第180話 魔王のドロップと恒例のお約束
「それじゃあ行ってきます」
みんなに見送られてまずは西冒険者ギルドへ瞬間移動、
この時間は人が少ないってこともあるが丁寧にサブギルマスルームへ案内された。
「おーう、ドラゴン便の準備は整ったぜい」
「助かる、それだけ急いでいるのだな」
「中型は用意できなかったので小型四匹だ、まあ見ればわっかーる」
個別に乗るのかな?
「ドラゴン場で良いのだな」
「だぜい、あとビーストシュータの素材だが、魔石以外のめぼしい物はみっつだ」
ガネスさんがアイテムボックスに手を突っ込む、
そして最初に出てきたものにアンジュちゃんが感嘆の声を上げた!
「あああああ!!!」
「特大の美味しい種だ、さぞかし美味しいだろうぜい」
うん、確かに『美味しい種(特大)』と出ている、
でもこれってビーストシュータが盛大に燃えたから美味しい種になったのであって、
焼かずに倒してたらきっと凄く能力が上がる種だったんだろうな、と思うと少し惜しい。
「たべたいたべたいたべたいたべたい」
「アンジュ落ち着け」
「はいはいアンジュちゃん、種は逃げませんからねー」
一応アイテムボックスへしまうニィナさんと
アンジュちゃんを抑えるクラリスさん、あの大きさなら割ってみんなで食べたいな。
「続いてこれだ、黒焦げのしっぽだ」
香ばしい匂いがしてくる、
あれだ、これは薬の材料になりそうな感じ。
「ふむ、アンジュ、鑑定してくれ」
「あい……『ビーストシュータの尻尾、魔力全回復薬の材料になる貴重なアイテム、粉にしてポーションに混ぜても使える』だって」
「なるほど、この大きさなら百本分は造れそうだな」
アンジュちゃんの魔力キャンディと同じようなものか、
だとしたらオークションで売っても良いな。
「最後はこれだ」
「甲羅か」
「ああ、焦げは全部落とした、綺麗に磨いてあるぜい」
ビーストシュータの甲羅だ、でかくて分厚い、
盾にも鎧にも加工できそうだけれど、そこまでの技量がある鍛冶屋といえば……
いや駄目だ、真っ先にあのドワーフの姫が思い浮かぶ!
「デレス、この甲羅だが」
「オークションに出しますか!」
「……デレスがそう言うなら、そうするが」
ニィナさん盾使うタイプじゃないし。
いや、鎧にしてニィナさんに着せれば完璧な気も!
「ニィナさんは鎧にしたいですか?」
「ああ、完璧な硬さだ、熱もよほど長く炎を受けなければ通さないだろう」
「うーーーーん」
やはり僕の身体を犠牲にするしか……??
「良い情報があるぜい」
「あ、ガネスさん! どうぞどうぞ」
「ムームー帝国には鎧専門の職人が居るらしいぜい」
「本当ですか?!」
「ああ、どんな硬い素材でも大きささえあれば鎧にしてくれるらいいぜい、方法は秘密らしいがなー!」
それだー!!
「ニィナさん、その人にお願いしましょう」
「だな」
「詳しい話はあっちのギルドで聞いてくれーい」
これでもう用事は終わりかな。
「お、そうだ、上級勇者になったーんだったな、ニィナとデレスは冒険者カード更新だ」
「わざわざか」
「こっちの便宜上だ、交換してくれい」
金ピカなカードを渡してくれる、
なんだか凄いな、遠くからでも目立ちそうだ。
「それとデレスの上級勇者秘匿申請、もう登録されてるぜい」
「あ、ありがとうございます」
「東のミリシタン大陸にもすぐに伝わるだろう、ま、そそそそういうことだ」
僕とニィナさんは旧カードを渡す、
ちょっと愛着あったけど、前に進もう。
「では勇者ポーターとしての運搬作業、任せたぜーい」
「はいっ、行ってきます」
「ついでにこれをあちらの冒険者ギルドに頼まぁ」
分厚く大きな封筒だ、中は書類ぎっしりな感じ。
「重いですね」
「くれぐーれもあっちのサブギルマスには渡すなよ、ギルマスに直接手渡しで頼む」
「あーわかりました、行ってきます」
「そんじゃ、無事で帰ってきてくれい」
ガネスさんにしばしの別れを告げサブギルマス部屋を出る。
「では行こうか」
「ニィナさん、その前に……アンジュちゃん、ヘレンさんと最初に会った平原へ」
「あー……あいあい」
場所を思い出した感じのあと、みんなで転移。
「デレス、ここは」
「はい、僕が倍、強くなったらしいのでその確認も兼ねて」
「そうか、望む所だ」
ライト魔法であたりを照らし、
さあ、いざ尋常に勝負といこう。
「クラリス、審判を頼む」
「わかりましたわ」
まずはプリンセスソードを取り出して構えるニィナさん、
僕もプライドソードで対峙する、さあ、今の互いの実力差は……?!
「では……はじめ!!」
結果……
「すみませんニィナさん僕の19勝1敗ですね」
「はぁ、はぁ……おいデレス」
「なんですか、ベルセルクソードを突いて立ってるのがやっとじゃないですか」
「私の1勝、わっ、わざと、負けたなっ?!」
「いやとんでもない、10戦したあと武器を互いにベルセルクソードとアダマンタイトソードに換えたじゃないですか、
それでその、まだ組み合わせというか戦い方がしっくりこなくて、たまたまというか僕の普通の負けです」
ニィナさん相手に必死でやらない訳がない。
「くそっ、殺せ! いっそここで、この場で……」
「ふっふっふっふ、殺すより残酷な事をして、女として殺してやりますよ」
と例によってくっ殺寸劇に付き合う、
いかにも悪党っぽくニヒルに笑ってみせた僕。
「さあ、次は私ですわ」
「クラリスさん、それは」
「ふふ、クリスタルエンジェルスタッフですわ、これほどの杖ならば武器としても」
魔王クラスにしか使わないんじゃなかったのか……?!
「さあ、勝負ですわ」
(今度の審判はヘレンさんか、よし、油断せずに勝とう!)
結果……
「ううう、全敗ですわ」
「そりゃあ杖なら、ねえ」
でも結構危なかった。
「うううう、私の身体は女神様に捧げた身、そんな私の服を破こうだなんて!」
「いやいやそこまでする気は」
ていうかこれ、される気満々だな。
「次はボク、だよ」
闇のオーラをまとったアンジュちゃん登場である。
「ええっと、まずは転移無しで」
「あーい」
(……即死攻撃とか、さすがにしないよね?!)
結果はいかに!