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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第169話 早めに倒そうとは言ってたけれども

「で、アンジュちゃん、デートの最終目的地がここでいいの?」

「魔王見物だよー」


 地下三百階、物々しい扉には魔石をはめこむ穴がある、

 ここに今まで倒してきた準魔王の魔石のうちひとつをはめこめば扉は開き、

 ついにここシュッコのボス、七大魔王のうち一匹、ビーストシュータとご対面だ。


(ニィナさん、無責任に言ってたなあ『面白そうだから行ってこい』だなんて)


 ベルベットデビルロッドを握りしめ、背中に死神の鎌を背負ったアンジュちゃん、

 いざ戦闘となればこれが宙を舞い敵に向かって攻撃を始める、その威力は凄まじい。


「ひょっとして倒す気でいる?」

「できたらー」

「いやいや、一度入って中を把握できればもう、それでいいから」


 アンジュちゃんの転移、瞬間移動はどこにでも入れるから

 無理をすれば今の段階でもこの扉の向こうへ行くことはできる、多分。

 だが先に何があるか状況を把握してからでなければ危なくてしょうがない。


(飛んだ先が敵の胃袋の中、とか飛んだら剣が突き刺さりました、とかだと死ぬもんな)


 冒険者ギルドの転移とかいちいち屋根の上に飛んでからにするのも、

 人にぶつからないようにするためだ、経験ないけど下手すると通行人と合体まであるかも、

 いや多分、踏んじゃうとか弾き飛ばしちゃう程度で済むとは思うけれど。


「じゃ、入れてー」

「うん、一個でいいんだよね、んしょ」


 魔石をはめるとゴゴゴゴゴと扉が開く、

 さあ、二百年倒されていないという七大魔王のうち一匹、

 ビーストシュータが姿をあらわ……さない?!


「あれ? 誰もいない」


 索敵にも引っかからない、

 床が大きなすり鉢状の部屋だが、

 底には何も無い、血の跡ならあるが、人型のも……


「後ろが閉まるよー」


 ゴゴゴと扉が閉まり閉じ込められた瞬間、

 敵の反応が現れた、上か! と見ると大きな穴が空いていてそこから……!!


 ゴロゴロゴロゴロ……


「な、何かが、何かが転がってくるううう!!」

「デレスくん、一緒に浮くよー」


 部屋の天井近くまで一緒に浮遊し隅にへばりつく、

 さあ、何が出てくるのか……と思っていると音が近づいてきてやがて……!!


 ゴロゴロゴロゴロゴロ……ズドーーーン!!


 穴から落ちてきた巨大な丸い塊!

 それがすり鉢状の床を走り回る!

 おそらく普通に来た冒険者をあれでひき殺すのだろう。


(だから人型の血の跡があったのか)


「ごぉらあ人間、どこだあああああ」


 あ、喋った!

 ビーストシュータって出てるからこいつに間違いない、

 よく見ると丸まるタイプのリザード型モンスターだ。


(あれって背中の装甲が硬くて厚いやつだ)


 だから何とか動きを止めて腹を出させないと倒せない、

 頭も硬いうえ丸まっているとき顔も隠してるから目つぶしとかもできなさそう、

 ただそれって相手もこっちがあまり見えてないはず、ていうか気付かれてなさそうだ。


(……!!)


 アンジュちゃんが何かひらめいたみたいで引っ張られる、

 ついていくとっていうかアンジュちゃんに操作されているんだけれど、

 ふわふわと連れて行かれるとそこはビーストシュータが出てきた穴だ。


「人間の匂いはするのに姿が見えねえなあ?!」


 上だって気付かれないうちに奥へ入る、

 ライトの魔法で照らすと回転する坂道になっているようだ。


(さっきゴロゴロうるさかったのは、これを転がってきてたからか)


 すいすい空中を進むと行きついた先は……ビーストシュータの巣だった。


「あ、意外と快適そう」

「上から餌が落ちてくるみたーい」


 餌って言うか二百九十九階の魔物か、

 何かの罠か落とし穴で落ちてくる、

 それをアンジュちゃんが浮かせた死神の鎌でスパッと切ってる。


「おっきい水飲み場もトイレもあるー」

「ボス部屋って、魔王部屋って生活環境こうなっているのか」


 色々興味深いがビーストシュータが戻ってきたみたいだ、

 ゴロゴロと音が近づいてきている、さすがに下りほどの大きさ、

 すなわち速度ではないけれど……ここで戦うのもいいけど今は時じゃないな。


「アンジュちゃん、帰ろう」

「あいあい」


 とまあ宿へ転移する、

 もう夕食の時間らしく良い匂いが漂う。


「お、デレスとアンジュ、デートはそうだった」

「はい、ビーストシュータをからかってきました」

「寝床みつけたよー」


 ニィナさんに見てきた状況を説明する、

 これでもうあのボス部屋には準魔王の魔石がなくても、

 アンジュちゃんさえ居れば入り放題、逃げ放題だ。


「なるほど、硬くて素早いか」

「はい、あれはよほどのスピードで対応しないといけないのと、なんとか丸まっている体勢を解かないと」

「ふむ、よくわかった、夕食を取りながら考えよう」


 こうしてシカーダちゃんのお母さんことセーラさんも作るのを手伝った

 宿の夕食をいただきながら、ビーストシュータ攻略について話し合った。


「……となると能力を下げる魔法がどのくらい効くかだな」

「でもニィナさん、相手は七大魔王ですよ、魔法防御もばっちりなんじゃ」

「そこを試してきて欲しかったがまあ仕方ないか」

「いますぐ行ってくるよー?」

「いや待てアンジュ、どうせ行くなら皆で行こう」


 また偵察かな、

 今度はさすがに姿を見られそう。


「では夕食後でしょうか」

「クラリス、もっと後にしよう、夜中だ」

「ええっ、今夜ですか?!」


 明日朝にはムームー帝国へ向けて飛ぶのに!


「ヘレン、良いな」

「はい、おかげ様で全てのサキュバスが高く飛べるようになっておりますから」


 アンジュちゃんが居ない時の空中要員として、

 ヘレンさんのサキュバスは妖精の指輪を使い全員レベルを上げておいたんだった、

 だから例の冒険者空中運搬もかなり捗ったとか。


「では食後、各自準備をして真夜中にビーストシュータを襲う、良いな」

「「「「はいっ」」」」


 って、偵察じゃなく、討伐?!?!?!

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