第189話 ヘレンさんと感動の再会
「ヘレンさん! 会いたかったです!!」
「私もですわ、御主人様ぁあ!!!」
うわ、ちょっとふざけ気味に抱きついてみたら、
それを遥かに超える力で抱きしめられた!
そもそもが身体の大きさ、ガタイが違い過ぎる!
(でも中がビキニアーマーのニィナさんと違って、やわらかぁい……)
いやもちろんニィナさんだってあの巨体で女性の柔らかさはあるけれど、
ヘレンさんの場合はローブの中の、ぬくもりまで感じ取る事ができて……良い匂いだぁ。
「ごめんねヘレンさん、大丈夫だった?」
「はい、マスマ町の冒険者ギルドでは大変良くしていただいて」
「あ、それはまあ多分、うん、まあいいや」
ガッツリ監視されてたんだろうなあ。
「ヘレン、そのあたりで離してやれ、デレスが可哀想だ」
「はっ! デレス様、申し訳ありません! 苦しかったでしょうか?」
「ううん、平気って言うか……うん、苦しくは、ない、ちょっと恥ずかしかったけど」
ニィナさんが止めるのもよくわかる、
セクシーパンサーローブの中はほぼ黒い下着だ、
いや箱部屋、ムームー帝国へ来る途中のドリームプレハブの中で見たけれど、
黒い下着ではない黒い透け気味の服の中に黒い下着をつけているという、
なんだかよくわからない複雑な感じで、黒いローブの中に黒く薄い服を着てその中に黒い下着を着ていると。
(いやこれ夜の街でローブを開いたら完全に痴女だよ)
などと見惚れているとニィナさんが僕を引き寄せる。
「さあ、早く終わらせよう」
「は、はい」
(これニィナさん嫉妬してるな)
待機中、ふたりっきりだったから結構いちゃついてた、
結局ダンジョン奥地に設置した魔方陣はふたつで、
ひとつはマスマ町と結ぶ用、もうひとつはギルドで消された帝国外の国境村へ繋ぎ直した。
(そして僕とニィナさんは国境村で約四時間の待機、めっちゃ、いちゃついた)
そしてアンジュちゃんがクラリスさんヘレンさんと迎えに来て今に至ると。
……ついさっきまでニィナさんとラブラブしてたのにヘレンさんを見たとたん抱きついたんじゃ、
ニィナさんもそりゃあ嫉妬というか怒っても無理は無い、ふざけすぎた、ちょっと反省。
「とぼーよとぼーよ」
「あっうん、じゃあみんなで魔方陣へ」
ちなみにこのシュッコ側の、国境村の魔方陣はまったく汚される事なく健在だ、
ムームー帝国側から兵隊が来てちょっと見せろと中に入って消されやしてないか心配したが、
さすがに他国に対し何かするといかに帝国でも不味いのだろう、
そこは安心したが一応、シュッコ冒険者ギルド手配の警備は常時居る、そんなに多くはないけれど。
「とうちゃーく」
薄暗い、僕らが来るまで数十年は立ち入りが無かったであろうダンジョン奥の安全地帯、
よく見ると壁に222って描かれていたから222階、丁度三分の二の地点か。
(あ、奥に居た居た、サキュバス七体に護られている)
上級になったからかサモンのサキュバスはヘレンさんと別行動を取れるようになった、
とはいえまだまだ限定的らしいから『この場でこの人達を護れ』くらいの命令らしいけれど。
「おお、心細かったぞ」
11名の優先脱出者、彼らも彼らで早く出たいはず。
「回復するから時間かかるー」
「あ、そうか、皆さんひとりひとりの移動になります、
幻術師様の魔力回復に時間がかかるのでお待ちください」
「はよう、はよう」
ひとりだけやたら急いでるお爺さん、
トイレならあっちですよって言いたくなる、
いやあるんだここトイレ、すっごい簡易的だけど。
「親愛の指輪を使おう」
ニィナさんがまずはアンジュちゃんの指輪と……あれ?
「あーまちがえたー」
アンジュちゃんがはめてる妖精の指輪の方とぐりぐりしちゃった、アンジュちゃんかわいい。
(準魔王までの間の狩りでレベル上がってるといいな)
あらためて魔力をアンジュちゃんにみんなで渡す、
ニィナさん、クラリスさん、僕、最後はヘレンさん……
「それにしてもヘレンさん、よく親愛の指輪を渡して行ってくれましたね」
「なぜでしょう、直感と言うか予感というか、なぜそうしたかは今でも不思議です」
「サモナーにそんな隠しスキルがあったのかもしれませんね」
「いや幸運値が働いたのだろう、だとすれば皆のおかげだな」
「ニィナさん……」
まだちょっと嫉妬してるのかな、
まあいいや、圧し潰されそうな愛の重さは今に始まった事じゃない。
「じゃ、もうちょいー」
しばらく待たせるが、今度は11名の中のご婦人がそわそわしはじめた。
「あ、あのここ、怖いんですけれど」
「あー外は見ないで下さい、確かにダンジョンの深い所ではありますが、
結界は張りなおして強くしてありますから」
設置されていた結界魔石はまだまだ持ちそうだったが、
念のためにアンジュちゃんクラリスさんで魔方陣ついでに作り直した、
シロアリ女王の部屋を開けた事で敵も活発化してるからね。
(現に巨大羽アリが入れなくて見えない壁にぶつかりまくってる)
アンジュちゃんの魔力が溜まるのを待つ、
四時間の移動中に魔力飴を作れなかったのかな? とも思ったが、
隠匿魔法でずっと姿を消していたなら仕方が無い、満席なら浮いてただろうし。
(魔力が完全に満タンでないと作れないらしいからね)
「それにしてもここ、椅子とかないのだな」
「古いたき火の跡がありますが、それを燃やしたのが椅子や机の残骸っぽいです」
「ところで帰る順番は決まっているのか?」
「わ、わしを先に」「私も」「俺も早めに」「とにかくすぐ出たい!!」
んもう、気持ちはわかるけど黄金勇者ホゥクラさんを見習って欲しいよ、
とはいえ冒険者は居なさそうだけれども、ここへ何しに来た人なんだろう?
(ケースバイケースだろうから、いちいち聞いても仕方ないか)
「よし、では順番を決めよう」
とニィナさんが取りまとめていると……
「たまったよー」
「では見ていて気の毒だったご老人、貴殿が最初なのは皆、異論は無い」
「ありがたやありがたや」
こうして真夜中の移送大作戦が始まったのだった。
「ヘレン、我々不在の時間、サキュバスでの警戒を怠るなよ」
(いや、さすがにこんな所まで来る奴は……)
と、マスマ町から来た方の魔方陣から人が出てきた!!
「ほほう、ここかのう」
いたあああああああああああああ!!!
「誰だお前は」
「ほっほっほっ、この国の幻術師じゃよ」
(新たな強敵現る?!)