第176話 僕のレベルアップとみんなのご褒美
「勇者デレス様」
「は、はいっ」
「おめでとうございます、勇者レベル八十五となっております!!」
おおー、とリアクションしてみる!
いや凄い、自分で言うのも何だけど、十九歳でレベル八十五は凄まじい!
「勇者スキル、パーフェクトパフォーマーを身に着けました、
これは常時、御自分のみですが全ての能力が倍になります」
「えっ、すでに似たような能力があったり似たようなアイテムをつけていたら」
「それも含めて倍になります、ええっとこれは本来、レベル百以上の勇者が覚えるようですが」
なんだか僕の力が人外じみてきたぞ。
「全てって、全てですか」
「はい、何もかも全てです!」
という事はパーティー組んだ時の、
経験値の入る相乗効果も倍になるのかも?
でも僕だけって言ってたよな、いや、
僕が味方を補助する能力が倍になるって事は、
他のみんなも……これは後で試した方が良いな。
「デレス、ちょーいといいかーい?」
「あ、ガネスさん! 何でしょうか」
「なーに、かーるく忠告さ、かーるくな」
なんだろう、軽いと言いつつ顔は意外とシリアスだ。
「デレス、お前は強い、その齢でレベル八十五、
そしておそらく遠くない未来、百まで行くだろぜい」
「そ、そうですね、七大魔王の残りのうち三匹は倒せばそうなりますね」
「だがなー、力が強い冒険者が一番狙われるのは何だかわかるか?」
うーん、あ、そうか!
「ハニートラップ!」
「おいおい随分と限定するじゃねーか」
「す、すみません、つい」
「まあ合ってるな、心だ、コ・コ・ロ」
自分の胸を握り拳で叩くガネスさん、
つまりハートってことか。
「心理面を狙われると」
「そうだ、物理的な力や魔力で敵わないとなれば心を砕きに来る」
「なんとなくわかります、なんとなくですが」
僕だって一度は婚約者四人を全員寝取られて心砕かれた。
「とにかく心を鍛えろ、心をしっかり持て、そして……」
僕のパーティーメンバーを見回すガネスさん。
「愛する者に、しかり心を護ってもらえ、いいな!」
「は、はいっ」
「俺からは以上だぜえい」
ワイルドな忠告に感謝、
心を護ってもらう、か。
「あの、デレス様」
「は、はいなんでしょう受付嬢さん」
まだ何かあるのかな?
「すみません、続いてのレベルアップですが」
「あっ! 誰のでしょうか」
そういえば来てない呼んでないけど、
姫姉妹と某娼婦さんもレベル上がってるんだよな、それかな?
「ポーターのデレス様です」
「僕かー!」
「はい、デレス様は勇者ポーターとして、ポーターレベル五十一になっております!」
わーお。
「あ、ありがとうございます」
「ではポーターレベル五十の記念品を贈ります」
何かな? 何かな?
デスデリカ人形五十体ならその場でぶち撒ける覚悟はあるぞ!
「ポーションが一本入る、ケミカルシッキニャン人形です!」
赤みがかった髪の毛が長い、やぼったい感じの女の子の人形だ!
「ええっとこれは」
「んと、ポーションを一本、装着する事ができます!」
「あ、あとは」
「なんと、ポーションを装着すると……!!」
『にゃは、実験開始~♪』
しゃ、しゃ、しゃべったあああああああああ!!
「じ、実験って、何をしてるんですか?!」
「何もしていません!」
「へ?」
「それだけです!」
「そ、それだけですか」
なんだこりゃあ。
「なお、まずかったら人形の名前は変わるそうです」
「はあ、何がどう」
「さあ? マニュアルにそう書いてあったので」
どうせ『上位の存在』とかいう神様だろーーー!!
「と、いう事でお受け取り下さい、あ、ポーションは返してもらいますね」
「は、はあ」
「ということで、最後の最後に嬉しいお知らせが!」
うん、確かにこの人形は嬉しくない。
「ニィナスターライツの皆さんは、このたび……」
「おおっと、ここは俺に言わせてくれーい」
満を持してのガネスさん登場、
いやずっといたけれども!!
「お前さんたちニィナスターライツは、文句なし、Sクラス昇格だ!」
「本当か?!」
さすがのニィナさんも少し興奮気味だ!
「ああ、あとデレス、お前さんも個人としてSクラス昇格だ」
「うっわ、本当ですか、ありがとうございます!!」
「ということで褒美がある、チアー、案内してやってくれやーい」
「かーしこまりました! それ、ではっ、東地区へ、行きまあああああああっす!!」
(な、何が貰えるんだろう?ワクワク、ワクワク!!)
まずは東地区へと通じる地下三階の秘密通路へ、
案内されるがまま、こんな所にこんなのあったんだっていう道を進む、
あきらかに隠し扉と隠し通路だった、途中で上に登るハシゴがいくつかあったので
どっかの家か何かに繋がっているのだろう、寝間着のチアーさんもおそらくここから来たのか。
「この上、多分、あそこだよー」
「え、アンジュちゃん、あそこって?」
「地下のお店、オージサーンだっけ」
「オーバジーンです(素で)」
「あっ、はい、ごめんなさい」
やがて到着したのは魔導昇降機だ、
今度は昇りか、とみんな乗り込んでぐんぐんぐんぐん上がっていくと……!!
「到着でえええっす!」
「え、こ、ここは?!」
「東Sクラス地区、山頂エリアでええええっすえっすえっすえっすえっす……」
セルフエコーきたーーーーー!!
「うわ、本当だあ!」
「そして、さささ、こちらへこちらへ」
なんだかお城の一角みたいな所に隠されていた昇降機の出入り口から少し歩くと、
大きな湖が見え、そのほとりに四階建ての別のお城が見えた、
僕らがいま宿泊している貴族の屋敷風の三倍くらいは大きいかな。
「プレゼントは、あの家でええええっす!!」
「おい待てチアー、家と言ったな、どう見てもお城じゃないか」
「お城がハウスにてございまああああっす!!」
(い、いいんだろうか、とりあえず中を見させてもらおう)