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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第五章 黄金勇者と謎のアサシン
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第188話 ステータス矛盾と残りの救出作戦

(ああ、なんて神々しいんだ……)


 真っ白な巨体に見とれる僕、

 いや、これは見惚れていると言って良い、

 こんな美しい姿をずっと、すっと眺めていたい。


「デレス、危ない!」


 僕の方を見た巨大シロアリ女王が大量の酸を吐く!


「アンジュ、飛べ!」

「あいっ!!」


 その瞬間、僕らは転移した!


「……はっ?! ここは」

「デレス、無事か!!」


 ぎゅうううっと抱きしめてくるニィナさん!

 ち、窒息する、た、助けて、まだここはベッドの上じゃなーい!!


「ニィナ様、そのあたりで」

「そ、そうか、すまない」

「い、いえっ、はぁ、はぁ」


 クラリスさんのナイスアシストで離してもらえた、

 僕は気持ちを落ち着けると水の音が聞こえてくる、

 ここは洞窟内、いやこのダンジョンの深い方の安全地帯だ。


「みりょー、だよ」

「アンジュちゃん、魅了?!」

「あの、じゅんまおー、みりょーを使うスキルだって、ぜったいみりょー」


 そうか魅了にかかっていたのか、危ない危ない。

 薄暗い洞窟をライト魔法で明るくしてくれるクラリスさん、

 アンジュちゃんはこの避難所に興味を持ったのかあちこち見回りはじめた、

 ニィナさんは何か考え込んでいる。


「……おかしいな、デレス、デレスは状態異常にかなり強くなっているはずだが」

「ええ、でもまだレベル85程度では相手の方が上なんですかね」

「デレス様、『ステータス矛盾』というのを御存じでしょうか」

「えっ、何それ」


 クラリス先生の授業が始まりそうだ。


「まず、高レベルな『状態異常絶対無効』というスキルを持っていたとします」

「はいはい」

「でもそれに対し相手が、例えば『強制睡眠絶対有効』というスキルを持って使ってきたとしましょう」

「絶対と絶対だね、そうなるとレベルが高い方が勝つんじゃ」

「そうですね、ですから『絶対』と言いながら『絶対』ではない事もある、これが『ステータス矛盾』と呼ばれるものです」


 100%も100%じゃないってことか、おっそろしい。


「ええっと、そこのふわふわ幻術師さん」

「名前で呼んでよー」

「アンジュ大先生マスター、こちらへ」


 もうこの国でマスター呼びしなくてもバレバレっぽいけどな、

 特に兵隊やギルド職員には。


「なーにー、デレス勇者ポーター」

「ええっと、なんかやりにくいな、まあいいか、あの『ホーリージャイアントターマイト』ってレベルいくつだった?」

「んーそこまで見る暇なかった、でもデレス君は、みりょーってなってたよー」

「ありがとう、そうか、あっという間だったからね」

「私達が平気だったという事は男性にのみ有効の魅了だったのでしょうか」


 相手は女王アリだからね、

 そういえばヴィクトリアサキュバスの時は下半身が大変なことになったけれど、

 さすがにアリ相手に欲情はしなかったみたいだ、良かった、そこまで変態じゃなかった。


「うーん、アンジュちゃんレベルだけ見てきて、っていうには危険な敵ですよね」

「そうだな、ボス部屋の中へ転移するのではなく、あらためて扉の前まで行く必要があるくらいだ」

「ニィナ様、デレス様、あまり考えたくはありませんが犠牲のリスクがあるレベルの相手ですわ」


 うん、あの強そうな感じは今のこの四人じゃきつい。


「ならヘレンさんを呼びましょう、犠牲が出てもサキュバスだったら最悪、育て直せば良いだけですから」


 召喚魔法、ある意味造り出した魔物だから愛着はあるけれど、

 いざとなったら囮とかにしても仕方が無い、せっかくここまで育てたけれども。


「アンジュ、ではまずカヤヤ村まで瞬間移動だ、空中なら問題あるまい」

「あいあい」


 ニィナさんに言われてアンジュちゃんがみんなと一緒に転移、

 ずいぶん高い空中だ、夕日が綺麗、そして眼下にカヤヤ村が見える。


「ええっと、隣の町に待機してもらっているんですよね」

「そうだ、片道四時間のマスマとかいう所だったな」

「はい、集団移動のとき見つからないようにと大きい方の隠匿カーテンを渡していますが、どうなっているのでしょうか」

「……皆で動くと目立つな、とにかく一旦、冒険者ギルドへ戻ろう」


 戻ると勇者専用受付でピンチェさんが頬杖ついて待っていてくれていた!


「おかえりなさい! お早いお戻りですね」

「ああ、早速だが残念な報せがある」


 と、三人分の冒険者カードを渡す。


「やはり、そうでしたか」

「詳しい話は奥でしたい」

「そうですね、では中へ」


 外で誰か聞いていないか確認しつつ、

 人払いされたギルマスルームもとい所長室で出来事を話す。


「……という事でボスは女王アリだった」

「なるほど、その情報は今後の討伐に役に立ちますね」

「ああ、だがまだこの情報は出さないで欲しい、魔石やアイテムの買い取りもまだ良い」

「それは助かります、その手の買い取りは週に一度いらっしゃる業者に任せるので」


 どれだけ小さいのこの冒険者ギルド!


「それでだ、ピンチェだけに告げるが、今夜、残りの11名を迎えに行く」

「……マスマ町ですね、本日の最終便があと四十分程で出ますが」

「転移魔方陣はアンジュとクラリスが揃わないと作れない、

 アンジュは隠ぺい魔法で、クラリスは……変装でもしようか」


 頷くクラリスさん、

 さすがに町に入る時までは身分証明や鑑定水晶は使われないだろう。


「それでこちら側の転移魔方陣は」

「今から大急ぎで作る、場所は無いか」

「そうですね、あと一か所、大きな空家が……」


 地図を描いてもらう。


「わかった、では早速行ってくる」

「はい、お気をつけて」


 そうして向かった空家を覗くと……


(あー、駄目だ、こっちに来た帝都の衛兵とやらが出入りしている!)


 ピンチェさんに話を通さず借りたのだろうか、

 こっちの打ちそうな手をすでに塞がれていて怖い。


「アンジュ、仕方ない、あの場所へ戻ろう」

「あー……あー! あい」


 と、転移した先はまたあの縦穴ダンジョンの、深い方の安全地帯だ。


「ここなら魔方陣描き放題ですね」

「私とデレスも手伝う、急いでまずはひとつ描くぞ」


 こうして急いでヘレンさんの居る、マスマ町と繋ぐ予定の魔方陣を作り始めたのだった。

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