表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
草食勇者と淫乱バーサーカー  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第四章 上流勇者と奴隷眼鏡サモナー
165/866

第162話 悪女勇者の最期

「とりあえずどうしましょう」


 僕の言葉にガネスさんが考え込む。


「転移はしていないんだな?」

「確かにの、ワシが入って確かめてこようか」

「いや危険だ、ここは俺が行く」


 男前な言葉を残してサブギルマスがワイルドに入って行った、

 めっちゃ遠くだったらどうやって帰ってくるんだろう?


「それでデレスさん、お身体は大丈夫ですか?」

「あ、チアーさんありがとう、一晩中ホーリーサキュバスが癒してくれて動く事自体は」


 まだ関節が痛むし身体が重いけど、

 コロメの嘘を暴くのに僕でしかできない事があるかもしれなくて、

 ここは無理して参加したけど、ほんっと、どこへ行ったんだろ、アンジュちゃんも。


 ガチャッ


「デレス、大丈夫か!」

「ニィナさん! それが、逃げられたっぽいです」

「そうか、でもデレスが無事で良かった」


 光を失った魔方陣を見て老賢者がまだ考え込んでいる。


「これがフェイクで転移を、いやしかしレベル九十七とはいえ、それに転移の能力は持ってなかったのう」

「ご老人、助かった、幻術師がうちのアンジュ以外見当たらないので人物鑑定持ちで高レベルの貴殿にお願いするしかなかった」

「いやはや、S地区の城で寝ていただけのワシにもまだまだ頼られる機会があって嬉しいじゃよ」


 なんだかご苦労様モードで接しているけれどまだ油断はできない、

 実は認識阻害の魔法で隠れているだけで後ろからズブリなんて可能性も……!!


「ただいま~」

「うわ! アンジュちゃん真上から驚かせないで」


 びっくりしたあああ!!!


「アンジュ、アンジュも無事だったか」

「うん~はい、お土産~」


 ニィナさんの問に返事したアンジュちゃんが何か差し出す、

 小さい、といっても窓用のカーテンに包まれた何か箱型のものだ。


「あ、このカーテン」

「大きいカーテンと一緒に届いたやつ~」


 マリウさんが強力な隠匿魔法を合成して作ってくれたカーテンはひとつではなく、

 ドワーフ国の鑑定水晶を包む敷物として、窓のカーテンにも隠匿魔法を合成してよこしてくれた、それだ。


「それで中は何だ」

「開けますね、えい……あれ、何もない、いや、触れる、これは」

「コロメのアイテムボックスだよー」


(?????)


「アンジュ、何をやったか説明してくれ」

「んー、コロメが逃げようとしたから、一緒に転移したよー」

「えっ、どこへ?」

「廃止するって言ってた、旧々校舎の地下の、だよ」

「あそこって確か、あ、超レア職業の訓練ダンジョン!」


 チュートリアルダンジョンだっけ。


「そーだよ、そこに捨ててきた」

「アンジュ、具体的には」

「蟹もぎ師のダンジョンだよー、殺しちゃいけないから、あそこなら生きられるけど、けど……」


 そう、下手に怒りにまかせてコロメを殺すと特殊スキルでこっちが死んで生き返るんだ、

 だから使われてないチュートリアルダンジョンに捨ててきたのか。


「アンジュ、それでそのアイテムボックスは」

「ボク、飛んだとき、このカーテンで身体を包んでたんだけどー、

 コロメがライト魔法で照らして、アイテムボックスから何か出そうとしたから、

 手を突っ込もうとした瞬間にこれで包んだら、取れちゃった」

「凄い凄い、マリウさんのその隠匿カーテン、よっぽど強い魔力で合成したんでしょうね」


 それが愛情によるものだとしたら怖さすら感じる。


「チアーさん、勇者のアイテムボックスを横取りするなんてことは」

「生きたままでは聞いた事ありませんね、死んだ場合はその場にぶちまけられるようですが」


(てことは、まだ生きてるってことか)


「チアー、どうする、とりあえず生け捕りにはできたぞ」

「……ギルマスの判断ですが、アイテムボックスがないなら確保できそうですが、レベル97となりますと」


 ここで老賢者がアイテムボックスに何か魔法をかけた。


「おおっ! 実体化した、ちゃんと箱になってるアイテムボックスはじめて見た!」

「許可が出れば鍵を開けるぞい」

「老師すまない、その時は頼む」


 被害者の賠償ができそうだ、主に僕らだけれど。


「アンジュちゃん、チュートリアルダンジョン、あっちのはもう使わないんだ」

「うん、旧校舎に『その他ダンジョン』作って、そこで済ませるんだってー」

「じゃあ廃止の旧々校舎は?」

「上は取りこわして下は、えーきゅーふーいん、なんだって、ボクがするんだけれどねえー」

「なるほど、じゃあコロメはそのままなら、永久にあそこでくっそ不味い蟹しか食べられないんだ」


 あと、めっちゃくちゃ汚い水。


(変に事情聴取とかせず、放っておいた方が良さそうな気がする)


 このあとサブギルマスのガネスさんがドラゴン場近くの廃小屋から戻ってきて、

 僕のまだ見ぬ冒険者ギルドのギルマスと相談した結果、

 魅了魔法などの危険もあり出さない方が良い、罪は明白という事で、

 アンジュちゃんがとばしたまま永久に廃チュートリアルダンジョンに封印される事となった。


(美味しい物を求めて仲間を犠牲にしまくった悪女勇者には、相応しい哀れな末路だなあ)


 この後しばらくは旧々校舎から真夜中に、

 女の泣き声が聞こえるという噂が流れたとかなんとかかんとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ