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草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
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第167話 ムームー帝国の事情と僕らの優先順位

 真面目モードのチアーさん(48)が話を続ける。


「あちらの冒険者ギルド情報なのですが、スタンピート、すなわち魔物の大発生の兆候があると」

「それで無理して囲い込んでいるんですか」

「何でも女神教の高レベル賢者パーティーを確保した所を帝国が手放す事になって、それで焦ったようです」


 あ、身に覚えがある。


「ええっと、クラリスさん、あれですよね」

「はい、落ち着いたら我々が討伐に参加する条件で解放していただいた」


 話がついたはずなのに、待てなくなったって事か。


「なんだその話は、完全に我々への強制召集ではないか」

「ニィナさん怒らないで!」

「……あちらの冒険者ギルドについての説明が必要なようですね、お時間は」


 僕らの後ろにも勇者パーティーが二組並んでいたのでサブギルマスルームへ移動させられる、

 勇者受付は例の新人嬢に任せてチアーさんの案内で行くとガネスさんが頭を抱えていた。


「おーう、わざわーざ来てくれたのか」

「ああ、ムームー帝国の冒険者ギルドが我々を呼び出していると聞いてな」


 ニィナさんの言う通り、つまりはそういう事なのだろう。


「では私が説明をば」


 チアーさんがかしこまる。


「ムームー帝国の冒険者ギルドは権力がありすぎるので、

 モバーマス大陸中のギルドから定期的にギルドマスターを交代で派遣しています」

「あー権力を長く持っているとまずいっていう」

「そうですね、特にムームー帝国側の人間、あちらの女王側の者がギルマスになると、

 世界中の冒険者ギルドへ過度な権力を持ちかねません」


 この大陸で一番の面積を誇る国らしいからね。


「いまいらっしゃるギルドマスターもキカエデ国から一年半前に異動なされた方でして」

「そいつのせいか」


 ニィナさん、そいつって!


「いえ、問題はサブギルマスです、もう三十年も居る、あちらの国側の」

「なるほど、そのお方が問題なんですね」


 と言い方を変えてフォローしてみる僕。


「はい、生まれも育ちもムームー帝国の方で女王とも親交が深いという」

「つまり、そいつがギルマスを差し置いて勝手に冒険者を引きとめていると」

「ムームー帝国の軍隊がそのお局様に全面協力しているようですから」


 お局様っていうことは女性か。


「ギルマスの権限で解放できないという訳か」

「国の出入りとなるとそうですね、上空からドラゴン便で突入しようものなら撃ち落とされるかと」

「かなり大変だな、ガネス殿、心中察する」


 ニィナさんの言葉に明るい表情になって両手を握るガネスさん!


「そうか、手伝ってくれるか! ありがたいぜい」

「いやまだ決めてはいない、我々にも優先順位というものがある」

「こっちとしては一刻も早く106人を救い出してやりたいのだが」


 正直、ガネスさんには結構借りはあると思う、

もちろん貸しもいっぱいありそうだけれど。


「ニィナさん、とりあえずその106人だけさっさと運びましょう」

「……デレスがそう言うのであれば仕方がないが」

「でも優先順位でいったらアンジュちゃんの学校が先です、ですから休みの二日間で」

「あーい」

「そうか、助かる」


 ガネスさんは僕に頭を下げた。

 

「よし、タイトだな、こっちはドラゴン便を出そう」

「えっ、撃ち落とされるんじゃ」

「強行手段に出ればという話だ、正式に正面から、事前通告をしておけばだな」


 ……それって行きは簡単でも帰りはまずくなりそう、

 いや、僕らが入るってだけで警戒されるし取り込みに入るだろう、

 とはいえアンジュちゃんがいれば。


「こちら側との国境に一番近い冒険者ギルドはどこですか」

「ちょいと待ってくれい、チアー、地図を」

「はい、こちらでございまーす」


 ささっと持ってきてくれた。


「出張所になるがカヤヤ村だな、ひとつ深いダンジョンがあって昔の領主別邸を借り受けたものだ」

「そこ106人、入りますか? とりあえずそっちへ」

「さすがに目立つだろう、ちょっと待ってくれよ……」


 別の資料を取り出すガネスさん、

 見た感じ、どうやら今回の依頼書らしいが。


「最優先で運んで欲しい者が6名、これは各人の事情で一刻も早く出たいそうだ」

「それくらいならなんとかなるってことですか」

「ああ、他に最ではない優先が11名、できればこの連中も、だな」


 うん、じゃあまずはその17名をなんとかしよう。


「サブギルマス、ちょっと良いか」


 真面目顔のニィナさんが少し低い声で問う。


「下手すれば、いやこれだとムームー帝国と揉めるだろう」

「このあたりはあちらさんの冒険者ギルドの事情だが、ギルマスの依頼だからな」

「我々が巻き込まれた場合はどうなる」

「冒険者ギルドとして守るさ、だからこうして106名も守って救い出すんだ」

「では我々は誰が助けてくれる?」


 うん、そりゃそうだ。


「その必要はない相手だと信頼して依頼しているんだ、勇者ポーター様にな」

「なるほど、互いの信頼か」


 と僕に目をやるニィナさん。


「わかりました、そこまで頼ってくれるならやりましょう」

「そうかそうか助かる、いやあお前さんたちにしか頼めない依頼だからな」

「……デレス、本当に良いのか、やっかい事をしょい込む可能性も」

「どっちみち次はムームー帝国へ行くんですから、先にちょっと様子を見てきましょう」

「わかった、ちょっとだな、それなら付き合おう」


 こうしてアンジュちゃんの学校休みの日に合せて、

 細かい作戦をガネスさんたちと組むのであった。


(余裕があったら購入した別荘も見たいな、でも遠いか)

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