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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第168話 強制休養とこれからのおさらい

「ということで今日は一日中、お休みだ」

「わあい」


 ムームー帝国に飛び立つ前日、

 働かせ過ぎなアンジュちゃんを休ませる事になった、

 いくらほいほい飛べて瞬間移動もできて魔力が多くても、

 丸一日なにもしない日は必要だ、もちろんそれは僕らもだが。


「ではヘレン、頼んだぞ」

「はい、行ってまいります」


 とまあ例の七十七階、深い渓谷に突き出した安全地帯への冒険者搬送は、

 一気に人力いやサキュバス力で抱きかかえて飛んで運ばせる事になった、

 もちろん授業と関係ないからそれ相応の依頼料を貰う。


(ここでもサブギルマスのガネスさんに借りを作っちゃったな)


 もちろん勝手にアンジュちゃんを利用した学校が酷いのだが、

 面倒見てもらっているのも事実だし

 予定していた収入が一日減ると大変らしく泣きつかれた。


「結局、来週からは二時間コースにしてひとり金貨四枚取るらしいですね」

「アンジュの負担が減るのは良い事だ、なあクラリス」

「はい、予知という訳ではありませんが、あのままなら過労で高熱を出して倒れてしまうかと」


 そういう熱はエリクサーならともかくポーションでも一時しのぎにしかならないからね、

 人の身体はよくできているもので、

 いくら体力魔力は回復できても精神的疲労や何日も蓄積した疲労はそう簡単にはいかない。


「ということでアンジュちゃん、ごろごろしてていいよ」

「ん~ボク、デレスくんとデートしたい」

「えっ、せっかくお休みなのに?!」


 どうしよう、はしゃいで燃え尽きて明日の旅路に影響出そうだ。


「アンジュ、休むのも仕事だ」

「エー」


 ニィナさんに反抗的態度を取るのは珍しい。


「じゃ、ヘレンさん送るー」

「送らなくていいから、もう行っちゃたから!」


 瞬間移動慣れしすぎてそれが普通になってるんだろうな、

 確かスキルレベル的にももうLv10なんだっけ、熟練度で上がる。

 クラリスさんも心配そうに浮いているアンジュちゃんを抱きしめた。


「アンジュちゃんの転移魔法は明日から大活躍していただきますから、今は休んで、ね?」

「あい……じゃ女神教行くのも今日は休むー」

「そう、ならそうした方が良いわね」

「それでデレスくんとデートするー」

「まあ」


 瞬間移動で僕の胸元へ来た!


「今日はここで休む、ね」

「ははは」


 抱きついてすりすりしてくる、

 ほんとかわいいなあ……こう見るとただの子供だ、十九歳だけれども。


「よし、今日のデレスはアンジュのベッド兼抱き枕だな」

「そんなあ」

「一日中デレスを好きにして良いぞ」

「わあいわあい」

「うわ、僕ごと浮かないで!」


 さすがに空中デートは怖い。


「その前に明日から、そして今後の予定を決めよう」

「だって、アンジュちゃん降ろして」

「あいあい」


 四人きちんと居間でテーブルを囲む、

 ハーブティーを出してくれたメイドのセーラさん。

 アンジュちゃんはカップを持たずに浮かせて手元へ、段々と人外染みてる。


「そういえばアンジュちゃん凄い技覚えたよね」

「えへへ」

「まさか杖を構えたまま『死神の鎌』を宙に浮かせて攻撃するなんて、びっくりしたよ」

「まだ両手塞がってるときの、使える武器は、ひとつだけど、ね」

「杖の効果のおかげもあるのだろう、さて、とりあえず明日だがな」


 明日、ドラゴン便でまずムームー帝国との国境へ行き正式な手続きで中に入る、

 すでにあちらさんには『ちょいと別荘見に行くから』という連絡はしてあるが、

 どの国境を超えるかは書いてない、まあ入る時はそんなに苦労しないとは聞いた、入る時は。


「行先はまずカヤヤ村ですよね、そこで冒険者で急を要する17名を連れてドラゴンの所まで転移」

「用意してくれるのは二十人乗りドラゴンらしい、あと運ぶ人数が二人増えた」

「なんでまた」

「あちらのギルド職員だ、こっちの冒険者ギルドからも交代に二人行く、これも行きに運ぶ事となる」


 ふむふむ、地図を見るとカヤヤ村から一番近い街まで結構かかって

 そっからあっちのドラゴン便で王都かな。


「行きは時間がかかるが帰りは例の方法だ」

「いやあ見っけものでしたね、あれ」

「これに関してはアンジュの画力にかかっている、任せたぞ」

「あーいあい」

「ふふ、アンジュちゃん学校で頑張って練習していたみたいよ」


 何かは後のお楽しみ。


「それで戻ってきてからの事だが、闘技大会とやらはどうする」

「すみません、それに関しては天啓が」


 おっ、クラリスさんが手を挙げた!


「どうした、女神教の神様からか」

「いえ、もっと上位の、この世界の創造主様からです、

 なんでも『もうひとつの世界でつい最近闘技大会やったら決勝以外が不人気で、

 Pvとか評価とか酷い事になってたからこっちではやめよう』とのことです」

「なんだかよくわからないが創造主は掛け持ちでもしてるのか、まあ良い、闘技大会の参加はやめよう」


 一番偉い神様のいう事だからね、仕方ないね。


「その方がよろしいと思います」

「わかった、では闘技大会は抜きで」


 となるとする事は……

 今度は僕が挙手してみる、流れ的になんとなく。


「ならいっそ、アンジュちゃんの卒業記念とか言わないで、さっさとボスを倒すのも良いかもしれませんね」

「ビーストシュータか」

「はい、七大魔王を倒したパーティーとなるとムームー帝国もさらに一目置いてくれるでしょうし」


 自分たちの地位はできるだけ上げておかないと。


「交渉で有利になるか、現にクラリスがそれを使ったしな」

「はい、私が行けば話はすぐでした」

「早めに倒すとなると、そのあとのオークションやアンジュの残りの学校は」

「オークションは出品者をバウワーさんにして置いておく手もあります、信頼できるでしょう」


 むしろ信頼したい、命の恩人だから……

 お金持って逃げだしたら逃げ出したでいいさ、その時は命の対価だ。


「あとは学校か、アンジュ、卒業したいか?」

「うん、楽しいよー」

「そうか、ならきちんと予定通り卒業させよう」

「ミリシタン大陸の学園で読んだ小説によくありましたね、

 主人公が冒険者学校や貴族の学院で無双するも、強くなりすぎて退学したり有耶無耶で行かなくなるの、

 話を早く進めたいのでしょうが、なんかモヤるんですよねえ、ちゃんと卒業式は迎えてあげてよっていう」


 多分、さっき話に出た『この世界の創造主』とやらも同じ気持ちだろう。


「よし、では魔王ビーストシュータを倒し、アンジュが学校を卒業したら、次の国へ移ろう」

「ムームー帝国ですね、明日はちゃんと帝国側にもその予定を伝えましょう」

「では話は決まった、私はギルマスに会ってくる」


 そうそう、ここのギルマス、名前は聞いた気がするが、いったい誰なんだー!


「私は女神教へ、アンジュちゃんは」

「デレスくんとデートー、おでかけしたーい」

「はいはい、今日一日、僕はアンジュちゃんのものでいいよ」

「わあいわあい、デレスくんだいすきー」

「ははは、あんまり無駄遣いはしないでね」


 今日のアンジュちゃんは怪しい幻術師じゃなく、

 十九歳同い年の、僕の大切な、かわいい婚約者だ!!

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