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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第五章 黄金勇者と謎のアサシン
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第184話 ムームー帝国と魔法防御壁

「なるほど、シャマニース大陸ってそんな所なんですか」

「そうだ、出身の俺が言うんだから間違いない、

 あそこで生まれ育った女の三分の一は、万年生理痛みたいな奴ばっかりだ」

「でも、それなら他の三分の二は普通なんですよね?」

「いいや、十二歳のくせに身体が熟成しきってて大人にしか見えない少女や、

 可愛い顔してハトを生きたまま、頭からかぶりつく女とかヤバいのばっかりだ」

「そ、それはさすが人外魔境と呼ばれるだけありますね」


 と会話しているのは依頼で一刻も早くここムームー帝国を出なければいけない、

 シャマニース大陸の最大都市ムンサンが生まれ故郷だというおじさん勇者だ。


「魔力たまったよー」


 トコトコと歩いてやってきたアンジュちゃん。


「だそうです、では行きましょうか」

「おうよ、やっと出られらぁ、こんな帝国、二度と来るもんかってんだ」


 簡易冒険者ギルド受付前のソファーから大きな身体を起こし、

 アンジュちゃんと僕と一緒に物置部屋へと入る、

 中は床いっぱいの大きな魔方陣が描かれていて、その上でニィナさんとクラリスさんがすでに待っていた。


「よし、では行こうか、アンジュ」

「あーい」


 アンジュちゃんが杖をかざすと転移魔法が発動し、

 国境前の村まで戻る、魔方陣が描かれた空家から出ると臨時の入国受付だ。


「冒険者カードを」

「おうよ」


 衛兵に金色の冒険者カードを見せるおじさん勇者、

 僕やニィナさんが貰ったばかりの上級勇者の証だ。


「確認が終了しました」

「よし、これで依頼主の所までやっと行けらぁ」


 背伸びした後、屈んでまで僕の両手を握ってくれる。


「あらためて礼を言う、俺の名はホゥクラ、またいつか会ったら借りを返させてくれ」

「はい、でもどちらへ」

「今度の依頼が終わったらモバーマス大陸も全制覇だ、今度はミリシタン大陸へ行くさ」

「あ、僕の故郷です、でもあそこ勇者の囲い込みが」

「なーに何とかなるさ、今回も何とかなったしな! じゃあな!」


 かっこよく去って行く、

 ああいうのを見るとソロ冒険者も気ままで良いなあって思ってしまう。


「さあアンジュ」

「あいあい」


 ニィナさんに言われて『親愛の指輪』を擦りつけあうアンジュちゃん、

 ヘレンさんと僕がつけていた、魔力を少しだけ受け渡しできるアイテムで、

 一回の転移だけで魔力が空になってしまったアンジュちゃんを出来るだけ回復させようとみんなで使う。


「次はわたくしですね」


 ニィナさんから指輪を受け取ってアンジュちゃんと擦り合わせ、

 次は僕……これでそこそこ魔力が戻った状態だ。


「じゃー、後は待つねー」


 アンジュちゃんは空家の軒下に座って魔力回復を待つ。

 まったく予想外だった、まさか、まさかこんなに手間がかかる事になるなんて……


「ニィナさん、じれったいですね」

「ああ、ひとりづつなうえ、こうも時間がかかるとはな」


 クラリスさんがアイテム袋から高級ポーション『ハイエルフの涙』を取り出した。


「先ほどの方が六人目でしたので、区切りでこれを使ってみても」

「最初に決めたはずだ、高価な魔力回復アイテムは使わないと」

「ですね、僕もニィナさんの意見に賛成です」


 別に金銭的にはまったく困ってはいないけど、

 依頼のたびにそんなの使っていたんじゃ、

 アイツに頼めば勝手に高級なポーション使ってくれるぞ、みたいな話が回ると困る、

 依頼者がいくらその分の代金払うっていっても必ず入手できる物とは限らないからね、

 最初にそういった物を貰えているなら話は別だけれど。


「それにしても解せぬな」

「ええ、本当でしたね、ムームー帝国が入るのは簡単でも出るのは難しいって」

「私のせいもありますわ、女神教の方々を解放していただいたばっかりに」

「女神教のせいだったら僕もあやまるよー」

「アンジュちゃんは偉いね」


 と、頭をナデナデしてあげる。


「えへへへへー」


 何の事かというと、前回クラリスさんだけが女神教の人達とムームー帝国へ交渉に行った際、

 教徒の賢者パーティー解放と引き換えに僕らが近いうちにムームー帝国へ行って

 魔王討伐に協力する、という条件が通ったからだが、さらにもう六人解放をお願いします、は無理だろう。


(だったらとっとと黙って転移させちゃえ、ってなったんだけれども……)


 時間を少し遡ると、ドラゴン四頭にくくりつけられた箱部屋でムームー帝国入国自体はスムーズだった、

 でも国境をまたいだとたん降ろされ、ドラゴンと運転テイマーの皆さんはドリームプレハブとかいう箱ごとシュッコへ追い返された、

 そこから国境を超えたすぐ先のカヤヤ村までやってきたのだが、ここまではまだ予定通りだった。


「アンジュちゃん、どう?」

「んー、もうちょっとー」


 そう、先にカヤヤ村に集まってもらっていた最優先の六人を一気に国境外まで転移しようとしたが、

 どういう訳か瞬間移動ができない、ムームー帝国内であればできるのだが国境の壁を超える事ができなかった、

 ならばとカヤヤ村の簡易冒険者ギルドにある倉庫にシュッコのニィナ城までの魔方陣を描いたものの、これまた無理。


(強力な防御魔法壁が張られているのでは、と推測に至ったんだった)



 そこでアンジュちゃんがまず隠ぺい魔法と一人用隠ぺいカーテンの合わせ技で

 こっそり国境の壁を乗り超えてシュッコ側へ戻り、

 アンジュちゃんひとりじゃ無理なのでクラリスさんが


「ちょっと忘れ物しました、ちょっとだけ、ちょっと数時間だけ戻ります」


 と金貨を渡しつつ泣き落とし、ひとりなら、と出てシュッコ側、国境手前の村で一緒に転移魔方陣を作り、

 アンジュちゃんは隠ぺい魔法で、クラリスさんはありがとうございますありがとうございますで帝国に戻った、

 そしてカヤヤ村の今度は物置部屋に国境前と繋がる転移魔方陣を作り、瞬間移動しようとしたが……


(色々試したら、パーティーを組んだうえで、僕ニィナさんクラリスさんアンジュちゃんとあとひとりなら転移できたんだった)


 でも一回の転移でアンジュちゃんの魔力がゼロになった、

 前もって覚えたての魔法『マジカルキャンディ』で魔力回復飴を五個作ってあったものの、

 二往復半で使い切ってしまい、後はヘレンさんの魔力受け渡し指輪で魔力を集めつつ足りない分は自然回復と。


「ホゥクラさん『俺は最後でいい』って、かっこよかったですよね」

「そうだな、なんだデレス、惚れたのか?」

「惚れたというか、憧れるというか」

「なら私はどうだ」

「ニィナさんには抱かれたいです」


 そんな会話をしていたらアンジュちゃんが僕らの前に立った。


「溜まったよー」

「よし、では戻ろう」


 帰りも帰りでひとり減ったのに転移で魔力がゼロになるアンジュちゃん、

 いったいどういう仕組みなんだろう、と名も知らぬシュッコ側の国境村から

 ムームー帝国のカヤヤ村へ戻ると……


「そこまでです」


 魔方陣のまわりをムームー帝国の兵士に取り囲まれていた!


「なんだ、ここは仮設の簡易とはいえ冒険者ギルドの中だぞ」


 ニィナさんが凄むが兵士は引かない!

 さっき喋った、この中で一番偉い感じの装備をした兵士さんがまた口を開く。


「ムームー帝国における冒険者ギルド、全体統括のサブギルドマスターであらせられる、

 ストレーナ様からの要請であります、大人しく捕まっていただきましょう」


 例のお局様かあああああ!!!


(他の優先11人を護ってくれているヘレンさん、大丈夫かなぁ……?)

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