんと起きるよね?


「ヘレンはどう思う」

「……正直、現れた瞬間にサキュバスを全てぶつければ勝てました」

「だが初手でそれはまずい、向こうも言っていたように完全な敵と決まった訳ではないからな」


 うん、あの幻術師、スフマの狙いは……


「あくまで僕らの、特にアンジュちゃんの能力を見に来ただけでしょうね」

「試していたという訳か」

「本気だったらもっとスムーズに、スマートにやれる相手です、あのスフマとかいう幻術師は」


 アンジュちゃんを攻撃した時もまったく初動を悟らせなかった、

 さすがに経験を、場数を踏んでいるのだろう、もし本気だったら……


「あの、ニィナ様、デレス様」

「どうしたクラリス、何か気になる事でもあったのか?」

「はい、あの幻術師の狙い、なんとなくですが……」


 何か感じたのだろうか?

 少し溜めて、クラリスさんは目を見開いて言った!


「狙いは、アンジュちゃんそのものな気がします」


 ……だとしたら、奴とは、スフマとは長い戦いになりそうだ。


「たまったよー」


 わっ、起きたー!!

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