第181話 ニィナスターライツNo.1が決定しました
「うわあああ7勝13敗、ついに負け越した!!」
「わぁいわぁいわぁい!!!」
空中で舞って大喜びのアンジュちゃん!
いや前半戦、瞬間移動なしで4勝6敗だった時点で嫌な予感はした、
アンジュちゃんおそらく学校の幻術師訓練で身のこなし方を相当鍛えたのだろう。
(おそらく一緒に組んでるアサシンのおかげか)
力を使い果たしたというか精神的に参って、
僕は仰向けで大の字に倒れる、ついに敗北の味を知ってしまった……
「くそう僕の負けだ、好きにしろい!」
真上に来て見下ろすアンジュちゃん。
「ケケケ、コレデオマエハボクノモノダ、コノカラダデ、
ユウシャノスベテノマリョクト、オマエノココロヲスイツクシテヤロウ」
「アンジュちゃん?! そんな台詞どこで覚えたの?!?!」
「シューサーくん、だ、よ、わぁいわぁい」
あんのエロガキアサシンめえええええ!!!
「ふむ、それで魔の女幻術師に快楽洗脳されたデレスを、
婚約者である女勇者の私が取り戻す物語か、悪くは無いな」
「ニィナさんまで成人未満禁止の小説に乗っからないで!!」
審判のヘレンさんに起こされて、
クラリスさんに回復魔法をかけてもらった。
「ありがとう……さあ、最後はヘレンさんです」
「わ、私は」
「レベル六十でしょう、自信持って下さい、前半はティムモンスター無しで」
審判はニィナさんか、
ヘレンさんは鞭を手にすると表情が変わる。
「お手合わせ、お願いします」
「うん、本気でね」
悪の女サモナーに戻った感じ、
セクシーパンサーローブの黒さがそれに磨きをかけている!
(やばい、しばかれたい……)
被虐の性癖を抑え込んでプライドソードを握り構える、
ニィナさんが互いの動きが止まったのを確認して……
「はじめ!!」
そして前半戦の結果は!
「ふう、アンジュちゃんに比べるとやっぱり遅すぎですね」
「ううううう、わかってはいましたが、全敗でした……」
単独だとこんなものだよねサモナーって。
「あ、ヘレンさんお約束をお願いします」
片膝着いてうつむくヘレンさん。
「くっ、殺しなさい! 辱めを受けながら殺されるのも、私がしてきた事を考えれば仕方が無いわ!」
「あ、ちょっと違うけどこれはこれで」
「呪ってやる、お前を呪いながら死んでやるわっ!!」
意外なシチュエーションにちょっと興奮する。
「ありがとうございます、では後半戦はサモンを」
「……はい、かしこまりました」
サキュバス七体を出す。
「デレスいいのか、いきなり全部出させて」
「そうですね、まあ後半は全力でぶつかってきてもらいましょう」
「ヘレン、ちゃんとサモンに手加減はさせられるな?」
「寸止めや形だけで終わらせるという意味であれば造作もありません」
「よし、では始めよう」
審判ニィナさんの気遣いのあと、
一対八の決闘となる後半戦の合図が、今……!
「はじめ!!」
結果……
「はあ、はぁ、よし2勝! 合せて12勝8敗! どうだあっ!」
「やはり御主人様はお強いです、恐れ入れました」
「デレス、2勝でも凄いぞ、あの力押しを掻い潜るのは並の勇者ではできない」
ニィナさんのフォローは嬉しいけれど、
どうせ身体が小さいからですよ、へっ!
「でもやっぱり後半だけを見たら負けですよ、ですから……」
今度は僕が片膝ついて剣を地面に刺すと、
ニィナさんが何やら耳打ちする、
それを受けてヘレンさんがサキュバスを後ろに従え……
「オーッホッホッホ、哀れな勇者ね、いいわ気に入ったわ、
これからは私のサキュバス達の餌になりなさい、もう勇者としての正義だなんて思い出せなくなるくらい、
身も心も折れるまで快感で腑抜けにしてあげるわ、殺された方がマシだったなんて事実を認識できなくなる程にね、
そして最後の仕上げはこの私が自ら……オーッホッホッホッホ、ホーッホッホッホ……げほげほっ」
あ、慣れない高笑いで咳き込んだ!
でもめっちゃ悪の女サモナーだ、もうこれ、このままの流れで最後まで楽しみたいくらいだよ!!
「さてヘレン、渡す物がある」
「はいニィナ様……こ、これは!」
「ヘレンがかつてリューイに渡した『親愛の指輪』だ、面接のときに返すように頼まれた」
名前でわかる、おそらくヘレンさんが一方的に渡したであろう揃いの指輪、その片方だ。
「その、こ、これを今更」
「真に渡すべき人がいるだろう」
「よ、よろしいのでしょうか……?!」
あらためて僕を見るヘレンさん、
うん、僕は中古とか気にしない、
心が籠っているのであれば、それはもう、僕のものだ。
「御主人様、デレス様」
「はい」
僕は立ち上がってヘレンさんの正面に立つ、
やはり背の高さがあるな、と思ったら膝をついてくれた。
「これを、受け取っていただけますでしょうか」
「うん、喜んで」
「嬉しい……」
僕にとって四つ目の指輪、それをはめてくれる……
うん、これでまた僕の婚約者が四人になった、という事で良いのかな、奴隷だけれど。
「ありがとう、ヘレンさん」
「この身、生涯尽くしますわ、私はもう、デレス様の、愛の奴隷です」
高揚し紅くなった表情、
目が潤んでいて愛する情熱が伝わってくる。
(出会った頃と真逆ってくらい大違いだ、うん、嬉しい)
ゆっくりと口付けを交わす……
しばらくし、もう良いだろうというタイミングでニィナさんが咳払いをした。
「では行こうか、ムームー帝国からの救出を待つ者が待っている」
「あっはい、では行きましょう」
「アンジュちゃん、ドラゴン場まで飛べますか?」
クラリスさんの問いに首をかしげた。
「どこだっけー」
(あ、そっか行った事ないのか)
僕はそこで提案する。
「どうせこんな時間です、そこまで遠くないですし、歩いて行きましょう」
「そ、そうか、デレスがそう言うなら」
「道はあちらの方ですわね」
「じゃあ道の入り口まで飛ぶよー」
「あ、それではサキュバスを仕舞いますわ」
亜空間に続々入れるヘレンさん。
「待ってヘレンさん!」
「はい? 御主人様いかがなさいましたか」
「その、変な話だけれど、三体だけ残して」「はぁ」
こうして紅いのと青白いのと金色のだけ残して連れ、
みんなでドラゴン場へ向かうのであった。
「それにしても、このパーティーで一番強いのが、ついにアンジュちゃんになっちゃったなあ」
「えへへへへへ」